彩るうたを{ルビ口遊=くちずさ}む
こんな命があるかしら
{ルビ水=み}の{ルビ面=も}に蝶が浮いている
ちらともせずに浮いている
こんな命があるかしら
あすを知りえず浮いている
....
ピュウピュウ北風吹けば
寒くて唇が乾くので
つい唇を舐めてしまう
舐めるうちにカサカサになって
赤く腫れ上がった
僕のたらこ
リップクリームを塗ったら
気にしないのが一番
だけ ....
ときとき と 痛む胸
憧れなのか
せつなさなのか
見上げたら 空が青かった
冷たくなった風に
私の心がついて行けない
まだ
そんなに確かじゃない
決められない
このまま冬になろう ....
冷たい雪の降る夜に
わたしのからだは凍えてゆくから
わたしのからだは
小さくなる
わたしはわたしを抱き締める
冷たい雪の降る夜に
わたしのことを
わたしのほかに
....
底ひ無く
心 沈む
みあげれば あおい闇
青ざめてゆく風のなか
声も無く笑った
雨の夢は白らかに咲く
虹のもと影ろふ立ち姿
底ひ無く
心 沈む
みあげれば あおい闇
....
人は夜に音になって
躓かない程度に囁き合うらしい
朝が夜に向かうように
ページを手繰り寄せる
薄い絵の具を
筆の先で伸ばすように心音を
澄ませていく
夢を見る、ことを覚えてからは ....
重力に
負けそうなときは
2センチぐらい
地球とお別れ
ティンカーベルの粉
ひとさじ
ふりかけて
思いも無いのに思いどおりの
見てはいけない夢からさめて
終わり はじまるわたしがあり
気づけば朝を歩いている
かがやきやたかなりを
しあわせと呼ぶことに
ためらいく ....
夜が明けると
私たちに
秋がやってきた
その意味が
私には
ようやくわかる
木々が実を宿し
さよならの準備をする
鳥たちが
それをついばむ
私たちは
あと
どれくら ....
奇妙な事だ
君と僕の距離は
星の運行と
無関係
だから
神には祈らない
誰にも支配させない
君との距離
僕はしない
存在の曖昧なものに
心を預けたりしない
....
どことなくストレス加減の昼休み
冷たい珈琲に浮かんだ氷を
ストローの先でつついたら
猫みみのかたちの小さな生きものが
ちょこりと顔を出した
頭痛の道連れに
こんな小粋な錯覚が訪れる ....
感情にも質量があるのだとすれば
あふれ出る涙は感情の質量の飽和
涙がしょっぱいのは
我らが海から来た証拠
大気中でも飽和した質量でこぼす涙が雨と呼ばれる
ひょっとしたら
大空にも感 ....
此の地面は
匂いも、何も
残らない性質です
此処にいることを示せず
湧き上がること溢れることを戒めてゆく動作が
結果的には
瞬きです
此の地面は
風へと ....
鳴かぬ 小鳥は
口止めされたのでしょう
ひとつ めでられたら
無くすよりも たやすく
このくちばしで
守るのは
明日の 春では
ないのです
落ち葉の鳴る、崩れ落ちる音
誰も妨げないテトラポッド
景色、静かな君を当たり前に思って
空に手を向けて
朝、誰もいない道に目を閉じて歩く
歌を歌えない
と気付いたのはいつだっただろ ....
頬を追い越してゆく風と
手招きをするような
まばゆい光
目指すべき方角は一つだと信じて疑わず
出口へと向かって
足を運んでいたつもりだった
不思議だね
振り返ることは敗北では ....
月が冴えわたる冬の夜
田園の雪の波が
月光に青白くきらめいて
をんなの肌に深く映ります
あぁしんど
酔い醒ましにちょいと表に出てきたけれど
伏し目がちな月影は
わかばにマッチをすっていま ....
優しければ 誰でもよかったわけじゃない
ちょこっとひねくれた
不器用な優しさが 好きだった
広い胸ならよかったわけじゃない
壊れ物みたいにそっと わたしを包む
あなただから ....
蝋燭の
仄かに灯した明かりだけで
読みたい物語がある
閉ざされた雪山の麓の
貧しい村の物語
痩せた土壌では穀物も育たず
日照りの夏と実らぬ秋を経て
魂の芯まで凍える冬を迎 ....
約束を残せない
こころの道行きを
{ルビ現在=いま}の寂しさを埋めるため、と
ほほをよせ
せがんだひと
秒針の刻む音で測る体温
明日への確かな足取りよりも
ぬくもりがほしい
今 ....
春までの道のりを
手探りするきみの指で
うたは束の間、白く結晶する
凍れる河と
色褪せた山並みと
特急列車の行方を挟み
わたしの前で野分の一陣はわらう
今日も約束の書けぬ手紙 ....
嘘つきだった君を剥がしてあげよう
昼間のシャツは
白すぎたんじゃないか
夕飯のサラダは
潔すぎたんじゃないか
嘘つきだった君を剥がしてあげよう
すべてを明け渡し ....
欲しいものが手に入らないと
やっぱ寂しい
下を向いて歩く冬の街角は
何だか寒々しいな
もうすぐクリスマスだし
賑やかに感じる街角を
ポケットに手を入れて歩く
何も ....
思い通りに喋れない
言葉が言葉になりきれずに
まるで蛹みたいにうずくまっている
戸惑いや迷いが
細い糸のようにからまって
いつしか自分自身を閉じ込める
繭になる
吐き出さ ....
庇から零れた一滴
微かな時間を奪われて
誰も気付かぬ苦笑い
皮肉を孕んで頬濡らす
眼鏡に張り付く七色が
淀みを儚く映し出す
娼婦の囁く愛の歌
路上に輝くガラスの破片
雨音と詠う ....
遅すぎたかもしれない出会い
僕は遠回りしすぎた
時刻票なんてみてなかったから
終電に乗り遅れた
歩いて帰らなければならない
誰もいない深夜の曲がりくねった道
それでも
....
偽造された朝を押しつけられても
注文どおりの覚醒など出来よう筈もなく
自らを小さく蝕むことで
存在可能な時空をどうにかつなぎとめ
意識はただ浅く笑い
深く滅んでゆく
....
つまずいてばかりの日々にうつむいて
ちぢんだ心を{ルビ潤=うるお}す
水の湧き出る場所を探し歩いた
立ち止まり シャベルで穴を掘り続け
気がつくと
静まり返った暗い穴底にひとり
小 ....
きわめて無機質なショウケースは
その中が厳重な保護下に置かれていることを物語り
光の粒が華やぐ中に一際大きな輝きが鎮座していた
限りなく透明なラウンドブリリアントカットは
冷ややかな気 ....
雲ひとつなく秋晴れの空
父の運転で越えていた峠も
いまならば
自分の運転で越えられる
アクセルの踏み加減でスピードを調節
ブレーキなんか踏まない
でも
思いの外カーブは厳しい ....
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