小さな女の子みたいに
梼瀬チカ

私の中に小さな女の子がいて
公園の砂場で
ちぎった花びらをお皿にのせては
ままごとをして
パパとママの会話をひとり話している

私は今近所の主婦達が公園デビューさせる
ベンチに座っていて
砂場で遊んでいる子供達を見ている

私の中に小さな女の子がいて
お人形さんごっこをしては
色々と着せ替えてお姫様になって
お出かけをしている

私は今街のウィンドウを覗いていて
あれこれと頭の中で
ウィンドウのブラウスやスカートを
組み合わせては想像している

私の中に小さな女の子がいて
母親に昼寝をさせられていて
夢を見ている
どんな夢なのかは知らない
時々少し長いまつ毛を動かしながら
寝返りをうっている

街は夕暮れ時
誰も彼もが一日を終えたように
賑やかに通りをいそいでいる
立ち止まりそうになりながら
雑踏の向こうを見渡して
探している
私の中の小さな女の子を

私の中の小さな女の子はいつも夢見ていて
私は大人になっていて
仕事をしたり家事をやっていて


時々 小さな女の子みたいに感じるって
どういう事?


彼は私にそう言うけれど
彼が私にそう言う時
私はたいてい醒めていて
黙っている
喫茶店でコーヒーを飲み
ガラス越しの人の群れを
二人で黙って見つめながら
同じ方向に顔を向けて
時間が通り過ぎてゆく 


自由詩 小さな女の子みたいに Copyright 梼瀬チカ 2005-02-03 12:11:31
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