雲が
太陽を隠しています
きっと
あの向こうには
壮大な楽しみがあります
だけど、それを
雲は
わたしに
見せてはくれません
こどもの頃
おとなが見せてくれなかった
テレビドラマを
思い出します ....
ありゃあ
ぜったい略奪婚の
名残りだぜ
衆人環視の中で
父親が娘を連れて
バージンロードを歩み
花婿に手渡す
なんてさ
敗れた族長が
征服者に
降伏の証として
自族 ....
おれは酎ハイ
ふたりは生中
途中下車して駅前の
会社の帰りやきとり屋
仕事の話
お互いの主張
多少気まずくなる話
家族の話
時計を見ると
もう ....
夕闇のなかでふるえながら
どれほどの
自分の亡骸をみおくったろう
優しいばかりでは生きてゆけないこと
たくさんの人たちに教えられて
それでも
世界をいとおしむやりかたを
変えられ ....
東口改札から
身を投げた二人は
人知れず裏通りを流されて
ライオン像の視界を
斜めに掠めつつ
川底の止り木に引っかかった
三丁目交差点に
打ち上げられた二人は
これ見よがしにじ ....
赤い紅、鈴虫の声
夏の光を殺して空に唄う
君の細い肩、狂おしく
すべてが溶けて時は止まった
どうしてまた帰ってきた、何もないこの場所に
鈴虫の声
今年もまた聞こ ....
きっかけなんてないままに
特別な理由には目もくれず
ただ夢中で積み上げていく
行けるところまで行ってみよう、と
そんな毎日が楽しみでした
円柱形の白いもの
どこで拾ってきた ....
感謝しない人
暴言を吐く人
命を大切に
しない人
暴力を振う人
威圧する人
仕事が丁寧で
ない人
懸命に努力
しない人
優しく
ない人
はんぶん機械のようなものだ
*
コーヒーの無機的な味
オーソドックスに平日の朝をまとめあげる
適切な手段と手続きに従って、予定された課題を消化する
抗体がいまのと ....
「 赤イ羽根共同募金ノ御協力、オ願イイタシマス 」
後輩ふたりを左右に、僕はまん中で募金箱を首から下げて
通り過ぎゆく人々の誰かの胸へ、ひとつの声が届くよう
道化のふりした明るさで、一心に ....
大きな回遊魚が買い物に来て言う
「服はなるべく大人な方がいい」
静かに掴んだ胸ビレで
僕は世界を辿ってゆく
すべての気泡に魔法のようなメッセージ
色は求めれば彩り 忘れれば ....
女を助手席から蹴り出して
さよならをした帰り道
青灰いろが焦げています
秋夜のむこうに燈るのです
燃えたのです
赤いパンティーが棄てられて
ペニスをくわえて貴女 ....
空が青ければ気分も晴れるほど人間は都合よくできていない。
それは夏になったからといって恋をしたことなどただの一度もない事実からも証明できる。
感情は引力で私を押し倒し、重力で沈める。
....
内耳のような誘導路をすり抜けた時
滲んだ涙は悲しいせいじゃない
出口はずっと前から知っていた
いつも見えないふりをしていただけだから
背筋のような滑走路を走り出した時
浮かんだ笑みは ....
幸せの疑似体験をした翌朝
依然として闘病生活の真っ只中で
生理的欲求をめいいっぱいに吐き出した
軽い貧血に対して冷静な自分を
少しばかり嫌になる
嫌いなものを嫌いと言えて
好きなも ....
夕暮れの通りで
僕は見る。
長い影を引き摺った
車椅子に乗った老人を
中折れ帽をかぶって
ブルゾンを着込んだ老人は
車椅子に毅然と座ったまま
一点を見つめている。
横顔には深く ....
霜降る雪降るどんより曇天
どんと置かれどんだけ
脂肪
細くしたたる汁白いしるしする
スローにすするそっとすする
気を震わせふれさせては
ふるえながら死んだから
氷水
油滴箸先ア ....
やわらかく、いま
はっきりとした
輪郭で、ミシガン
名もない傾斜に、着岸
している、濡れる
髪のひかり、ひそやかな
荊、起き上がれずに
うわごとのように
ミシガン、破れ ....
090927
三味線の爪弾く音が
かすかに聞こえてくる
母様が弾いているのだろう
母様が家を出たら
教えてくれる人が居なくなるので
母様が家にいる間 ....
夜のピースにはまるひと
かわいい子供が泣いて
そっとオフにもどるひと
見た目はきらきら
こころはながく
話を聞いてくれるひと
お月さまが壊れていると
詩を詠む男の子
半月とひ ....
数千億の水の龍が
大地に嫁ぐ音で
安らかに{ルビ微睡=まどろ}む
頭蓋の裏窓から眺めるよ
天よりただその為に落ちる
水の龍達よ
すまない
君らを救えないが
私は救われた
頭蓋の裏 ....
手が汚れたら手を洗うのと同じように、君は身の回りのものを捨てる。
私はそれと同時に、美容院で夏に傷んだ毛先をケアしてもらう、
ある人はカラオケに行くのかもしれない、
またある人は衝動買いをするの ....
今日最後の光が
暗闇に飲み込まれる時
僕の左側は
ありふれた原風景に帰りたがる
無闇に掻きむしられた
胸の裏地のヒリヒリを
残業前のコーヒーブレイクで
なだめすかす
今日最後の ....
ひとつのメルヒェンが世界を往復するあいだに
路地裏の女はひらがなで大きく書かれた
しなないという文字を
街の中心地へと押し出そうとしている
(光の海で星と泳ぐ少女の物語も日が暮 ....
よく晴れた日曜日の朝
洗い立ての心臓を
物干し竿に干した
切り離された動脈と静脈を
洗濯バサミでとめて
(ぶらぶら)
風に揺れるその動きが鈍い
滴る雫が陽光に照 ....
朝の薄闇の中
漸く日の光にあたるはずだった蛙は
また暗く深い井戸に
引っ張られ
ボッチャン
暗い闇と死骸の腐敗した臭いの充満した井戸
這い上るはずの壁はあるのだが
真っ暗闇で ....
硝子の眼が欲しい
濁った眼は棄てたい
凍り付いて、怖じ気づいた膝小僧
全部、全部、棄てたい
全部、全部、硝子製になればいい
隠れ家で填めよう
新しい部位・部品
独りきりのメタモルフォーゼ ....
今日も太陽はご機嫌ななめで
一面に白い濃淡が広がっている
北風は旅人のコートを脱がせることができなかった
知っているくせに
空がこんなにつめたいのを
「仕方がない」で済ませる人と ....
死神の歩く道
覚えておくといい
よく見ておけ
よく覚えておけ
表現者が列を成して歩いているあの道、あの十字路、あの交差点
それぞれがそれぞれのホムンクルスを抱え、歩いている
よく覚 ....
「秋の夜は果てしなく長いのだから」と
あなたは言って
舳先の行く手を確かめながらゆっくりと櫂をこぐ
おとこのひとに体を許す
例え今夜がはじめてではないにしても
月明かりは艶かしく ....
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