天空の青はただ、孤独のいろ
神秘の源泉より切り出された青い石は
月の砂漠を揺られ、世界を支える山脈に沈む夕陽を眺め、
地中海を越え、さらに遠い国々に運ばれるためにある
....
地球と太陽の
その絶妙な位置関係は
引き合うチカラで出来ている
俺とおまえのそれが
この宇宙の法則のうちにないのは
いったいなぜだろう
俺たちに働いているチカラ ....
{引用=
煙草の煙の向うに霞む景色だけが角膜にやさしく映る
海にも山にも離れた場所で
満たされようと何かを(何でもいい)探している
そしてそれは至極まっとうなことだと言い聞かせて
・
....
夕方はカラスが泣く
夜は犬が泣く
家ではきみが幸せで
家族とスキー旅行の計画をたて
休みには妹とブランチの約束をする
カラスも犬も昔から
ひとりごとなど言わない ....
どうせなら木っ端微塵に
影も形もなくしてしまって
幻想に揺すぶられずにいられるように
手前勝手な妄想が記憶の隅をくすぐって
わたしの足を止めるのだ
手前勝手な ....
ねえ お母さん
なんで私を育てたの?
育てられなかった実の娘の身代わりなの?
自分の老後の面倒をみてほしかったの?
ねえ お母さん
なんで私を育てたの?
あなたの笑顔が可愛かっ ....
あなたの手が翻る
そうね、機嫌でもよいようね、あなたのことだから 前触れなんてないけど
あの歌の指揮でもしているの?
そうね、たしかにそんなふうな旋律をくちづさみながらだわね
そんなことも ....
鬼がやってきたので 福豆を袋ごと投げつけた
クイックモーションから全力で投げた
「 俺が大殺界だってこと、わかって来てんのか! コラ! 」
鬼に投げつけた袋を拾うて ほぼゼロ距離 ....
大きな河がある。
河原の茂み越しに夕日が沈む
大きな赤い夕日が沈む
川沿いの巨大な倉庫の
グレーのシルエットを引きずりながら
大きな河がある。
河原の水際にホームレスのホーム
ホ ....
かつん、とネジが落ちてきて
気づいたの
あの銀色の月は
機械仕掛けなんだって
黒い蝶が
りらりら羽ばたいて
夜の甘水を渡っていく
世界が
どんなに張りぼてだって
眼に映る ....
ぼくが遺書を書く
きみがそれを紙飛行機にして飛ばす
そこかしこに光は降り注ぎ
そこかしこに影をつくっている
紙飛行機が草原に不時着する
文字の無い白い翼のところを
蟻が ....
目覚めて闇 朝
まだ夜の明けてない六畳の部屋で
叫びたくなる
何かをしらせたいのではなく
ただ叫びたくなる
背中をつき破って羽化したいんだ
人がひとでなしになるのは
あまりにも世 ....
あしたからさくら咲くころまで
毎週ゴルフ場にゆくことになってる
ぜんぶ山んなかのコースだから
毎週自然に会いにゆくようなものだ
これから二ヶ月の山の自然の移ろい
季節とは ....
{引用=
重いドアをから入ってきた日差しが、また去ってゆく
追い掛けてもだめ
太陽はおまえのものだけではないから
悲しげね
寂しげね
だから言ったでしょう
おまえは野の兎を捕まえるように ....
駄目なお母さんでごめんね
いつも我侭言ってごめんね
でもね あなたがいるから
お母さんは生きていられるの
とっても とっても 辛くて
遠くへ行ってしまいたいと思った時も
あなたの笑顔が止め ....
{引用=
蓄音器から聞こえてくる歌劇に
あなたとの情事を重ねて
センチメンタルに浸る
贅沢に愛を貪りながら
少し破廉恥かしら、と頬を赤らめて
けれど、
いつまでも花の少女ではいられな ....
死者の目に
いちにちのうち
なんどかなってしまう
傍観している
肉をもたない霊となって
肉をもたないだけではない
傍観するいがい
なんの術もなくしてしまって
....
白く獰猛な太陽は
月面の果てしない砂(レゴリス)に生命を吸いとられるように沈み
僕の銀色の船は水のない海(マーレ)を
宇宙の闇夜に揺られながらゆっくりと航行する。
僕は今、雨の ....
わたしの彼は駆け出しミュージシャン
現代の若者と言えばロックバンドで
例にもれず彼はボーカルを務めてる
週末になれば仲間を集め
小さなライブハウスで叫んでるけど
スタンドは冷めきって ....
痩せて行く月を眺めながら
君はにこやかな笑みを魅せ
二人っきりの時間はそんなに無いはずなのに
黒猫は二人の間を取り持つように
しっぽを足に絡み付け媚を売り
君はそれににこやかな顔で応 ....
朝からスタンバってる
観光地のもの売りたちを
死者の目で見つめていた
こころがつくる霊性もあるだろう
こころがつくる肉というものもあるだろう
そういうものは
昼や夕 ....
最後のひと粒まで絞り出したと思っていた
種袋の中から再び種はとめどなく溢れて
私の足下を濡らします
蔓はのびて再び身体はとらわれ
私は動脈をあずけ蕾をひらくことに専念します
この柔らかい ....
{引用=
蓮華草が
一面に咲いていて
夢中で
蜜蜂を追いかけた
時々
朝露が膝に跳ねて
はやる気持ちに
追い付かない足が
まるで
恋のようだと
あがる息に
喉が鳴った
振 ....
あなたの温もりを知りたくて
陰茎を膣に挿し入れる
じっと
奥にある子宮の温もり
羊水の中で
守られていた頃を
思い出しながら
唇を重ね
舌をからませる
異なる二人の体温が ....
{引用=
君の匂いが風に吹き消される中で、僕は考えていた。
シッダールタとゴーウィンダが別れた日を。
僕らは唯一を失い孤独に震えるだろう。
その震えは誕生の産声の後の、それと同じものであるのだ ....
観光地はいつも午前の匂いがする
車の音もまだわかい
ゆびさきもつめたい
あたまもどこか夢をひきずっている
そらがまだあたらしい
朝早くに腹ごしらえをして
観光にくり ....
もっと簡単にあなたを愛したい
複雑な手続きなど経ることなく
もっと簡単に
もっと簡略に
僕は僕の皮膚を越えて
外に出て行くことはできない
僕から出て行くのは言葉
それは様 ....
午前一時七分
ごらん
粉雪が降っているよ
まるで天使の羽が舞っているように
今は
僕らだけの窓辺
君と一緒に過ごしたクリスマス
最初の告白
....
風が春だった
ロカ岬にたったような風の匂いがした
曇り空にはひかりと影の階段があった
幻視にちがいなかった
ショパンの別れの曲が聴こえてきた
幻聴にちがいなかった
....
(貴女は、だんだん、眠くなる。)
欲望はいつも、最後に瞳孔をひらかせる。
深く閉ざされた眼をもつ者の数だけ、暗い夜の、虹をみる。
荒野を疾走する犬の群れ。
....
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