光が
空の壁を抜け
消えてゆく
遠い笑みの 細い柱
石の路の夕べの先
午後が雷を呑んだあと
あたりは暑く静かになり
失くしたものを数えだす
進む方へ 傾 ....
曲がりくねった道同士の交差点
それぞれの道の先を眺める
一本は崖から崖へ通じて
一本は丘から丘へ通じて
その先には
不釣り合いな青空が広がる
ここは底
谷間の底の交差点
騙 ....
おいてけぼりにされたんじゃない
あたしが一番なんだ
そんな苦しいいいわけが
あたしを支えていたあの頃
なんであんなに強かったのか
足裏ばかりがふんばっていた
きっといつもはだし ....
春の小川の流れ、
雑木林の枝にとまって
口を開けている唖の小鳥たちよ
黒雲から発し 丘をひっぱたいては消える
無音の稲妻
丘が放電している
晩年のルートヴィヒのスコアの凄みか
....
昨日のわたしを丁寧に埋葬する
それはやはりひとつの儀式として
今のわたしの内側には
そうやって埋葬されたいくつもの棺が
記憶と名付けられて並べられているのだ
さようなら、昨日や、あの ....
その塔は永遠に近い高度だった
人々は街を作り
補給点をつなぎながら
天を目指した
何世代も
何世代も
いつしか
塔外部の螺旋階段から
地上は見えなくなっていた
足もとに広がる空を ....
フェンス越しに飛行場が見える道
直線一〇〇〇メートル疾走する車窓から飛行場を望む
さらにはるかかなた男体山と女体山の筑波山
ほかに前を遮る山も無く
秋には飛行場の薄の原
フェンス越しの軍隊が ....
自分をせめて
ちょっと許してあきらめて
歩いてる
とまりながら
ふりかえりながら
自分に似たひとの
影をかんじながら
春風の中を
舞うように飛んでいた幼い僕は
風と仲良しだった。
風は僕に
あらゆることを教えてくれた。
空の青さ、高さと、
風に舞う小さなたくさんの花びらと、
心の中の風船を
死にたい日に
いちばんすきな靴したを履いて
興味のないパーティーへでかける
足首に
ほそいロザリオをつけた男に抱かれたら
こころとからだがはぐれた
音が鳴っていて
とても静か ....
真夜中
犬が鳴く
私も鳴く
犬ではないものも
私ではないものも
裏木戸が
閉じたり開いたりする
風が行ったり来たりする
風ではないものも
老婆は
うるさくて眠れ ....
君は踊る
薔薇を 菫を 雛菊を踊る
揚羽蝶を踊る
木洩れ日を 気ままな風を踊る
君は踊る
虹を 青ざめた夜明けを 葡萄色の黄昏を踊る
波を 湧きあがる雲を 嵐を踊る
君は踊る
....
夜、ベッドの中で
妻はいつもより濡れている
ぎゅっと抱きしめると
ぼくの腕の中で
あっけなく崩れていった
豆腐だった
水切りが足りないことに
どうして今まで
気づいて ....
値段のつく時間に
ならぶことの憂鬱
イキルってつぶやいた
小さな頃のほうが真剣だった
安易に手に入ることが
平和だと信じさせようとする
がまんって文字を辞書から
排除してもいいこ ....
不自由です
水の中にいるよに
いらないものに囲まれ
いらないものを抱え込み
みてほしくなくて
みていてほしくて
一人になりたいひとは
みな
一人がきらいなひとです
二〇〇八年七月一九日、昭和女子大学人見記念講堂に於いて八三歳の吉本が「自分がしてきた仕事が全部ひとつにつながるということを話してみたいんです」と希望して実現したのがこの講演会であり、至極当然のごとく ....
お金とのめぐり合わせ
悲観に胸を打たせず
雇われ芸人のように平らな道で滑る
お金よりも大切なもの
そんな美徳 3拍子で振り終える
マーフィーを書き写す がむしゃらな上り坂
頭だけ ....
薄日
午前と午後のはざま
直径8mmの無数の穴から私は
偽物かもしれない平穏を覗き見ている
こんど メールを送ります
そういっていなくなってしまった人たちや
畳に敷かれた二枚のお布団のこと ....
人の気持ちなんて星みたい
見えたり見えなかったり
遠すぎて不確かなもの
あこがれて美化して
ほしくってこがれて
そのくせ
目をそらしたくなったり
こそこそ 隠れたりする
想 ....
齟齬の由来
影はいつも
動く舗道の上
坂もスルスル
ずるいね
こっちは歩いているのに
考える人はこっちなのに
のっぺらぼうの頭の方が
よっぽど考え深げ
憂わしげだ
「そうね。 ....
アイスコーヒーがそそがれようと スタンバイに光る五月
雨季までの浮き沈みのない 涼やかな丈の長い 影法師の欠伸
万能なまでに普くを招く 煌びやかな夜の スタンバイに心躍るかぼちゃの馬車
....
最初の一歩は
校門へ
向かう小さな登校路
桜の花びらが
ひらひらひらひら
舞っていた
ピンクの風が吹く季節
母の手をぎゅっと握り締め
木造校舎の仮講堂
校長先生への御挨拶
一生 ....
町では桜も散り 山すその我が家までの
道沿いに見える畑には 林檎や梨の花が咲き
雪溶けの遅かったこの地にも 緑の季節が流れ始めた
除雪機で雪をとばし なんとか建てたビニールハウスでも
稲の ....
白んだ朝
淡々と家事をこなす女たちのような夜が明ける
現実の襞をめくると、憂鬱に垂れ下がった雨が、湿度と共に滞るように霧状に落ちている
五月の喧騒は静かに失われている
....
そしてまた梨の花が咲いた
記憶の裏窓に
梨の花が咲いたのだ
少年の横貌を
咽喉の線を
正しく記述する春の香気
咲いたよ 微笑む
咲いたよ はにかむ
その指が ....
季節の変わり目に窓の外を眺めている。
外は雨 外出
細い両目から差し込む光の筋
不足するイメージの光量
暗い頭蓋骨の内部を照らす
プラネタリュームは暗く
毛穴ほどの大きさの星の光のみ
....
野の花が
あんなにも
優しげに微笑むのは
きっと
手向けの花であるから
肉体を持たぬ人に
花以上に似合うものが
あるでしょうか
空腹も感じないので
食べ物はいらない
物欲も ....
野原に自転車が倒れていた
車輪が外れていたので
持っていたアイロンで
直すことにした
うまく直せないでいると
両親と兄がやってきた
みんなアイロンを持っていた
あれこれしてい ....
海のひし形 マンタ
波を揺らすマンタの先の 梵字の語尾の様な揺らめき
ダイアモンド散りばめ
灼熱のティーダを柔らかく 撫でる
南の島の底をくぐり 界上は描かれた弧の丸み和 ....
今日は風が強いのでティラノザウルスは巣に閉じこもったきっり外に出ようとはしない。風が身にしみるのだ。ただひたすら蹲っている毎日。彼はハンターだが最近とんと獲物に遭遇したことがない。もちろん空腹で仕方が ....
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