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耳をとざしたほうがいい
ことばを思わないでいいから
目もひらかず
ただ触れていたい
指で肩で舌で

そのからだの奥を覗きこむような
こまかな息づかい
一度は奪われた草木を甦らせ
半透 ....
 前略


昨日曇のち灰神楽
静かな凧あげ日和

腰のお加減如何

本日未明より流謫
星は晶となり積み

手元不如意につき頼む


 草々
朝のみそ汁から
 かつて棲んだ磯の香りがした

循環する水にうまれるいのちのすき間
 それをすくいそそぎ入れた

湯気が消えてゆく空にうかぶ
 一羽のかもめ



炊きあがった純 ....
あちこちでびん笛がはじまる
うち幾人かは胴をうまく叩いている 薄暮

目は子ども時分からよくない
たくさん撲たれてきたからさ
と、隣のじいさんが笑った

にごった水晶の弛みや
かわるが ....
海硝子が集まる潮溜りがあるんだ
陽射をまといやわらかにおし寄せる汀
ひっくり返ったヨットを数え
貝殻なんかひろっていると
不意に気が遠ざかる

雨になれば走れなくなる白い電車が
通う島に ....
笑っているの?
橋に見えるもののところで
食べているの?
空に見えるもののところで

ぜんぶ君のまぼろしだから
ぜんぶ人のまぼろしだから

強く洗わないで
ふるえる箱から覗く 両眼を ....
 高いところを飛ぶ鳥に近づいて見れば
 見あげる姿と違ったよ

 原始宇宙に漂う 網目のような雨
 試されて 行き来する

 はじまりは 雲にそっくり
 私にもよく似てる 落ちながら
 ....
どの恋人だったか
アヲハタのサイトがかわいいと
ポインタ空に漂わせ
無心にクリックしたあの頃

やり直せないかな
目が覚めて
自分を嫌いになるまでの
ほんのわずかな時間帯を
まき戻せ ....
倒したかったんじゃない 触れたかっただけ
侵したかったんじゃない 去りたかっただけ

避けたかったんじゃない通したかった
透けたかったのでもない助けたかった
思ったと思っても
ことばになる ....
  めざめ



なにか黒っぽい

いくえにも重ねた

すき間だらけのガーゼ的なにかに

ゆっくりと眠りは

溶かされ絡まりながら

そろそろ吐きだされそう

視界の芯 ....
こけ色のシャツを着
こけ風のズボン履き
こけ臭がするジャケツを羽織る朝
私はひろがる ちいさなタマシイ

苔の多様に思いを馳せる
新鮮な舌のようなむらさき
朝つゆにあつまる金
うまれる ....
雲の上で味わうトマトジュースは すっきりとして濃く
何だかいつもと違うみたいで
どちらが本当のわたしなのか 急に難しく感じた
生きているのだろうか
なんて、変なこと考えだして

あなたと向 ....
公園で何本かの吸殻をひろいながら
ここにどんな唇が触れ吐きすてたのか
といったようなことは
あまり考えないようにしている

救えなかったいのちより
救わなかったいのちを大切にしているのも
 ....
あなたに教えられたことが
急に思いだされるのです
ところ構わず
仕事中でも
たとえばモニター越しに

あなたに教えられた
横になる歓びは
いつもの野原をまるで違うものに変えました
あ ....
近所の子どもらが
精霊バッタのあと足を外していた
お腹をこすり
みどりの泡をうっとりと掬う

人と群れるのを嫌がる
犬のくび輪にゆわえた
鈴にころがる心臓
そっちに行ってはいけない 海 ....
罠にかかった小鳥を
まだ暗い空に放した
迷いのない姿にほっと胸をなでおろす
百のけものが
身体の中で溶けて通らなければ
どんな鳥も放せない

太陽が空を焼きはじめるのを
部屋の影から見 ....
 おおきな
 朝日を 笑いながら
 数えきれない鳩が輪になって
 時の繋がりが聴こえてくるような
 羽根を打つほどうつくしい游び

 壁にぶつかるんじゃないか
 そしてそのまま吸いこまれ ....
 ひとつ択ばせてあげる
 そういわれたら

 もし較べたとして
 どちらも美しいのだから
 ひとつは激しく輝き
 ひとつは静かに乾いてゆく
 涙に浮かべた想い

 机にかさね肘をつい ....
目が覚めたら強襲フツカヨイ
周回軌道を弾かれる予感
夜の裡から ハザマまであった
更の加速は無謀的です
だろうが進め
見えるか あれが帰還限界点

戻れなくなるのは
私はレミングだから ....
 ふんわりあかるい 丘をもちあげ
 かげにかくりと 谷をおる
 ひらひら帰りみち

 みどりのうらで こえをきく
 蜘蛛のこわさや あしたの雨の
 ひろがりについて

 夕陽がおちる
 ....
 ゆたかな木
 夏の雲みたいにわきおこる

 しずかに立っているようで
 たくさんの声をもつ

 ゆたかな木
 鳥たちの翼を夜からまもり

 どんな風も受けとめ
 星のひかりに運ば ....
 そろそろこの町を出ていこうと思う

   もうそんな時期なのかい

 うん 吐く息がさ

   そう 秋だからな

 吸う息とだいぶ違ってきたから

   思いのほか早かったな
 ....
 わたしからあかんべ

 あなたからは木の葉

 たからもの 小指ではさみ

 あたたかな秋の 空へかえそう

 うたたねしながら

 ときどき見てる

 からみぐあい

 ....
 きみにあげた 乾いた骨は
 ある深さの空で生まれ
 漂っていたのだと思う 低い声で 細い管で
 貪る世界から すこし離れていたかった
 喉の重みからぬき出した小骨

 きみにあげられない ....
 角の本屋さんの奥で万年筆を売っている
 仕事帰りの女がそっとのぞきこんだ
 くもりひとつない飾り棚は
 そんな町が好きだった

 ゆっくりと溶け始めるアスファルトが
 蟻や落ち葉を運んで ....
 いいにおいがするよ
 ひとがゆくところ

 いいにおいがいっぱいするよな
 かぜにさそわれ
 やさいがやさしくいためられ
 そっとおはしがならんで

 みずまきのてをやすめると
  ....
  十九



 土間のかおりが濃い風の中で
 今もまだ鏡を磨くその人は
 母方の大叔父だった
 茶摘みが好きな
 ハモニカの上手が
 無口な夏の
 終わらぬ波の狭間へ
 時の流 ....
 卒業の記念を持たない人が
 ポケットに
 石を忍ばせているらしいと
 風の噂が耳を掠めた

 石ころの仕込みは人それぞれらしい
 代々受け継がれるモノもあれば
 下駄箱に投げこまれてい ....
 子どもが さけぶ 肺をからにして
 名前を奪われた 動物を確かめ
 さけぶ こめかみをふるわせ
 おなじ靴、おなじ服
 好きになれない 名前 みなひとまとめに
 ぬぎ捨て駆ける

 さ ....
 忘れ物 に なったハンカチ
 あわいもも色 うさぎを飼って
 駅の向こうから来る
 おんなの子を見て
 つれていって
 と、輪をかいた
 石のむれをしずめた 海と
 とおい空 かすれた ....
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