獅子と兎、声
瑠王
星を喰う獅子が落ち
彼方燃える夕刻に
寄る辺ない足取りは
今にも崩れそうな橋を想定した
白線を辿る
鼻歌が頭蓋に響いては
鞄を持って耳から逃げてゆく
使い物にならない両手で耳を塞ぐと
今度は宇宙の音がする
もう獅子も眠ったのだろう
我が物顔で兎達が餅をつく
黙っていれば誰の声もしないものだ
独り言は掴み所なく
兎達に届くでもなく
風船のように見えなくなってしまった
あるいは数日のちに
雨になって降ってくるのかもしれないけど
使い物にならない両手で耳を塞ぐと
声が頭蓋に響いては
やはり宇宙に消えてゆく
誰かに向けた声でなければ
やはり私は宇宙に消えてゆく
そして電話が鳴った
公衆電話からいれたはずの留守番電話
君は僕の声を辿ってきてくれる
まっすぐな一本道の
ずっと向こうから手を振って
あなたの声も
誰かにとっては
二つとない芸術であること