最近の紙ってのは
紙じゃないね
ケント紙だとかルーズリーフだとか
下らない
にじまない紙の何処が紙だというんだ
紙はね
にじんでこそ紙の価値が問われるのさ
とく ....
頁をめくる指に
降る水がある
温度とそうでないものとが混在し
それは仄かな懐かしさで
やがて積もっていく
一月の末日
漢方の匂いが漂う診療所の待合室
あなたはまだ誰にも知られていない
....
冬だね
ほんと
もう公園の木
裸だね
寒そうに
ねえ
踊ろう
でもまだ
カーテン
つけてないんだね
外の人々から
どう見える
だろうね
幸せな
風景か ....
うなじにもいて
みぞおちにもいる
雨はいろんな速さの生きもの
応える声に重なってゆく
肌をついばみ
葉のようにすぎ
甘く指を噛み
飛びたつしるし
強さでもな ....
ひとひら手のひらに舞い落ちる雪
触れたら溶けて消えるはかない命
かたくなな君の心を溶かすために
僕は幾夜も眠れぬ夜を過ごした
その冷たいまなざしはまるで雪姫
誰も愛することはない
....
{画像=070201145518.bmp}
{引用=
蒼い
空の水紋
降りてくる影
小首を傾けながら
やわらかな円は広がり
石の小径の残雪に
触れ 囁く
今 ....
雲の隙間
欠けた月
真円になり得ない
輝きを見る
駅のホームに過ぎる風
またしても面影を見つけて
一筋の雫が伝う
いつまで覚えているのか
どれだけ抱えていくのか
片隅に震えて ....
どこまでも続く道を一人暗闇の中歩いている
一人で一人で一人で一人で ひぃっ
人生知れたこと
どうなる地球
どうなるルー大柴
まだこんなことろにいる自分
さっさと片 ....
「雪の音階」
舞う羽の静かな音こぼれるよう
手のひらの中で羽化した希望(のぞみ)
こんこんとこころに積もる雪の下
あなたが埋めた種が芽を出す
....
果てなく遠い道の中
私は歩く
私は鳥になれないから
その道を一気に飛んではゆけない
私は
私を飛び越えることはできない
私は風になれないから
その道を一息に飛んではゆけない
私 ....
先生、誰も来ない放課後です
理科室は薬品の匂い
閉められた
暗幕の心地良い温度
埃が泳いでいきます
気だるい午後です、先生
魚になるにはどうしたらいいですか
答えの出ない ....
どうでもいいような昔のことを
おおげさに懐かしがったり
にぎやかに笑いあったりしながら
おれたちは川べりの細い道を
ただぶらぶらと歩いていた
真冬の太陽は
弱々しいけれどやさしく
そして ....
郵便受けに
故郷からの便りが
届いていたので
返信を認めて
ポストに投函しに
夕暮れの街に
足を向けた時には
五時の鐘の音を
久しぶりに聞いていた
その独特の匂いに
包まれるよ ....
{引用=
雪睫毛、って言葉を
貴方に送る手紙の冒頭に書きたくなって
意味も勿論分からないままに
便箋を箪笥から出してきました
}
「雪睫毛」
二〇〇六年 十二月 三十一日 大 ....
わたしは詩のなかで
一本の木になることができる
地に根を張り
そこにい続けることができる
少女が来て
本を読んで
少女は帰ってゆく
わたしは詩のなかで
そらをとぶことができる
高 ....
神が
アダムの肋骨から
イヴを造りだしたように
おまえは
おまえの鎖骨から
わたしを造りだしなさい
おまえのその
滑らかな肩に眠る
真っ白な翼のかたちをした骨で
そうした ....
一夜の頃
初めてあなたと離れた夜
一人の夜は何か不思議で
夜の音を聞いている間に
過ぎてしまいました
二夜の頃
あなたがいないことに慣れてしまった夜
何をしていいか分か ....
曇りがちな心と晴れ渡った空
なんかうそ臭い天気を
恨めしげに見上げ
雲一つないことを
恐いと思った
小さなウソ
大きな矛盾
俺に背負いきれるのか
試されてい ....
もうひとつの空の下には
空想好きの少女がいた
彼女は瞳の中で
小さな星を育てていて
世界からこぼれるように鳴るメロディーに
詞をつけては歌いながら暮らしていた
詞の中では少女は
....
つくしの帽子は何色帽子
何を夢見て冬に編む
きのこの襟巻き何ガラ襟巻き
何処に繋がるその首の先
木の芽 木の又 何の殻
硬い木の皮なぜ避ける
今日は日差しの射すがまま
明日は春が来るかし ....
夜になりきれない
うすむらさきの空
段々模様の
やさしい音色
坂道を
駆け足でころがる夕日
向かいには海
やがて落ちると
明日のために蒸発していく
町外れの工場から沸 ....
土が匂う
そうして僕は小学生になった
昨日より暖かな陽射し
冬休みの明けた教室の
油引きの床の匂い
ジャングルジムや鉄棒の冷たさ
授業中に見えるグランドの眩しさ
雑草の中には小さな白 ....
オレンジと黄色の光
混ざり合って
照らされた僕は
午後3時の憂鬱少年
明日は今日、
同じサイクル。
日常は迷宮
僕を永遠の空間に
浸らせたまま逃さない
迷宮を出ようと
....
息をすって
息をはいて
それを一緒に
森の中で
雨にぬれて
森の中で
息をすって
息をはいて
おまえのこころ
いばらのとげに
息をすって
息をはいて
....
エレベーターに乗ろうとして
エベレストに乗ってしまった
家のローンもあと二十年くらい残ってるのに
まさか自社ビルで遭難するなんて
眠ったまま電車を乗り過ごすこと数回
失恋十数回
上司に怒鳴 ....
ごらん、
と指さしてみる北星座
黙ったままの唇を花のように開き
言葉ではなく感覚で知るものがたり
静寂だけが支配する夜だ
暗い森を裸の足で駆け抜け
青い草いきれの洗礼を受ける
星 ....
やわらかにゆれる春
少し冷たい足の裏に
わくわくが止まらない
見渡すれんげ畑の向こうを
単線の汽車がゆく
わたしの知らないどこかとどこかが
つながっている
小さな花 ....
答えの見つからない黄昏は
何も語らず海に呑まれた
わたしはハルシオンを含んだまま
冷たい駐車場で{ルビ瞼=メ}を閉じる
柔らかな夜風が
アルコホォルの香りを運び
弛緩したピアノ線が
わた ....
雨の降る日は絵の具の匂い
絵描きも今日はお休みさ
いろんな絵の具で塗った世界も
雨がみんな落としてしまう
雨の降る日は絵の具の匂い
空も街も灰色さ
ちょっぴり悲しい色だけど
雨はみん ....
{引用=
多重の自我の
小箱たち
幾重にも
蓋われた 郷愁
霧雨の中で
冷たく濡れていた
かなしみも
木枯らしの中
いくつもに分裂しながら
泣き叫ん ....
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