冬のすじ雲に
数羽の鳥が列をなし
横切ってゆく
あの空は海
冬の枯れ野に
数羽の雀が群れをなし
降り立ってゆく
この地は空
天は恵まれ
幸福は満たされ
その喜びを
地へと ....
風紋をつまみ
風紋になり
つままれ もどり
風紋に満ち
{ルビ真沙羅=まさら}に揺れて
刺すように
さすり さすり
骨ひたす色
踊る{ルビ要=かなめ}
花 ....
生きるのは/疲れましたと祖母が言う/空に刺さった冬の三日月
死にたいと/言えてしまう程わたしは自由/くたばることの出来ない自由
黄昏る/冬の寂しい路地裏に/孕んだ放火魔が火を産み落とす
....
{引用=
聞きたい声を
花束のさやぎに求め
逢いたい影を
揺れる水面にさがしても
白磁の花瓶は
花を傾けながら落ちていく
闇の波紋が広がって
あの輝きに罅( ....
もしもわたしが秋ならば
都会のビルや街路樹ごしに
優しくあなたに
オレンジ色の陽だまりを届けよう
もしもわたしが空ならば
あなたが見る通勤電車の窓の向こうに
透んだ永遠の水色を用意 ....
ほらこんな風に
指と指で窓をつくる
その空間に映し出されるのは
きっといつか見た事のある
冷たく水を{ルビ湛=たた}えた青い空
耳をそばだてて そして
聞くのはなつかしい声
冬から冬へと ....
君を想っている
君を感じている
君は僕が生まれてきた時
どこかに落としてきてしまった
大切なもう片一方
たとえ遠く離れていても
いつもそばにいる
そのことを
忘れないでほしい
....
繰り返される季節の
永遠を想う冬の朝
一面の土が白く広がる大地は
きららきららと光から音を奏で
音は寒さを物語る
繰り返される季節の
瞬間を想う冬の朝
一面の水が白く波立つ湖は
ふ ....
赤はあなたの朝のあいさつ
いまさらながらって照れちゃうけれど
橙大好き抱きしめてなんて
いまさらながら言えないけれど
黄いろい蝶が花びらみたい
いまなら素直に笑えそう ....
1.永遠の序章
(総論)
一人の少女が白い股から、鮮血を流してゆく、
夕暮れに、
今日も一つの真珠を、老女は丁寧に外してゆく。
それは来るべき季節への練習として、
周到に用意されて ....
あなたの腹黒い証明を
鏡に映して見せてください
切り開かれた瞳孔は
直視するのを嫌うでしょう
冷たい夜の水底へ
....
白い花弁に滲んだ色は、
褪めた肌の哀しみにも似て
わずかな岩の裂け目へと根をつけた
くらしの危うさを今も孕みながら
押殺した声の倹しい日々さえ底なしに
やがて崩れ落ちる恋に焦がれて
夢 ....
幹に巻きつけられた
青白い麦球は
今年も
明滅を繰り返す
流れる光は
高い空に昇って
どこへ
すれ違う流れに
爪先を探す男は
今年も
うずくまる
染みだらけのジャンバーを
....
触れて触れて 粗く
肌が肌に 痛く
どこまでも拙い指きりに
耳をすます
{ルビ白湯=さゆ}の林
そよぎささめき
花を織る熱
冷えて 冷えて
波 海鳥
山の ....
ごめんねという言葉 のみ込んで
ただ君の暮らしの一コマ 思い浮かべ
何もしてあげられないこと 少しだけ恥じ
あとはもう 口もきかずに
別々の景 ....
わたしはプロの修繕屋
まるまる全部直すのだって
お安い御用だが主義じゃない
その場その場で繕って
さすがプロだと言わせてきた
だけど これ以上
自分を繕 ....
穏やかな風が吹く
冬の晴れた日の午後
寒い日のはずなのに
その冷たさはどこにもない
鳥たちはのびやかに飛び回り
土は生きている
めったにないこの日を
人も皆
外に出て心で祝う
....
愛することは
憎むことに似ている
君が月明かりに照らされて
僕に背を向けてそう呟いた
相変わらず怒った顔していて
まるで
世界に喧嘩を売っているようだ
僕は額の青いあざを ....
初めて彼の実家にお邪魔したとき感じた
他のひとにとっては些細なこと
それでいて我慢出来ないこと
緊張して過敏になっていた訳じゃない
踏み入れてはならないもの
その家の家族だけが安らげる
ど ....
小さな吐息を
繰り返すその行為の
自己満足と陶酔のようなものでなく
声を枯らす彼女の
喉と分泌物と
歌に込められた憎しみのようなもの
それはドクトルが
犬と話すような
矮小で卑 ....
ふとしたきっかけで
王様と知り合いになった
漫画喫茶だった
王様は玉座に座るように
リクライニングシートにもたれ
隣のブースに居たわたしに
飲み物を取って参れ
と言った ....
枯れ草しかない目の前は
寂しさを感じるけれど
ここから春が訪れると思えば
渇ききった枝と自分の心にも
潤いが与えられる
土がむき出しのままの畑も
侘しさを感じるけれど
ここから生が誕 ....
あなたを探して落ちた罠
{ルビ迂闊=うかつ}だわ
あなたしか見えなくて
自分で仕掛けた罠に落ちるなんて
あなたの視線に縛られて動けない
逃げ出せばどこまでも
あなたの姿が私を追って来る ....
静まりかえった夜明け前
部屋からは見えない表通りを
鮮やかな色の洋服を着たピエロが
にこやかに微笑みながら
ボールを転がし
歩いている
深夜の主役
涙は止まらないけど ....
うたかた人のように
訪れては去っていく日々
目にするものも少しづつ移り行き
いつのまにか俺は
こんなところで居眠りをこいてた
感情の動物の人間に理屈なんて通用しない
あ ....
3月30日の夜空に あなたは「さよなら」を書いていました
11月10日の青空に 私はあなたの優しい筆跡を読みました
空の高みに遠く離れて 二筋のヒコウキ雲
交わらない線よりも 同じカンバスに ....
首がスッカリ伸びきって。
おじさんのランニングみたいになったTシャツ。
もう十分役目を果たしたんだけれど。
洗濯してたたんでしまうと。
愛着なのか。
せこいのか。
....
風呂からあがって
アイスを取り出し
座り込んで一口と
したとき
ふと
思い出した
この
ふと
っていうのは便利な言葉で
きっとどっかにとっかかりはあって
それは
忘れたつもりでい ....
剥がれ落ちた
爪を
見ていたの。
まるで
複雑すぎた人生を
真後ろから
眺めてるみたいでさ。
光りもしない
石を
ただ磨いていたの。
....
水曜日
僕は喫茶店のテーブルに座って
哲学者のように沈黙していた
ミミ子に別れを告げられたのは
先週のことだった
ミミ子は犬が好きだった
犬を飼うのでイサオとは別れる
....
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