希望は与えられている
悲しみは与えられている
ショパンを練習している
テンポの変わるところが
音がほどけてしまってながれない
おなじところで音もわれる
灰色の街で
....
暗中模索の日々のなかを
わたしはきょうも
わたしはあしたも
きょうという日々を生きるだろう
ひとの夢がわたしの夢に沿わないとき
わたしはそのひとを
愚かだと決め ....
寝入りばな
夜の船に乗って
黒く澄む空を
たゆたっていた
静謐なガラスの船は
住むもののない水底の
果てない深さを
ギラリギラリと見せた
こわいよと口に出す
まだ眠りに落ちて ....
*
もしも…
この世の全てが
この掌すり抜けて行く風の内に
記憶を留めるのであれば
私は此処に居て
風を嗅ぎ
風を聴き
風を噛み
風を観て
ただそれだけを糧に暮らすだ ....
言葉を家へ持って帰る
言われてしまったことを
言わずにおいたことを
持って帰っても
家の人には言わない
代わりに別のことを言う
家の人が安らぐことを
自分の気散じになることを
そうする ....
今日は
長谷川さんが軽い
軽くなった長谷川さんを
おんぶして
仕事に出かける
長谷川さん
ここで休んでいてね
と言って
缶コーヒーの蓋を開けると
そこから山内さんが
....
{引用=
山の細胞があんなにゆっくり色づいているというのに君ときたらせっかちでいけない}
学校で図書館で自分の部屋で
本屋でコンビニであなたの部屋で
髪の毛の一本でも爪の ....
その石はまるで子宮のように
あの日 交わったときから
じっと守り続けた
ゆだるような潮風からも
氷点下の吹雪からも
じっと路傍で待ち続けた
ただじっと砕かれる日を
穿たれる時を
自らが ....
星を喰う獅子が落ち
彼方燃える夕刻に
寄る辺ない足取りは
今にも崩れそうな橋を想定した
白線を辿る
鼻歌が頭蓋に響いては
鞄を持って耳から逃げてゆく
使い物にならない両手で耳を塞ぐと ....
砂に埋もれていく
記憶の再構築
あなたの悲しげな瞳が
頭の片隅に
何度も巻き戻していたかった
擦りきれたテープのように
ぼやけても色褪せても
あなたの肌の感触は
鮮明に
時間 ....
透き通った青の天井見つめて、
寒空の下
薄いボロボロの服を着て、
その子は寝ている。
大きく目を見開いてその子は眠っている。
チェマダンの往来の真ん中で、
一人のコッチョビが眠 ....
回転を少し止めた朝は
おだやかな
エメラルドの生地で
ひとつの心臓もない
白い砂床に
波のつぶやきを聴く
貝の肉のような
とりとめのない柔らかさに憧れ
ギリギリと角質の擦れ合う ....
その髪は毒の蛇
歯は鋭い猪の牙
青銅の手に 黄金の翼を持つ
彼女の姿を見た者は
全て石となる
神話時代の醜い怪物メデゥーサ
乾いた丘陵のうえの神殿が
....
{引用=死して尚も取引される彼
死を回避しながらも墓石に値をつける詐欺師の群れ
安らかな終焉にまだ続きがあったなら
それでも彼は穏やかに旅立っただろうか}
シャーマン達が今日も街中で炎を焚 ....
大阪を発ち東京に向かっていた
車窓の闇のせいで
一瞬夜のような錯覚を覚える
これは朝の暗さなのだ
車内の匂いがまだ人間に撹拌されていない
車内の明かりの鮮度に目がなれてゆく
車窓の ....
僕は夢想する
雲一つ無い青空に
ぽっかり浮かぶ黒い月を
僕は夢想する
鬱蒼としたジャングルに
飛来する原色の鳥達を
僕は夢想する
ジャングルの樹々の間を
悠然と歩む ....
眠れない日の
眠れない夜は
より明確に朝と繋がる
その夜で太陽は欠けもしないし
この地球の丸さを
完全に隠し去ったりもしない
どこまでも繋がっていくこの夜は
言ってみれば人 ....
あなたが朝カーテンを開けて外を眺める時の気持ちを想像する
あなたが行ってきますと言ってドアを閉める時の気持ちを想像する
仕事が終わって、家に明かりがついている時の気持ちを想像する
あ ....
めにみえないほど
ちいさなつぶだったのに
かぜにふかれて
まいあがるきりゅうにみちびかれて
のぼっていくと
だんだんなかまがあつまって
いつのまにか
かたまりになり
とてもたかいところ ....
わたしがうさぎだった頃
この世は赤いもやがかかっていた
花びら一枚にも手が届かないので
うつむいてありの行列を眺めるしかなかった
わたしがひなどりだった頃
飛び立ちたくて仕方がなかっ ....
辛辣な森羅万象
耳元から鼻先へまた額から鼻へ
人間を分類し整理し時に処分する
まさかと思わせる疑似科学ラファータ
時々思うのだけれど
無機質だけで世界が出来ていても
問題は無かったのに ....
一人目の盗賊は目を瞑った
二人目の盗賊は葉の匂いをかいだ
三人目の盗賊は百本の口紅を盗んだ後アル中の妻に口紅を一本買って帰った
四人目の盗賊は人形の頭を終日かじり続けた
五人目の盗 ....
091121
怪獣ブームが去って
本物の恐竜が期待を込めて登場する
骨だけでも好いけど
足跡も欲しいと
原始人も考えて
恐竜の後を追い
卵を盗 ....
たったひとつの恋文
それは今
長期保存用に加工されて
クローゼットの中で眠っている
わたしは父と
ヴァージンロードを
歩くつもりは
さらさらなかったのに
どうしても歩かせたいと
....
袖から腕を抜くことを
ためらっていた冬の朝
隠し事はだめなんだって
道徳的に、が口癖の私は
末端冷え性で靴の中が寒い
目が覚める前に
殺してしまえばよかった
なんて
冗談でも言ってはい ....
無辺際の空
金属が滑空する
滑らかな肌は
雲の白さに嫉妬する
見るものすべて
聞くものすべて
触れられぬあなたの
裸体を想起させる
悲しいことなど
嬉しいことなど
すべて綯 ....
見果てぬ夢のカーニバル
砂にかいた城郭の呪文
寄せてはかえす波の調べに
なにを重ねてなにを惑う
きみの瞳に恋している訳ではない
きみの瞳に乾杯したい訳でもない
....
葉擦れの音を君と
芝生に座って聴いていた
かなしみは悲しみの密度で
虚空を舞う飛行船のように
愛されたいと誰かが言った
僕たちは鼻先で笑った
ここにいるそのことの偉大さを
認めない愚 ....
ニコライ堂の鐘が鳴る
聖橋から小川町
緩くカーブのその坂の
底にあるのが小川町
小川町から靖国通
だらだら歩き神保町
三省堂か東京堂
なぜ行かないのか書泉の角を
曲がってうれし吉本 ....
軽蔑の光を灯して
人は彼女をみるのだ
知恵が足りない子だという
足し算 引き算はできない彼女は
人のために泣くことができるのに
ずるい笑みを浮かべて
また騙そうとするだれもかれも
だ ....
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