あなたの花開くようなお口へ
鈴の音の鳴る金のスプーンに
一さじの杏ジャムを載せて
含ませたいの
とても穏やかな様子で
わたくしの はやる気持ちを隠して
柔らかな顎に そ と手 ....
五月の青い闇の中
私はか細い少年になり
夢の迷路へ踏み入った
白いうなじに風を受け
はだしの足で土を蹴り
煙る街灯はすに見て
ネオン流れる色街へ
....
欠けている
それだけで思い悩む
砂のようないのち
たとえば
ふたつの石を打ち合わせて
火をつくる
そのために
石が欠けたとしても
かまわずに石を打つ
ただ
火をつくる
それだけの ....
果たされない約束など
交わさなければ良かった
費やした言葉が無為に過ぎ去る
遠くで手を振っている影が
単なる錯覚だと気づいた時
壊れた傘の骨が頬を突いてきた
見向きもされない視線に ....
目は的を眼差して
鏃は心臓を刺す
殺すのは、嘘で、悪で、醜
生かすのは、真で、善で、美
焼いて、矯めて、鍛えた意志をさらに研いで
向かう的はひとつ
....
色を持たない水彩画のように
雨が。
数えてよ そのいくすじか
みつめてよ その息づかい
ふるふれ 雨の無表情
  
....
この街にまだ雪は降らない
灰鼠色の空は浅い冬のまま
恋人たちの吐息や
ブランコを揺らす手に護られている
わたしの何処か深くにある黒いものや
寒い、と寂しい、が似ていること
それに気 ....
湖心から湖畔へと
一艘の無人の白いボートが
静々と漂つて来る
寄せくる波に身を委ねて
従順な驢馬のやうに
いつたい何を乗せるつもりなのだらう
あるいは誰を
....
「ねえねえ、聞いて聞いて」
そう言ってくる子どもが
少なくなった
本当は聞いてほしいのに
本当はたくさん言いたいのに
「どうしたの?」
子どもの変化を察して
大人がきっかけをつくって ....
学校帰りに たむろした
自販機前を 覚えてる
学校帰りに 君と見た
夕陽に染まる 淀川も
あの頃に見た 景色たち
知らない間に 変わってた
駅前にある コンビニは
....
{引用=映写機の音がする}
彼は 人のいない小さな劇場の
古く湿った 客席に座り
白くぼぉっと光るスクリーンを見つめる
{引用=ただ、かたかたと廻 ....
師走の空は高く澄んでいて
雲は静かに流れています
朝方は特に冷えて息は白くなり
凍える手で自転車のハンドルを握る
力が入らなくてフラフラと彷徨うばかり
小学生の低学年の頃に ....
一筋の風が
窓の外通り過ぎる
何を乗せて行くの?
寂しさに零した涙も
打ちのめされた思いも
安らかな夢も
小さな光も
きっと
乗せようとすれば
乗せて行ってくれる
風が ....
誰しもが親を持つ
親のいない者はいない
無限に続く時間の中で
巡り合う奇跡
曇りがちな心を抱いて
大切なものを見落としてしまう
一番大切なものは何?
自分 ....
今も昔も
景色は何も変わらなくて
変わってゆくのは自分だけ
さみしいけれど
少しずつ大きくなっている気がする
昨日も今日も
いいことは何も無くて
変わってゆくのは時間だけ
悲しいけ ....
夕焼け
みんな迎えがきて
またね
またあした
手をふって
さよなら
ジャングルジムのてっぺんから
いつも
見送るだけ
砂場のシャベル
ブランコのさび
おかあさんが
きょ ....
ゆっくりと頬を伝って流れる涙
悲しみの雪の中を体中真っ白に染まるまで
一人で泣きながらあるいた
風が吹いてサラサラと粉雪が空に登っていく
僕の弱さを心を伝って捜した
....
詩えない者の声を聞け
摩擦をすり抜ける
声は燃える
枯れた泉に
言葉は腐れ落ちる
枯れた泉で
喉を潤せ
錆び付いた下水道
手の届かない生活水
ガブ飲みし ....
友人、麻生みつき嬢の短歌に触発されて作った短歌の羅列です。
上がみつき嬢の短歌。下が私の短歌です。
++++++++++++++++++++
7mmの薄いラインに刻まれたB5サイズの夢を見 ....
{ルビ都会=まち}のなかで
電線に絡めとられた満月がわたしを見下ろす
おまえは自由なのだとでも言いたげに
「ほんとうのしがらみは見えないものなんだよ」
とつぶやいて
蛍光灯のした ....
ほら
雪って、生きているのよ
空からここまで辿ってきた足跡が
真っ直ぐじゃない
一粒ずつみてごらん
そうしたら、ね
小さな顔がある
あ、いま 目線が合った
雪はそのむかし 薄紅 ....
雪ん子舞い散る故郷から
童子たちのまぶしい笑顔が消えた
あの頃の笑い声は
顧みることを忘れた古いアルバムのなか
北風ぴゅうぴゅう寒かろう
すっかり刈り取られた稲田を望む
古 ....
疲れた顔したあなたの前に
一杯のお茶を置く
( そこにいてほしい
( くつろいでほしい
長い間
心に固く閉じていた
{ルビ蓋=ふた}を開いて
今までそっとしまっておい ....
{引用=*四行連詩作法(木島始氏による)
1.先行四行詩の第三行目の語か句をとり、その同義語(同義句)か、あるいは反義語(反義句)を自作四行詩の第三行目に入れること。
2.先行四行詩の第四行目の語 ....
好きですってね
ためしに言ってみたんだよ
それだのに君はさ
ありがとうって言ってさ
僕は困っちゃった訳だよ
だって僕は君の事
好きだったものだから
本当にどうして良いのか
分からなくっ ....
チェーレ
君の長い睫毛から
真珠がこぼれる
チェーレ
あまりに無垢すぎて
僕はひとつもこぼさないよう
手のひらで受け止めようと
振り向きざま
君の髪がやさしくなびく
歌を歌っ ....
{引用=
一、この手
誰かと比べてみたならば
大きい小さいは
あるかも知れないけれど
空はあまりに広いし
海はあまりに重たくて
ほら、
ひとの手は
どうしようもないくらいに
....
{引用=街}
街は
灰色にかじかんで
遠くを見る
{引用=鳥}
丹念に編み込まれた
木々のレエス
鳥が壊す
{引用=画廊}
画廊の扉は
今日も閉じられて
あの絵も ....
サラサラ
サラサラ
時の流れて行く音が聞こえた
ドクドク
ドクドク
血液が流れる音が聞こえた
カーキ色した夜を越えて
浅い眠りか ....
マンションの鍵を開ける
左手にぶら下げた金魚
学校の友達と
お祭りに行ったんだ
金魚すくいでね
僕が取ったんだ
リビングの扉を開けると
ママはソファーで横になっていて
つまらなさそうに ....
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