シスター、魔女たち
「黒い森を、見知らぬ男と女が逃げています。あれたちは、城下の者ではありません」
月光の影(シルエットだけ)
呪われし王の姿、針の雨嵐吹き荒れる棘丘に現す
....
歴史的なエピソードにこと欠かないこの地で
芦田川について語られることはあまりない
芦田川の河口はもちろん海とまじりあうのだが
見つめていると
この川が本質的には海であることがよくわかる
芦田 ....
手紙を出す用事があって
エレベーターを待ってる
扉が開く
エレベーターの中が
こんにゃくでいっぱいだったので
乗らずにに見送る
あんなに沢山のこんにゃくを積んで
あのエレベー ....
白いあなたはたちのぼりました
火葬場の空に
時間はどこででも流れるものだと
感じた棺の残骸
自分の嗚咽に一番 自分が驚きました
私はあなたを憎んでいたし
あなたと対決する日がこわか ....
散るために咲く花の 年々
洞庭湖の晩 暗く 俯き
薄氷の光を踏む
木立の沈黙 彩か鳥の姿まだ帰らず
君の歌声 一遇 銅琴の音 華やかなりし頃
遠く
宮廷楽人 詩酒の会
....
冷たい銀色の刃を
白い腕にあて
力を入れてスーッと引く
白い皮膚に赤い筋がつく
なぜだかわからないが
心が落ち着く
けれどすぐに不安にかられ
再び刃をあてて一気に引く
何度これを繰 ....
君は夕暮れ朱色の雲の影を追い掛けて
何処か知らない遠くの国へ迷い込んだんだ
此処には君がいなくなって少し寂しいけど
何処か知らない遠くの国の子供が踊っている
いつか君の背中には
大きな獣 ....
お嬢さん、ハンカチ落としませんでしたか
なんか懐かしいよね
それから腕時計しているくせに
いま何時?とちゃっかり左手首隠しつつ尋ねてみれば
そうねだいだいね♪
あの頃のあなた ....
・
は記号ではなく
・
は詩だ
よく尖った鉛筆で
白紙に
・
を打つ
この奇跡を
この大事件を詩と言わずして
いったいなにが、詩であるという ....
起きたてよりも
身体を少し動かした時に
命が整うように思う
偶然開いたページに
誠実に伸びている轍を見つけると
命が整うように思う
なんでもない日
みそ汁をのんでいると
命が整 ....
熱帯夜みたいなきみの瞳はもの悲しくて
ひとつぶの砂も巻き上げることはなかった
湿らせたのはほんのわずかな空間だけで
振り返った背中の先には象のおりと高らかな歓声
きみのその長い首を支え ....
ぼくは裸にもどります
着ているものを脱いで記号にもどります
記号は誰かに気付いてもらうために
信号になります
見つけてくれるまで発信し続けます
金属と石に惹かれる女たちは
アイスラ ....
終わらない轍を抱えながら
時への妄想を考古していた
時は迷路に曳かれている
命や命の周辺を発掘する
それらは無機物になって
感性や知性に弄ばれていた
終わらない轍を ....
ギッタンバッタン
ギッタンバッタン
揺れる織機に糸は止め処なく流れる
機織りする貴女の家を訪ねた
白髪交じりの老眼鏡に覗くまなざしは
古代の機織の乙女と変わらぬ清楚さで
遥か遠く
白 ....
古い鉄の欄干と、煉瓦倉庫と、にび色の水面
イースト・リバーに遺灰を撒いてほしい
ローワー・イーストサイドの
薄暗いアパートの1室での最後
(自由な精神は漂う)
過剰に言葉を組み立てる ....
テーブルの上に
こんにゃくがある
窓の外では
桜の花びらが少しずつ
風に散っている
白い磁器の皿にのせられたまま
誰に忘れられたのか
いつまで忘れられるのか
蒸発し ....
豊洲から有明へ
ゆりかもめ沿いに
豊洲駅を東へ歩く
すぐに現れるガス資料館を抜けると
広大な空き地が広がる
新開地とはこんな
空っぽの場所を指すのだろうか
遠景は遠すぎるが故 ....
祖父が死んだ
ほんでもえらいわ
そう言って祖父は私の手を頼りに起き上がった
寝ているままでいい
そう言う私を制し
それは昨日のことだった
いつものようにコンビニで
祖母のおに ....
夏のかすれた孤独のいろは
黄色いキズだらけの女の顔
ひとりかそけき偽物の怒り
哀しみが募集されている
夜の電車が紙を震わせる
カレの家を見に行くほど
俺はイカレテい ....
遠くからお帰りなさいと声がして
あったかい部屋へ転がった
ころんころん おもいやりをください
おみやげです
受け取ってください
あたため続けた 愛してる
夕べ寝ないで考えた
一生 ....
離れていても近くに感じる
会わなくてもいつも心にある
不思議な存在
いつも何処かが繋がっている
けれどベッタリと張り付くことはない
会った瞬間キラキラとした思いが弾ける
悲しみと絶 ....
暗黒の空の下には灰白色の砂が硬く積もっていた
海底は果てしなく広がっている
僕の銀色の船は今、嵐の大洋に来ている
大小のクレーターは蟹の足跡やヤドカリの巣穴のようだ
この嵐の大洋は ....
石垣島で怖かった
一月のぬるい風が怖かった
泡盛を売るおんなが怖かった
苦楽園に住むこともあったっけが
石を探して土を落として
青い洗脳が怖かった
くずれた波が白か ....
その人を見て
わたしはぼんやりほほえんでいた
はじめて会ったような気がする
だが、あたりまえにほほえんでいた
「お迎えです ....
そして弔いたいのは
君への恋心ひとつ
三十年ぶりに会った母
記憶の片隅にも無い母
けれど会った瞬間に
本当の母なのだと実感した
今まで母(と呼んでいた人)に感じていた
違和感の訳がわかった気がした
何故だかはわからない
....
肌さむいが水をふくんだ夜だった
水のぶんさむさは何処かぬるかった
ことしさいごの年始の会合のあと
熱気にすこし汗ばんだからだに
夜は心地よくてなにか昔を思い出させた
どん ....
生まれた命のかずだけ
追憶はある
みんな誰かしらの
何かしらの追憶なのだ
この夜も、あの朝も
昼間もあったか、夕暮れもあったか
七千年まえのナイルの少年の
....
一列の線を生身の地平線がひく
彼らの背後に太陽は沈みゆく
弧を描かぬ兵士達の垂直な銃剣
眠ったままの銃口は朱雲をうつす
悲しみにむかうあなた達よ
惚けてしまった私は胸の渦巻きを知らない
柱 ....
重く雲のたれこめた山脈(やまなみ)
一様に霧が立ち籠め、雑多な植物が生い茂り
山脈を覆い隠しながら、絶壁の海岸まで続き
一様にそれらが続く島並(しまなみ)
青い島の中央 ぱっくりと開いた裂 ....
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