聴きたい言葉があるから
言葉を選り分けがちだから
わたしのうたは
時々停まる
勝手気ままな振る舞いなのに
まわりは優しく熱してくれるから
溶けて、冷えて
溶けて、冷えて
わたし ....
話をすればそれらは
すべて白紙になる、例えば
真冬の薄暗い水面を航行してきた
一艘の空気自転車が
小さな港に着岸する
凍てつく畑を耕す幼いままの父や
瓶の底に落ちていく身体
擦り ....
土の中の箱の中に
しまい込められた
あの頃の未来の絵は
もうとっくに
古くさい世界で
そう
あなたはとっくに
幸せになってるはずだ
風の知らせで ....
忘れ物 に なったハンカチ
あわいもも色 うさぎを飼って
駅の向こうから来る
おんなの子を見て
つれていって
と、輪をかいた
石のむれをしずめた 海と
とおい空 かすれた ....
○「有難い話」
猛暑の中
ふだんどおり仕事をしている人たちがいる
先ほどゴミ収集車がいつものように来た
こういう人たちのおかげで
世の中がまわっているのだ
有難い!
有難い!
○「 ....
コンビニで弁当と惣菜をひとつ
缶ビールは明日のためにふたつ
あとはテレビをつけっぱなしで眠るだけ
冬には窓のすきま風が冷たく
クーラーをつければ部屋から出れない夏
そんな二階のアパ ....
雨が降っている
雨だと思う
すべてが細くなる
無い言葉
はずれた草花
消えていく庭は
町工場のところで
途切れてしまった
ノートの中にある
わたしの罫線
罫線に隠している
....
何事も
60点で
良しとする
○「田舎暮らしに欠かせないもの」
草刈り機
かゆみ止め
香典袋
朝夕のあいさつ
○「薬代」
薬を食べているような人たちが
いる
薬局で薬代を
4万5千円ぐらい払っている人がいた
....
新聞屋は忙しい
その日のうちに記事を書き上げて印刷する
日が明けてまだ暗い夜明け前、遅くとも2時までには配送される
各々集積所から各家庭に配らなければならないからだ
だからといって投稿欄の ....
日差しの刃に斬られ
だらしなく溶けてゆくかき氷の
まだ冷たいスプーンをなめながら
またひとつ星がおちたのに気づく
小豆とぎと河童と
座敷わらしとあと誰だっけ
訃報を連絡するために
黴 ....
葬式に行っても
涙が出てこない
もう悲しむ力まで
なくなってしまったか
長生きすればするほど
友だちがいなくなる
知り合いがいなくなる
飲み放題食べ放題は
昔のこと
若い頃はいくらで ....
仕事だから しんどい事もたくさんあったけど
仕事だから やらなければならない
その思いが 私の心と体の健康を 守ってくれた
空想的な理想主義者だった自分を
現場の人間へと 鍛え上げ ....
○「クールビズ」
ワイフが暑さに堪えかねて
「パンツはかないと楽なんだけど」
と恐ろしいことをいう
ワイフが暑さに耐えかねて
「ブラジャーつけないと楽なんだけど」
と恐ろしいことをいう
....
剥がれた分度器を
落ちている人のように
並べていくみたいに
拙い息継ぎが
街の柔らかいところに
終わっていくみたいに
コンビ、ニエン、スストアで
スストアで
淡い方の手を近づけ ....
○「ふれあいの旅」
千葉へは仲間とのふれあい
上高地へは自然とのふれあい
どちらも感謝感激の旅だった
○「ユーモア」
「どちらまで行かれたんですか」
とすれ違った山ガールが
可愛く尋 ....
玉名市の「麗紅」という名の蜜柑皮は薄くて甘味が強い
老朽化の市営住宅壊される良い噂なく不人気だった
環境の整った場所大人気デザイン重視の市営住宅
春キャベツ甘く美味しく子に好評野菜嫌 ....
○「人間関係」
先走り、深読み、一人考えは
空回りのもと
○「再び河童橋へ」
五年ぶりに河童橋に立つことができた
実は去年の秋4年ぶりにここに立つ計画を立てていたが
当日の朝いつも ....
夜明けのあほんだら
わたしが眠れるまで待ってほしかった
○「他生の縁」
登山道で
交わすあいさつも
他生の縁
山小屋で
同室になるも
他生の縁
洋式トイレで
尻つけ合うも
他生の縁
○「下山途中」
冷たい雨に降られて
飛び込んだ ....
わたしは箸を置いた
箸はわたしを置いた
わたしと箸は同じ置かれたもの同士
夏休みの端に腰掛けて
初めての話をした
眠たい話をした
存在に挨拶をする
挨拶は水のように沈黙する
や ....
時々、手に負えないところまで来てしまった、と思う。ふしぎと軽い気持ちで、すかすかした、他人を見下ろすような安全な心持で。
室内と、外気の掛け離れた温度がそうさせるのかもしれない。夏の盛り、あるい ....
生まれ変わって、小さくなって、街でかわいい服を少しだけ買って、少しだけ仕事して、たまごボーロ分け合って食べて、少しだけの恋愛があって、少しだけ争いと仲直りがあって、春が来て夏が来て春が来て冬が ....
風が入り込み
這いまわり
出てゆくたび
ひとりになる
夜の地に立つ夜の洞
夜を二重に夜にする音
雨は洞を抜け別の夜へゆき
音だけがこちらに残される
....
どこか見憶えのあるような、
なだらかな空気のなか硝酸系の毒物を蒔く
愉しそうな子供たち、大丈夫もう終わりだから
地下鉄工事の終わらない夏休み
眠れない夜をいくつもいくつも数えた ....
雨上がり、路面電車が
湿りの中で発光したまま
緩やかなカーブを破壊していく
何の変哲もない病室に
復員したばかりの真昼と青空
そこでは誰もが幸せそうに
夕食に出た鰊料理の話をしてい ....
未だ血圧の上がりきらない朝
乳白色の靄がかかった意識の西側から
コーヒーの香りが流れ込んでくる
オールを失くしたボートさながら
廊下をゆうらりと彷徨いながら
食卓のほとりに流れ着く
....
中学時代から付き合ってきた
きみはもういない
焼酎が大好きで酔っぱらうと
「ありがとさん!」を連発していた
きみはもういない
何か相談事があると
真っ先に相談に乗ってもらっていた
きみは ....
インスタント闇屋さん
カップのなかで
泣き虫が笑っている
探し続けなきゃいけないものを
かんたんに手に入れようとしたことは
はっきりと罪だったと思うよ
カードは言う、
失う、だが ....
○「今日」
年を取ると
今日が「何日」というのを
言えなくなる
○「人生の季節」
若いときが
さまざまな人との出会いを通して
人生を豊かにしていく季節なら
老いたときは
さまざま ....
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