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誰もいない教室で
机の落書きを消す

たいていが内容の無いもので
消すのにためらうこともないのだが

ふと窓をみると
結露したときに指で書いたのだろう
一つの文字が見えた

「海」 ....
「せんせいのては やさしいかたちしてるね」

いきなり言われたので
僕は自分の手をじっと見た
どうみても普通の手だ

「どういうところがやさしいの?」

血管がういて筋張っているし ....
降りつづける雨は
もしかしたら辛い過去かもしれません

降っては止み
降っては止みを繰り返し
いつしか涙のようになって

まるで一人ぼっちみたいに
その「ぼっち」が淋しく響いて ....
森の寝息が聞こえる夜

小さな生きものの見る夢は
無塵の砂丘にしみこむ雨の
蒼く芽ぶいた花の種


明日を知ることが堅く閉ざされている
明日を知ることの恐れを知っている


 ....
夜闇の波に揺れて
わたしの海は広さをなくす


いったい何が不安なのかと
ひとつひとつ問いかけてくる波に
ひとつも答えることもなく


わたしはひとり揺れている


「あ」から ....
(その1 時計屋のおじさん)


裏通りにある時計屋のおじさんは、まるで手品師みたいに器用だ。

おじさんの大きな手からは想像もつかないような、ちいさな部品をちょこちょこといじると、さっきま ....
明日よ
おまえのことがわからなくて
今夜も僕は眠ることができない

現実を消化するのが僕の仕事だ
逃げ出さずに立ち向かうのが僕の務めだ

明日よ
なのにおまえは夢や希望だとか
しがみ ....
兄、あるいは姉と呼ぶべき
生まれなかった命にむけて

もしかしたらこの時代は
貴方たちの手で変えられたかもしれないと
そんな期待を寄せるわたしは
我が侭だとわかっています

 ....
子供のころは簡単だった
青いクレヨンで雲のかたちをくりぬけば
それが空だと言えたけど


いま僕が描こうとしてる
この空には青が足りない


たくさんのことを知ると
たくさんのこと ....
目を閉じてひゃく数えるあいだの
静けさがこわかった

(いーち にーい さーん)

ぼくはずるだと言われるのがいやだったから
はんぶん泣きそうになりながらゆっくりと

(しーい ごーお ....
ふと遠いところへ行きたくなる

通過電車に手をのばせば届きそうで届かない
本気で身を乗り出すと本当に連れ去られてしまうから
「危険ですから、黄色い線の内側までお下がりください」
というアナウ ....
交差点の真ん中で
すすむ方向を見失う

ゆらりゆらぐとき
ふわりうすく浮き上がる
今を引きのばせば

わずかな希望を羽にして
けして上手くはないけれど

音なく羽ばたく
儚く ....
今日が終わる
その少し手前で

ひとつ足りないことに気づく

いつものように
君を送りとどけた駅で

「またね」でもなく
「さよなら」でもなく
「ありがとう」でもない

ひとつ ....
線が
小さな点の集まりだと知ったのは
まだ恋なんて知らない
幼い頃のことでした

とぎれとぎれに
一つ一つの出会いがあるように思えても

振り返ればなぜか
すべてがつながっているよう ....
じんべえって
まるで人の名前みたいだ

こんな夏の日に
すっかり涼しい顔をして
遊びに行こうって言っている



(ほら、じんべえ
 祭りばやしがきこえるよ)



