思ひ出と云ふ名の幻想を
指で弾いては落としました
御弾きと戯れる童のやうに
罰が当たると云ひし君も又
幻想なのだと云ひ聞かせ、
それでも未だ
君をかたはらに感じてゐました
....
洗濯を干しているときにパンツが見えないように心を尽くす
掃除をしながらついつい言葉について考えてしまい
「いやらしい」と思う
朝の散歩をするおじいちゃんににこやかに大きな声で挨拶をする
....
こすった赤い眼の中
おちていく太陽が
すぎこしていった
夜へ
さみしいのまえに
たいくつがある
考える脳のくらやみ
がある
明日はデートだ
そんなことを空想す
....
たこ焼き屋のまえで
たこ焼きが出来上がるのをじっと待っているジャリたれは
いつも実存のことばかりに頭を巡らせているので
たこ焼きくるくるするの難しい?
としつこく同じことを尋ねては
店のおば ....
どううぶつえんの檻の前で親友は盤を取り出し
飛車角落ちで良い、と言う
親友の温かい手から飛車と角を受け取り
どううぶつの檻に投げる
どううぶつは隅でうずくまったまま見向きもしない
飛 ....
冷え切った校舎の裏
ささくれ立った言い訳をした日
嘘をつくのは単なる処世術ではなく
空気と同じなんだと信じることにした
地球は今この瞬間も律儀に回っている
無数の嘘を繋ぎ止めながら
....
「メリーゴーラウンド」 8
一生
ぐるぐる回るものが
昔から好きだった
図書館で本を読んでいて
ふと見あげた壁かけ時計から
目が ....
ほら
こうして
鈴をつるしたフラスコの
空気をだんだん抜いていく
鈴の音はやがて
震えるだけの記号となって
あのフラスコにわたしは
どうしても
ティンカー・ベルを入れ ....
連れてこられました
真っ青な部屋です
まるで深い青空のなかを
迷う小鳥のような気分にもなれ
濃ゆ過ぎる空を切り取ったような
真っ青な部屋です
君は今ごろどうしているだろう
連れてこられま ....
君にあてて手紙を書こう
便箋
ティファニーの
スカイブルーな
世界は
そうだね
まだもう少し続くみたいだ
ボクは
ボクの周りの
ごく限られた人たちが
平和でいてくれたらいいと
....
赤ん坊の頬をなぜるように
水蜜桃の皮をむいていく
あなたの指が
汁にまみれて
窓から差し込む光に包まれている
甘い水が
赤ん坊の膚のような
産毛の柔らかい皮をはぐたび
したたる
した ....
24時間という単位など お咎め無しでいる
あの好青年の構成上
僕から口出しする事は
いまのところは ない
星が、グッドタイム気取ってて
あら、珍しいじゃん と愛想笑いしたところだよ
....
愛の奇跡であの娘と結婚させてください
そう神様にお願いした次の日の朝
目を覚ますと僕の右手には一本のわらがあった
どうにかしろ、ということなのか
どうにかなるさ、ということなのか
わ ....
しりきれとんぼの君に
まる
いつもあたらしいおもちゃの方を向いて
振り向くこともなく
ぽいと捨てられた君のおもちゃに
まる
おけらの君にまる
最初の意気込みと
投げ出す言い訳の愛し ....
さみしいなと思った途端に寂しくなくなった
それというのは自分でもわけがわからなくて
たとえていうなら水族館に行ったことが無いとか
煙草の火をつける方じゃない方に火をつけたとか
手帳に挟むペンが ....
距離を守って下さい
噛み砕くために固い葉を望む
一字違いの日々です
ミルクのような牛乳を
もう一杯ください
欲しいのです牧場のように
強烈に踊りだしたくなるほど
こぼしますから
....
いまそこにピアノ教室があったの、って
水銀のけむりのようなわらいかた
こどものバイエル 残酷な風景に寄り添う
音楽
あなたが舌のうえのやわらかいスイッチを押す
(どんどんだめになる) ....
それは私ではない誰か
窓際の花瓶の水を
新しく換えるのは
いつも気付かぬうちに
橙色の陽が差しこむ
開け放たれた窓から
手を振って身を乗り出す
あれは私ではない誰か
肌 ....
かえれるほたるもおりますよ
うちあげられて
なみをあびてはあおくうみほたる
みちてくれば
よけいとおくに
ひくときには
ひかれるままに
はこばれたり
もどされたり
....
お母さんボクは東大にいきます
やりたいことがあるとか、ないとか
これからは好きなことを仕事にする時代なのだ、と
そんな黄色いハローワークで
幸せになれますか
お母さんボクは東大にいきます ....
夜に
夜光虫の海で泳いだことがあります
そのとき
月が出ていたのかどうか
指先を
差し入れた瞬間にセントエルモの火
揺さぶってみた
舫い綱に冷たい篝り火
....
もう9月になって
昨日を忘れたような雨が
じとじと降っているとゆうのに
どっこい
コウちゃんちのカブトは生きている
たしか6月に
さなぎからかえったはずだから
もうかれこれ3ヶ月の
....
「メリーゴーラウンド」 6
アイスクリーム
ようくんの手はあたたかい
わたしの手はどちらかというと冷たくて
冬なんかは
部屋に入るとじんじんす ....
向日葵の ねむる わが家まで
いつも ふたり 歩いてた
坂の 途中
みどりの 地平線
むこうが 見えるふりしてた
オルガンの風が ふたりをつつみ
たんぽぽ色の空 ふわりふわり と 穏や ....
三丁目あたり
地球儀で見ると
ここは夜のはずなのに
夜はいったい何処にいったのかしら
どこにも辿りつけませんように
と願う
ナビゲーションを彼女に頼むなんて
....
≪雲の上から見る夕日≫
かかっていた雲も女神の吐息で流れ去り、
赤色の残陽は、雲海を染めて沈んでいった。
沈んでも、明日の光を約束する夕日。その上に輝く月。
澄んだ空気を肺一杯 ....
あの人の好きな牛乳羹を持っていくことにしました
手作りを重宝するあの人のことですから
わたしの選択肢としては何よりも手作りが一番だったのですが
朝から冷蔵庫の調子が悪いようで程よく牛乳が手に入り ....
朝靄の中
頼りない影を引いて
配達夫は世界の悲報を配るのに忙しい
昨日のキスは二人しか知らないこと
ベットに傾けようとしたとき
「今夜はいや。」と云った君の
声の湿度は僕の鼓膜しか知ら ....
母さん
ぼくの血は
あの鳩の眼よりも
薄い色なのですか
すでに色褪せてしまった繃帯が
風になびくのです
母さん
ぼくはまだ
あのデパートの屋上で
迷子のままなのですか
いまでも ....
罪の森きみの手を取り「逃げよう」と言った途端に僕も罪人
森のなか追いかけごっこふたりして迷い込んだねもうひとつの森
瓶詰めの蝶を埋めます木の根元「飛び立つものはすべて埋めます」
....
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