この血であなたの心臓を突き刺したい
ナイフを手にその背中を追いかける
あなたは急に立ち止まり振り返って云う
刺せるものなら
刺してみろ
わたしはナイフを突き
刺し殴る
....
人生なんていうけれど
それって 今日のこと
それって 今のこと
ためいきも
呼吸のひとつなら
次すう息はあたらしい
まえをみて
まわりをみつめてあるきたい
今を
今日 ....
今日も歩いていると
いつの日かの私が
朴訥と佇んでいる
でもなんだか薄皮で安ごしらえ
色もくすんで生気がないが
手を広げて空に向かって伸ばし
かかとを上げて
....
己が一番美しい時に
化粧を覚えた少女は
素の顔を誰にも見せぬまま
女となり
老女となり
やがて
横たわる冷たい屍となる
その顔に
再び恭しく施される
化の粧
唇に置かれた紅 ....
雨の音が聞こえる
雨が礫(つぶて)となって降っているのだ
雨の音が聞こえる
冬の雨は冷たい
雨の音が聞こえる
部屋の中にじっとしていられない
雨の中を歩くしかないのだ。
雨の中を歩く ....
だれかの帰りを待ちながら
とんとんとんと野菜をきざむ
だれかの帰りを待ちながら
からからからとグラスを鳴らす
だれかの帰りを待ちわびて
ぽろぽろぽろと頬ぬらす
今度生まれてきた ....
吐く息が部屋のなかでも白を語る
かじかんだ爪先に靴下を与えるでもなく
窓の外
早すぎた目覚めがかなしく
ひとりを悟る
{ルビ時間=とき}に負けて
遠のいてゆくあなたの微笑みは
ま ....
不幸だって?
幸福だって?
そんなみわけのつかないものに
騙されるなよ
夕陽がしみこんでゆくよ
私のからだに
今日もがんばった
私はがんばった
すっぽりと紅葉を被り
ひのひかりを浴びる
こっそりと山を歩きながら
誰にも気づかれないようにと
鳥の鳴き声をまねて
飛んでいく
雲が急に流れだし
しっとりと山 ....
幾何学模様の闇が重なる
夜の底に
ひそやかに灯る青白い共犯
夜が明けて
其処に残されているのは
誰にも読み解けない証拠だけ
誰もが息を呑む
美しい証拠だけ
かけおりてくる兵隊がいる
指揮だけがあって四季のない顔のない
丘のうえから
いっせいに声があがる
雲がわく
あがる声には
責任がないから自主性がない
....
老人ホームは
駅のホームみたいに
最終列車を見送る時がある
いろんなひとの
いろんな最後を
見送る時がある
いっぽ前まで
せいかつをしていて
静かに静かに
旅立つ時まで
....
も吉と歩く
何もない冬の午後
も吉と歩く
はたちの頃 一年ほど日記をつけた
何も残せず ただ消えてゆく日々が
とてもこわかった
時間はたっぷりあったのに
いつもの散歩道
....
てのひらひらひら
紅葉ひらりひら
ほぅらほら
どこかでだれかが呼んでいるよ
重なり合った呼吸が
色を濃くしはぜる音
夕焼けが沈んでいくように
どこかに吸い込ま ....
時間を掴み取って宝箱に仕舞っておけるのなら
僕は、初めて君と会ったあの古ぼけた体育館の片隅で
君に卓球をやろうと声を掛け、ガムをあげた
あの時間をそのまま宝箱に入れよう。
あの時の気分あの時の ....
私は亀ちゃんを生んだ
亀ちゃんとは本人の前では決して使わないあだ名
亀ちゃんは本当にゆっくり成長していく
初めて歯が生えたのは一歳三カ月
初めて歩いたのは一歳八カ月
二歳になって ....
毎週火曜日
下の娘のクラスにボランティアとして入っている
私が話すつたない英語でも
一生懸命に聞いてくれる
小学一年生の瞳には
一点の曇りも宿っていない
恐らくその瞳はまだ
本当 ....
鳥が啼いてゆく
いつか、いつか、いつか、
赤い夕陽がしたたり落ちて
心を焦がす イタイホドニ
{引用=近づけばまた遠ざかり
遠ざかるとまた近づく
蜃気楼 日々は}
そしてまた ....
わたしの声があなたに届くのか
わたしは問う
あなたも問う
ヘリコプターの音
倒れたあなたたちは
手を延ばす
あなたたちは 置きざり
わたしたちは 涙する
涙は 届かない
....
カンヴァスに描いた静物画に
わたしは真っ赤な色を置く
油絵を描く時は
その目に映るものの色と
正反対の色 ....
「わたしの森で」
木の若芽
どこに行こうとしていたのかわからなくなってしまって
どうしても?わたしの森?の入り口にきてしまう
何べんためしてみても同じこと
....
小春は 咲いていた
いたいけな木枯らしに とまどいながらも
茨の木も葉を落として
生まれた詩たちが 真っ裸になる この秋空に あなたは
腹を満たすために
寒さから身をまもる ....
失敗は成功の母なんて
母もいろいろいるからなあ
結局
失敗も成功もないんじゃないの
そんなことを考える朝
私の今日も静かなままに
世界は
見えない法則にみちている
音は ....
静かにそうっと放っておいて
小さなカタマリは
片隅で
少しだけ浮く
なぜ浮くのかしら
小さなタマシイは
わたしの耳の裏で
そっと囁く
いいことかしらと
....
強さだけ積み上げて 貰えないやさしさに
くびり泣く 赤
野に ひかれ
弓ならば 矢に
切られてしまいたい
この頸動脈の奥にある植込み
スカートをまくしあげしゃがむ
、というタイミングを待っている
ズキズキとする森へ
咽の先へ行きたがってるのに
すこやかとすごせますように 4車線に祈る ....
合法の薔薇に怯える
ぼくは誰の遺志でいかされているのだろう
ふとおもったのだが
生物の基本原理は摂食と生殖
僕だって変わらない
人生や愛に聖書が無いように
僕たちは風に翻るのだ
遠く越冬する鳥たち ....
私を傷つけたあの人は
結局私の人生にとって
大切な人じゃなかった
3年かかって
やっとそのことに気づいた
仮に今 あなたが
誰かに傷つけられたと思っているとしたら
あなたにはもっ ....
{引用=
?「ファンタジー」
昔の人にとって
地球が丸いのも
重い雨空の上が快晴なのも
青空の上が永遠の星空なのも
ファンタジーであったはず
生まれながら目の見えない ....
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