ふわっ ....
まだ幻になるには早すぎる夏

したたる汗を拭きながら
影を引きずってみる

昼下がり
気がつけば青信号は点滅し
横断歩道は白くアスファルトを削っている

そしてゆらりと
行き過ぎる ....
焦らずに生きよう

吸い込んだ空気の味を確かめるように
君は口の中でその言葉を噛み砕き
ため息に混ぜて吐く

空のむこう

酸素のない宇宙空間に
君の知らない自由があるとしても
そ ....
忙しいと言いながら
忙しそうにしている人がいた

忙しい毎日が嫌だとぼやきながら
忙しいのは何故かしらと呟きながら

忙しさから解放されそうになると
忙しく何かを探しはじめる

忙し ....
どんなに薄めても
悲しみは消えませんでしたから

少しずつ明日を
塗り重ねてゆこうと思いました

悲しみは複雑すぎて
はじめとおわりの区別もつかないけれど

晴れわたる空に喜びは
 ....
空を飛びたいわけじゃない

からだいっぱい手のひら広げ

君を受けとめたいんだよ
街が夕焼けに染まるころ

通勤快速を降りれば足早になる
車内の熱気にゆであがってしまった
君はきっと
夕方の空気が好きに違いない

商店街を駆け抜ける自転車に
危うくひかれそうになって ....
あの日
僕はふらっと出かけたそうだ

何処にも行けない身体で
何処に行けるはずもないのに
何処かへ出かけてしまったそうだ

(言葉を忘れるということは
 そんな遠い旅に出ることに似てい ....
あなたの白いスカートが
ひととき夏色に見えたのは
うすぐもりの雲の切れ間から
気まぐれに顔を出した
あの眩しい日差しのせいではなく
あれはそう
道をさえぎるようにもたれかかる紫陽花に
語 ....
目の前を何回か通り過ぎたと思ったら
いつのまにか腕の中にいた

陽だまりのなか
生まれた熱をくるむようにして

うっとりと瞳を閉じたのは僕の方だった

     
はっぱをめくればなめくじ

みんなにきらわれて
しおをまかれたりする

おまえなめくじ

うまれてからずっと
からだじゅうでないている

おれだっておなじ

みんなにきらわれて ....
毎日は同じことの繰り返しのようでも
少しずつ違っているものだから


通勤電車の吊革をつかむ
君はまるで風に揺れる果実のように
その身を進行方向に傾けている

列車のドアが開くたび
 ....
ド レ ミ ファ そ ら
そ ら

その間にもたくさんの音があることを
君が教えてくれた

少し高めの声で
好きな歌をうたいながら
ささやくように
その歌に似た会話をして


 ....
(ぽとり)

点滴1本3時間

(ぽとり)

ペンとノートがあったら詩の一つでも書けそう
だけど悲しい詩になりそうだから書かない

(ぽとり)

透明なビニール容器から
半透明 ....
毎日たくさんのものが
あなたから生まれることを知っている
それは言葉であったり、声であったり、感情であったりする、けれど
それらはあなたの分身でしかないことも知っている
そのことをあ ....
手をつなぐように立ち並ぶ
銀杏並木の下を歩く

影踏みをしながら
陽射しを避けて木漏れ日をぬう
揺らめくカーテンの折り目に隠れるように
柔らかい幹に身体をあずければ
背中から伝わる
静 ....
望月 ゆきさんのベンジャミンさんおすすめリスト(62)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
「海がひろがる」- ベンジャ ...自由詩9*08-4-14
「やさしいかたち」- ベンジャ ...自由詩27*08-4-5
「水結晶」_(二部作のうちの①)- ベンジャ ...自由詩5*07-5-24
今宵小さな星が降る- ベンジャ ...自由詩9*06-4-18
夜闇の波- ベンジャ ...自由詩11+*05-10-24
シリーズ「おじさんと僕」1- ベンジャ ...自由詩9*05-10-4
明日に捧げるポエム- ベンジャ ...自由詩8*05-9-30
生まれなかった命にむけて- ベンジャ ...自由詩20+*05-9-26
この空には青が足りない- ベンジャ ...自由詩17*05-9-24
ぼくは鬼ごっこの名人だったんだ- ベンジャ ...自由詩13*05-9-9
夜の地下鉄は海の匂いがする- ベンジャ ...自由詩53*05-8-31
カゲロウ- ベンジャ ...自由詩10*05-8-27
ひとつ足りない- ベンジャ ...自由詩17*05-8-24
点と線(そして座標)- ベンジャ ...自由詩12*05-8-22
じんべえ- ベンジャ ...自由詩9*05-8-22
陽炎- ベンジャ ...自由詩13*05-8-18
空のむこう- ベンジャ ...自由詩8*05-8-16
忙しい人- ベンジャ ...自由詩13*05-8-13
空色の絵の具- ベンジャ ...自由詩17*05-8-8
ムササビ- ベンジャ ...自由詩5*05-7-31
そのスピードで- ベンジャ ...自由詩7*05-6-28
ただいま- ベンジャ ...自由詩9*05-6-13
紫陽花が咲く頃に- ベンジャ ...自由詩10*05-6-11
抱き猫- ベンジャ ...自由詩11*05-6-7
めくるめくなめくじ- ベンジャ ...自由詩37*05-6-2
その角度で- ベンジャ ...自由詩9*05-6-1
そんなときそらはきれいに見える- ベンジャ ...自由詩3*05-5-27
やっぱり悲しい詩になってしまう- ベンジャ ...未詩・独白15*05-5-24
あなたから生まれる- ベンジャ ...自由詩14*05-5-16
銀杏並木- ベンジャ ...自由詩5*05-5-6

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