はるをまたずに
なんでなんで
咲くの
底冷えの寒さを
わざとえらんで
ウメは咲いて
あっという間に散って
白くやわらかな
なきがらの下から
プチンプチンと
....
猛禽となり、風を信じることだ
わがもの貌で空を行く獰猛な鳥も
{ルビ不確か=きまぐれ}な風を信じるから
自由だ
タンポポとなり、風を信じることだ
着地する場所は選べなくても
{ルビ不確 ....
夜が来る
月があってもなくても
私は鳴く
誰にも聞こえない声で
私にも聞こえない声で
私という存在の途切れ目 に
夜ごと咲く花があるからだ
けれど私はその花に
触れることはおろか
....
まだ見たことのない
果実に境界線を張り
流漂する異国の砂漠
三日月が蒼く涙する
空で暗雲が轟き裂けて
光速でかおるレモン
夜のネオンきらびやかな街の一画
あまりはやってなさそうなその店の
客引のにいちゃんに騙されたふりをした
「うちは見せるだけじゃないからさ」って
一番前に座って待った
クリスタルライト ....
水の上に
君の名を書く
綺麗に流れて
心に染みた
涙溢れて
湖に
白く煙る想いは
音声を奪う
つないだ手に
刻(とき)は割れ
言葉はすべて
星になり
行く先を照 ....
最近、よく喉を詰まらせる。それも食べ物ではなく、飲み物を飲んでいる時だけ、詰まらせるのだ。何故なのかわからないが、そうなってしまうと一分以上、咳が止まらなくなる。最初のうちは苦し ....
あなたが大人買いした
その食玩達は
誰もが寝静まる真夜中
遠い国の鳴き砂に耳を澄ます
肺の奥まで吸い込んだ
着色顔料の青色は
どこまでも鮮やかで
いつまでも少女の心と身体を蝕む
....
風のための門を
行き来する影がみえる
波を越えて続く
その道を
懐かしさではなく
今日の温度で
ほたり ほたりと
流れていくものは
私の涙では ありません
手のひらに掬えば
ほんのりと色づいて
これは 紛れもない
星の溶けたものなのですよ
一粒 拾ってごらんなさい
....
息を
わたしたちは潜めて
東の空の彼方から
春がやって来るのを
待ち侘びていた
夜明けに
うすい紫の風が
わたしたちの
頭の上を撫でながら
通り抜けてゆくとき ....
私は
そらに放たれた宇宙飛行士
オフィスの
隅っこで見上げてる
ホワイトボード
お知らせのメモ
ホチキス
こんな朝から
遠い宇宙の孤独を想う
私とどこが違うのだろう
正 ....
凍えるだけ渇いて
鈴の音も響かせず
降り積もる雪の夕暮れ
雲母の肌が 幾重にもはがれていくのです
許されてしまう小さな嘘 をつくたびに
セロファンの音を立てたりはしないのです
涙の ....
ももの花
軽い衣に春染めて
緑の枝葉も知らぬうち
蕾のままに頬はほころぶ
絢爛のぼんぼりもなく
錦糸の衣も纏わずに
春の節句の雛つがい
ももいろの
笑みに吹かれて
ひな祭り
....
ふるいうたを うたってよ
みどりもえる ことばを
きかせてよ せかいの
くちびるが いちばん
やわらかだったときの
{ルビ濁=にご}った泡水が浅く流れるどぶ川に
汚れたぼろぞうきんが一枚
くしゃっと丸まったまま{ルビ棄=す}てられていた
ある時は
春の日が射す暖かい路上を
恋人に会いにゆく青年の ....
イタズラッコの春っぽの風っこが
ぴゅうと口笛を吹くように渡ると
空のほっぺたをっぽっと染めずに
かた物の茶色の樹々のさきっぽを
ほんのりももいろぴんくに大変身
....
青い朝が鈴を鳴らして合図する。
霧のむこうは、へらさぎが、雨音に耳を澄まして、
零を数え終えると、夥しい空の種が芽を出して、
幾万のひかりが降る。季節が連れて来る慈悲を、
寝台に凭れて、味 ....
揺れる
ただ君の
それは僕の
ざわついた木々
風に吹かれて言の葉いずこ
塞ぐ唇
君を浮かべる
心の
波
揺れる
波
掴む腕
ずっと前は黒電話
人指し指をひっかけて
ダイアルがもどる間に
会いたい人の
番号を呟いていた
プッシュフォン
短縮登録ができてから
電話番号を覚えなくなって
今は
....
降る雪の向こうに舌先があり
ひびわれたくちびるをなめている
黒に囲まれた空の道を
砕けては砕けては照らす風
花のからだの鳥がめざめて
空を羽の仕草になぞり
うつら うつら
空 ....
知らないとしか
答えない人がいる
知ってることも教えない
ただ自分で探してごらん
ということは教えてくれる
自分で答えを探すことが
どんなにせかいを楽しくさせるかを
その人は知っている。 ....
こうやって部屋のなかから窓の外を見ていると、雨の中でしか生きられないけものになってしまったような気がする。穴ぐらのなかで、ひたすら雨を待つ。エサはあるのだが、自分のツメで獲物を引き ....
こけこっこーで、
お目覚めっぽ。
お天気晴れたら、
お散歩っぽ。
窓の向こうを、
ちょっこり覗けば、
お外はとっても、
ご機嫌っぽ。
おべんとおむ ....
大人になりたくない と
純粋に逃げ続けた頃は通り過ぎ
大人になれない と
不透明な迷路で行き詰まった頃に
私はあなたの詩にえぐられました
初々しさが大切なの
人に対しても世の中 ....
まるで帰り道がわからなくなってしまったみたい
進む方向も曖昧で
見えるのはあなたの背中や横顔だけ
なにもかもはっきりとしないのに
魅かれてしまったのはなぜなのか
向かい合ったときにじっと見て ....
(くもはしろいだお
と、ノンちゃん色鉛筆の箱をひっくり返す
あいにく白い色鉛筆は
どこかに失くしてしまって
ノンちゃん覗き込むけど
箱はからっぽ
みつからない
ノンちゃん白い画用紙広 ....
逢いたやあなたと浜千鳥
緋と思しき爪折れは
叶わぬ侭の夢吹雪
いつかなりたや恋女房
待てど暮らせど来ぬ文を
遠い都と香り立ち
揺れる簪 手の鳴る方へ
棗に忍ぶ 恋は霞と
....
声は告げる
「風が少し強くなったような気がします」
問う前に答える
「岩と岩の間を行きましょう
枝で隠された路を」
独り言のようにつぶやく
「昔は水のにおいがしたもので ....
予鈴のずるさを聞く前に
抜け出してしまいたかった
靴に滑り込みながら
私は少しずつずれていく
それでも、毎日に所属している自分の姿に
ほっと、息が漏れてしまうのは
私のずるさ、だろうか
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173