紺碧の輝きの海に
許されぬ恋が眠っている
静かにそっと おののきながら
それは波間に漂う白い貝
だけど 今日は
海へ漕ぎ出した
その想いを摘みとるために
真珠とり
真珠とり
....
ぼくは詩を書きたい
沈黙を語るものほど
雄弁を語る
今日もまた
朝の散歩をしていると
森の木々に出会いました
天を知らないのではないかと想うほど
夏の風とともに
その幹 ....
男を好きになる度に
彼女の体から火薬の匂いがするの
情熱はジリジリと
へその下から入り込んできて
体中を燃やして行くのよ
だから いつも
骨の焼ける匂いのする
彼女の手を ....
ぼくは詩人
他人が無駄と思うのは
その人がその人だからであり
無駄と思うことが無駄である
今日もまた
夜の散歩をしていると
意義に出会いました
詩人は詩を書いて心を満たし ....
この路地裏の
アスファルトのひび割れは
どこかの埠頭の
それと
似ている
相槌を打ってもらえる筈が
ここにあるのは
頬を刺す風
見上げる雲の隙間から
一筋の光が降 ....
左の胸に手をあててみる
脈々と鼓動する心臓
生まれたときから一度も
絶えることなく続いている
僕のリズム
異国に発ったときも
死にそうなほどなやんだときも
ずっと僕の ....
夜は綻び
朝が死角からやって来る
陽射しが強くなれば
それだけ濃い影は出来て
ありふれた若さのなかに取り残したわたしと
残り時間を失ってゆくわたしが
背中合わせする毎日に
日 ....
ぼくは詩人
過去とは自分の人生の道しるべ
同時にまた未来への方向を示す
今日もまた
夜の散歩をしていると
橋に出会いました
橋の向こうは
また道が続く
舗装された道 ....
いつものように
午後をあらいながら
うつむき加減に 軽く
雲行きを確かめる
それもまた いつもの事だけれど
その
始まりの日を憶えていない
寒暖の差を道として 風は渡る
よ ....
わたしの中に棲む鬼が
すっかりいなくなったわけではないだろうに
心はずいぶんと穏やかで
すべてが夢であるかのような気さえするのです
病院の自動扉を抜けると同時に
曇天から吹き下ろされた風が
湿 ....
風をつかもうとして
草をちぎってしまった
てのひらが
鳥を呼ぼうとして
こんちくしょうと叫ぶ
声が
心のかたちを確かめたくて
君のからだを抱きしめた
腕が
今夜もずれてい ....
雨にかすんだ街を見ながら
少し寂しくなったので
あなたの言葉を思い出しました。
水溜りの中に
小さな小さな雨色の町があって
その町では
どんな事でも虹色に綺麗なんだ
あなたはどん ....
わたしとしては早く終わって欲しいのに
あなたはまるで厳粛な儀式に望む
いんちきくさい司祭のような面持ちで
わたしのかたちを確めてみたり
わたしの知らないかたちで動こうとする
ふだんと違う表情 ....
海鳴りは遥か遠くでさざめいて
波間に浮かぶ言霊たちは
いちばん美しい響きを求めて
たがいに手を伸ばしあう
砂浜に打ち上げられた巻き貝は
もはや亡骸となり果てて
右の耳に ....
蝶を見た朝
森から森へ
子はひとり織る
銀の声
緑をつらぬく小さな音
つらぬかれた跡の揺れる音
つらぬいたものが緑に染まり
水の底から空を見る音
銀が重なり ....
大きなガラス扉
日焼けしたブラインド
貸店舗、の白い貼り紙
コンビニになりきれなかった
角の、たなか屋
殺風景な店先のコンクリートには
ただひとつ
小さな郵便ポストが生えたまま
舌 ....
#31
言葉は
無力ではない
あなたの
言葉が
無力なのだ
#32
今日は
どこにも行く気がしないし
なんにもしたくないから
携帯電話の電 ....
立ち位置を、探している。
いつまでも見つからない、
足の踏み場を。
もしくは、
消えてしまった君の幻を
抱きしめる、
世界の中心を。
人波の川が流れゆく
この街の中で、
....
ぼくは詩人
人として想い想われ過ぐる日は
明日への道の灯火となる
今日もまた
夜の散歩をしていると
灯火に出会いました
暗く細いこの道に
ほのかにゆらめくその火は
....
むき出しの腕を風が滑っていく感触は、
洗いたてのシャツに袖を通した時によく似ている。
ペダルを踏み、耳の後ろで逆巻く風を感じながら、
夏がくるのだ、と君は思う。
街の影が ....
湾曲している水平線上にて、
しめって酸化しそうな金属の肌が
垂れこめた雲に灰色の腐蝕を放っていて
見あげても星は降る気配
海の月の揺らぎ
飽和した幻影の瞬く電子
この神経を流れ去ることのな ....
空の水がみな注ぐ
水無月ならばこそ
ガクアジサイのぼんぼりに
青色 むらさき
灯りを点けて
こころの内を絵に描いてみる
哀しみ惑う雨模様は
霧雨に溶いた絵の具で
ぼんやり滲んで ....
深い眼差しを、
赤く朝焼けした巨木におよがして、
動きだすふたりの直きせせらぎが、
ふくよかな森の奥行きを高めて。
始まりは、乾いた無音を燻らせる、
茫々とした朝霧を追い越して、
あさ ....
雨が止みはじめた頃に、
傘を差しはじめてみた。
びしょ濡れになって傘の下、
僕は何かに守られていると強く感じる。
道の向こう側から、
少年が歩いてくる。
あの懐かしい長靴の黄色が、
僕の ....
初夏の陽射しは 便りを運ぶ
宛名も消印も
差出人も
見当たらないけれど
懐かしさという
こころもとない手触りに
わたしは ゆっくり目を閉じて
紫陽花のさざなみに
いだかれる
....
今朝、校舎の前で
無口な少女を見た
目が合うと
少しだけ笑って
そのまま自転車の
静かなスピードで
追い越してった、八時十五分。
無口な少女の
名前を知らない、
先生が出席をとっ ....
雨から雨へ
飛びつづける声
かすかにまだらに色褪せながら
遠く遠く張られる弦に
願いのようにふるえ伝わる
にじみ ひろがり
蒼く猛り
たわみ ゆがみ
灰にさざめき
ひ ....
100と0
それでも足せば100だけど
アタシ一人の 100はシンドイ
ヤメちゃおう
もうヤメちゃったと言ってみる
こんなときだけ 意志が強い
なぜ
肩掛けのカバ ....
ブルーベリージャムの あまずっぱい朝に
「お早う」と言って
庭へ目をやる
すっと口許に手をそえ
ちいさな欠伸
すこし涙がじんわり
(うつむいて)
すっと小さな海をふちどる
縁側でやんわ ....
世界のありったけの明かりに負けず
その人の背中越しに三日月が見えた
一瞬で長い腕がそれを遮る
活路を見出さなくてはね
しっとりした声で
それはそろりと湖底を撫でるよう ....
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