獅子と兎、声
瑠王

星を喰う獅子が落ち
彼方燃える夕刻に
寄る辺ない足取りは
今にも崩れそうな橋を想定した
白線を辿る

鼻歌が頭蓋に響いては
鞄を持って耳から逃げてゆく
使い物にならない両手で耳を塞ぐと
今度は宇宙の音がする

もう獅子も眠ったのだろう
我が物顔で兎達が餅をつく
黙っていれば誰の声もしないものだ
独り言は掴み所なく
兎達に届くでもなく
風船のように見えなくなってしまった
あるいは数日のちに
雨になって降ってくるのかもしれないけど

使い物にならない両手で耳を塞ぐと
声が頭蓋に響いては
やはり宇宙に消えてゆく

誰かに向けた声でなければ
やはり私は宇宙に消えてゆく




そして電話が鳴った

公衆電話からいれたはずの留守番電話
君は僕の声を辿ってきてくれる
まっすぐな一本道の
ずっと向こうから手を振って


あなたの声も
誰かにとっては
二つとない芸術であること



自由詩 獅子と兎、声 Copyright 瑠王 2009-11-27 14:47:31
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