コロナ感染者が
人口の99%を越えたとき
巷では
こんな会話が囁かれるに違いない
「ねえねえ、あの人
まだコロナになってないんですって」
「えーっ!嘘でしょう?
今どきそんな人いるの ....
目を閉じて眠りなさい
死なないように
願いを掛ける時は
まつ毛の一本ずつを
短冊にしてみよう
流されて天に届く気がする
美しい寝顔のままなら
毒を飲むこともない世界で
明日が来るのを前 ....
自分というだめなものを持ち上げて
よいしょっと背負えるようになりたい
それができず
自分を引きずっている毎日
自分にがっかりし
がっかりしたくないがため
投げやりになる
日々
....
{引用=或いは小噺『洗顔異譚』}
「顔を洗って出直して来い!」って言われたんで
顔を洗ったら顔がとれちまってね
仕方がないからそのまんま取って返すと
....
木漏れ日の熱源には
黒ずんだ記憶をひとつ落としていく
君のなまえも季節に置き忘れていくから
自転車を漕いで走り続ける
子どものように生きたかったから
立ち止まることは
あたらしい夏の眩しさ ....
清い流れに沿い
{ルビ鶺鴒=せきれい}が閃くように飛んで
揺れるねむの花
ねむの花はやさしい花 と
誰かが云った
小さな手が生み出す
鍵盤の響きはたどたどしくても
その無邪気さで ....
蛾って
匂いを感じるための
大きな二対の
触角があるだけで
口がない
成虫になると
食べ物を食べることはなく
幼虫の間に食べた
栄養だけで生きてゆく
そして
雌のフェロモンを求めて ....
介護がこんなに辛いとは
今までの僕、夢思わなんだ
ボケながらなお
イキってなければ死んでしまう病
死んでほしくないので
さりとて忍耐の限界でもあるので
こうなればペシペシから
....
一面の希望が寝返りを売って
転じて興ざめする
傍らの空の花瓶が床に散らばる
合成繊維の解れた藍色
白目を剥いて割れたグラス
ひたひたに吊る炭酸水面上のハナヒラ
変容を遂げた紋白蝶の死
....
今は昔さ
いっとき一世を風靡したっけ
小説とそれを原作にしたテレビドラマのタイトル
思い出したよ
思い出したけど
世界の中心って何処だったんだよ
そこはきっと地球の中心からはずっと ....
{引用=信じられないことがある
それは一つの、収束}
帰ってきて皿を洗って、シャワーを浴びる。それからごみ捨てをして(妻にはいつもシャワー前にごみ捨てをしろといわれたが、どうにも守れない)、雑 ....
年の取り方が分からない
落ち着き方を知らない
若者を温かい目で見られない
余裕がない
一体どうすれば
往年の笠智衆のように
なれるのだろう
大坂志郎みたいに
振る舞えるのだろう ....
ほんとうは、たたかうほうが好きです
若いことを踏み潰した、地続きの傷
なぞると忘れた横顔に似たきり、
痛みにしがみつくことなく
目を閉じます
白い配りもの、光って、子に散る声 ....
縁側で
ぷっと
西瓜の種飛ばし
放物線の先を
追っている
幼い子供が
独り居て
遠い夏の日
夏の午後
その日を生きる
幼子が
風に吹かれて
風に吹かれて
名無しで ....
痩せっぽっちのロバと
ながらく友達だった僕は
マッチョなイギリスの
粋なボーカリストが好きで
ついにはオペラ座の怪人の
私生活を知ってしまうのだろうか
拘束されない言葉ほど
....
ポプラ通りの真ん中らへん
すべすべの感覚で
まぶたを閉じれば
少年を見つけられる
少年は息を止め
そっと手を伸ばし
とんぼの羽根をゆびさきでつまむ
瞬間を点でとらえたのだ
でも虫か ....
いかがですか
自主出版するなら今ですよ
五百冊がこんな値段と言われましたが
何もしなければ詩人にはなれません
いや、納得できない気持ちは解りますよ
でも、趣味にこれぐらいは出すでしょう
....
学校のノートや教科書の余白に
落書きみたいに書いていた文章
それをいつか誰かに
読んで貰いたいなんて思わなかった
それらは
俺の未熟な心の隙間から落ちこぼれた言葉
だからさ
....
つま先にあたった石ころが
ころころ
ゆるく転がって川に落ちる
何の音もしない
七年前
職場のわたしの歓迎会は
小ぎれいな洋風レストランに皆集まった
こ ....
ようこそ 52億年の誕生を迎える今日という日の門出を祝します。
パスをお待ちのあなた宛にここから先はシアノバクテリアがお供いたします。
緑藻一面晴れ渡る空 海岸線は紫色の塗 ....
無造作に置かれている靴
気に留めることもない
朝の出勤の時
靴ベラを用意
行ってきます
繰り返される日々
奥さんが友人と温泉旅行
次の朝私 ....
冷蔵庫から子供の頭部とおくるみを
毎日切り刻みながら
君だけに盛り上がった
低学年男子の勃起を器に擦りつけて
テーブルに並べる
(コウノトリはキャベツ畑で卵を温めている)、
という事に ....
地下室への階段を降りてゆくと
探していた言葉があった
それは難しい言葉なんかではなくて
なんてことはない言葉だった
くだらないなぞなぞの答えのような
拍子抜けするようなやつ
でも 昔は仲良 ....
私は妻であるようだから
妻の声帯から声を出す
「夕飯はなんにします?」
私の息子があたかも私であるかのように返事をする
彼とは離れて暮らしているのに
「ひさしぶりにトンカツなどがよいです」
....
電灯の力をかりて
風にゆられる
{ルビ向日葵=ひまわり}たちの笑い声
さやかに響く 夏の夕暮れ
たそがれて
いちにちが終わる
いつかは
このくるしみも終わる
すくなくも
わたしが終われば終わるだろう
その時は
世界が終わる のではなく
世界のなかで
わたしが終わる
わ ....
ハッピーかどうかは俺が決めるんだ。この世でたった一人の俺が。
心臓と心があって額紫陽花
大阪王将のある街で、歩兵の僕は何とか懸命に生きている。
「男なら将棋を上手くなれよ」と、そんな父上の言葉を胸に。
音もなく頑丈な扉を開き、入ってきたのは見覚えのあるような皺だらけの中年男性だった。
署長自らが直々に連れて来たので位の高い人物なのだろう。署長は軽く会釈を済ませるとわたしを指さしてすぐに出て行っ ....
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