月工場で
おじさんたちが
月を作っている
その日の形にあわせて
金属の板をくりぬき
乾いた布で
丁寧に磨いていく
月ができあがると
ロープでゆっくり引き上げる
くりぬ ....
天を衝くビルの頂から
見知らぬ異邦人の心まで
六分儀で測りつくせる
幻想が草々と繁茂する
浮力の発見は僕たちを
近づけたか遠ざけた ....
項垂れる人
黙々と続く葬列
いくつもの首が転がり
腐肉を烏がつつき
蛆がわき 蠅が生まれた
悲しみはなく
残された者は墓を掘る
坊主の読経が独り彷徨う
手向けられた花は枯れ ....
こころが
すけて しまえばいい
こころが すけて
どこまでも
ひろがって
うみのうえの
空 に かえる
しんでしまう ほど
すきとおって しまえば
いい
{引用=
わた ....
三日月がいっそう薄目がちにほろほろ涙を零しておりましたので、私まで悲しくなってしまい、ほろほろと泣いてしまっていたのです。
私が泣いたからといって、月がゆっくり安寧のなかに眠れるわけでもなく ....
おきざりの波打際で膝を強く強く抱くと
両の乳房が ぱんと張って
ふとももに弾かれて 憂鬱に揺れた
一方的な愛情ほど与えすぎても尽きないよ
あたためて触れてひどく突きつけて
かき鳴らす歌を ....
もし ぼく が かんじょう を ポリぶくろ に つめて
すてる ことが できたとしたら
どうだろう
まいあさ しゅうしゅうしゃ が やってきて
あちこち で ふくろ を つ ....
メリー、
それは細長い
木々の根元から枝の先までがちょうど、
ひかりだけ流れているようにみえた
夢みたいな夜
ぼくらは産み落とされて
地図だけを持たされていた
しずかに痛みな ....
冬だからと言いわけして
ぬるい布団に潜っている
風が冷たいから外に出る気も何もしない
小さい頃から怠けていたから
今になっても億劫で
稼ぎも無いのに働かない
インスタントで食事を済まし ....
この船は
すばらしく安全だから
お金持ちの人も
貧乏な人も
みんな乗るといいよ
僕らが
永いことかかって造った船だけど
黒い人も
白い人も
乗るといいよ
でも、たくさん乗ると
....
アスファルトから芽吹いた花を
あなたにそっと教えてあげる
春の柔らかな日向の内で
摘み取らないで包んであげる
厳しい冬を耐え抜いたから
思う存分咲くがいい
流れる水辺にあって、冬の光が
点っている。てらてらとここは
静か。見えないものに、触れた
ことのない。めくらの。薄く紅
挿す頬のあどけない。水掻きの
広く、長い指の掬えない。指間
指間から ....
「ありがとう。出会ってくれて、ありがとう」
こんな言葉滅多にいえないボクの
彼女は君
ほんの小さなすれ違いに
真っ白な肌を
膨らませたり小さくしたり
「大好きだよ。ただ貴方 ....
近所の用水路で小さな魚を捕まえた
家にあった水槽に放し
部屋の日当たりの一番良いところに置いた
魚は黒く細っこくて
その頃のわたしは
なんとなくまだ幼かった
+
....
綱わたりをしていると
月がきれいだったので
僕はまっさかさまに落ちていった
形の良い吉川くんがそれを見ていて
僕らはレンガ遊びを続けた
吉川くんはレンガをちゃんと地面に積んで ....
蒼い空の下 小さな雲を見つけるように
上を向いて 軽い足取りで学校に向かう いつもの道
彼はいないけど それでもまわりはいつもと同じ
彼はきっとおねぼうさんだから 今日も私が教室についたら
....
境界の打ち水、
風が死んだ下町の昼下がり
狭い裏路地を通りすぎる
黒い日傘を差した女
夜に咲く花が匂う、
鉢植えの月下美人が
錆びた郵便受けの真下に
只ひとつ置かれていた
よう ....
「私のこと、本当に。好き?」
聞かれたら
抱くたびに気持ちいいのは本当
でも、肌を重ねるという儀式のつじつまあわせしてるんじゃないか
とか思っても口には出せないから
「・・・・・ ....
春、という実感もないまま
海を泳ぐ
わずかに持ちあがった
二の腕から滴る光に
戸惑う
掻き寄せるものは
どれも曖昧な痛みばかりで
だいじょうぶ、と
支える声は
生え変わったばかり ....
もう、
どこからどこまでが地図だったかなんて
関係なくなって
美しいことをいうよ
きみはきみで
ごらん、
すれ違う人々の両手には、何か
約束のようなものがぶら下がっているね
....
おなかが痛くて
おやすみしたという娘が
しょぼくれた眠い目を
こすりながらくれた
カカオ
バレンレーの日と
君が言ったから
誰がなんと言おうと
今日は
バレンレーの日
あた ....
(きみは近く
足元から古い崖が、伸び悩み
きみはすぐ下のことが分かる)
ひどく、近く
じっとしている
長いこと
息を奪われて、呑みこんだ夜
ふさわしい音はながれ ....
「ほらっ」
あっちこっちから聞こえてくるでしょう?
あのすっかりやせ細ってしまった枯れ木の根っこのあたりから
その足元の凍えて背筋をピンッと伸ばしてる土の隙間から
相手を押しのけ押しの ....
どんなに鮮烈な映像も、感情も
あとからあとから
注ぎたされる
とろりとした夢水に
輪郭を曖昧にして
とらえようとするほど
淡くまぎれてしまう
過去と未来の、あるいは
前世と来世の狭 ....
悲しみの生まれるところ
手を伸ばせば届くけれど
すぅっと零れ落ち消えてなくなってしまう
今まで見てきた景色の中で一番切なくて儚い
そんな匂いのする場所
悲しみの還るところ
....
はしっこの村に
紙切れが落ちていた
落ちていたから
拾われて
破かれて
新聞紙のように
破かれて
靴の汚れを拭かされて
綺麗になった靴を見る
この先どうされるのか
分からない
分 ....
樹の中に大きな穴を開けてやる
啄木鳥のように朝から晩まで
喧しく叩いている
壁の中に丸い穴を開ける
電気ドリルの電池が切れるまで
喧しい振動が続くまで
地面に大きな ....
値段はおいくらですか
空から澄んだ声がする
木の葉が静かに舞っている
晩秋の並木道は
人通りが無いのに
かさこそかさこそ
賑やかな気配がする
値段は、
いくらでも構わないのです
....
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