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その年のクリスマスや新年の前後数日間は、Aの家族や親戚たちと過ごした。灰色のコンクリートの家々がならぶ、未舗装の路地の両側に、電熱線を用いたクリスマスのデコレーションが、毎晩点滅した。見捨てられた家屋 ....
涙がこぼれた。午前7時まえだった。レフォルマ通りを過ぎたところにある、緑の木々に囲まれた小さな公園を出て、教会前の、溝に空のペットボトルや食べ物 のかすが投棄された下水管の匂いのする路地を、歩いていた ....
その町に着くとAと俺は新築の高層アパートの7階に部屋を借りて住みはじめた。8月。青い空にはツイストロールの形をした雲がいくつも浮かんでいた。共同生活はうまくいかなかった。食事や音楽の好みの違い、お互い ....
冷戦の冬。一級河川の、草の生えたサイクリングロード。顔のない少年だった僕は、真っ黒な制服を身につける、午後の。淡い光がこぼれる、窓。冬枯れの木立に囲まれる、L字形にゆがんだ路地の、埋め立てられた池のあ ....
日付けようのない、濡れた手紙でも
生きていれば、きちんとした
差し出し方を思い出せるという意味の
薄さ
わたしの指の腹で縁どられた
限りない不透明(のりしろ)
できあいの
夏の日の明 ....
男はマッチを取り出すと、きれいに粉末にした。そのうえでタバコを幾本も取り出し、小さな城を作った。男は衝動を失っていた、ただ衝動になり損ねた液体が際限なく湧き上がってきて、涙腺からあふれて仕方がなかった ....
心明は暗きまま
あけてはくれて繰り返す放埓に
やぶにらみのいばら屈辱の叱咤
(暮れなずむ空に水音蛙の声 ....
{引用=
シロクマのことだけは絶対に考えないでください
}
靡くカーテンからサイレン、ではなく
酔っ払いが歌うブルーハーツ
傘越しのドップラー効果は雨音にとけていく
愛と平和はこの近隣には ....
行倒れの男のように
靴が片方 ぽっかり見上げている
我慢しきれず漏らしてしまう
重苦しい空はぽつりぽつり
悲哀をくすぐりながら
見定めていたはずの世界を沈め
アトランティス
瓶の蓋 ....
焦げたソースの薫る
烏賊の入った焼きそばがうまい、
湯気の立つソースに塗れた太麺には
紅生姜もたっぷりのっていて
そっと隠れて
刻んだキャベツや
玉葱だの
もやしも入ってる
青 ....
沈殿と沈黙の
まだらの模様が
僅かに振動しながら
消えていくまぶたの裏
かすれた声の行き先
天井のすみの薄暗がりに
待ちぼうけ食らった今夜の夢は
濡れ続ける表通りの街灯の ....
水のなかの鐘が鳴る
祈りではなく
怒りのままに
鳴らされつづける
静かすぎる径の
はらわたが響く
光の内の
水泡をほどく小さな指たち
穴の向こうのまぶし ....
ようやく、わたしの冬眠が、始まった。
再び、負け惜しみに身を焼べる、
それは、昔から、望んでいたことで、
木漏れ日を身篭る、晩秋のにおいを抱え、
磁場の上に、星は繁殖する、
....
赤の世界。
掌、日焼けの少ない白い太股は、車の赤ランプを浴びている。黄色い布は暖かそうな、かつ目を閉じたくなるような眩しいオレンジに変わった。だが、青いトランクスだけは毒々しい紫に包まれて、すっかり ....
犬たちが今朝を踏み荒らして
僕は足跡の上の
潰れた学校へと
忙しく歩く
明日は早いから寝なさい、
僕のシーツで発火して
朝になっても残っている、宮崎さんの
差し向けた犬たちが遠吠えし ....
冷たい灌木の素足を芝草が覆う
うぶ毛のようなスギナの森
露に閉じ込められて朝の光が震えていた
「友よ お飲みなさい
こっちは先に頂いています もうすっかり
辺り一面へ溶けだして ほら太陽 ....
菩提樹の下をすぎる風
樹から樹が
葉から葉が生えつづけ
花のように鳥を囲む
火に息を吹きかけて
朝までつづく夜を描く
指と同じ大きさの火
曇の奥の月をひら ....
かわいいという言葉に
すべてを込めて
足の指の間に入った砂
刺さる貝殻の破片
血が出ない程度の痛み
靴からこぼれ落ちてくる
あなたはいつのこと思い出すの
海とかうってつけの題材で ....
さえずりは無制限に落下して
漲る心臓
内側からほどけ展開する
うすべに浮遊都市
生贄のメリーゴーランド
空を蕩かす視線を
火の羽衣に包み
牡丹
ゆるりと爆ぜ
....
消防車のサイレンが街にこだまする真夜中
自発的な夢遊病のゲバラのシャツを着たガキどもが溢れ出て
革命とは程遠い犯行を繰り返す、おお
体制にとって彼らの存在は引っ掻き傷にもならない
....
眠れない夜には
そう
静かな音楽が必要になってしまう
それでも今夜は眠れない
月が満ちて
ゆっくりとしていても
アルテミスの歌が美しくとも
眠れない夜は
どうしても眠れないのだ
....
医師の言葉に呼応して
治療を始めた
余命半年は拭えた
(彼女はどこ?)
3週間×13
ずっと増え続ける数字
たかが数字 だが重い
できる事はする
頑張れ 私の内臓
今では何処 ....
雨が降ってくることもなければ
泉が湧くこともなかった
川は面に表情を走らせて
風を受けながら凡庸な経路を流れていくだけだ
山の中の細い渓流から始まり
川底の石や魚と戯れ
やがて里に下りて農 ....
をほわか。わた、さばなや
しかなれれとれ
きしよな、たまなまらやま
めだわかあたひぅしらだめん
かひらじぎごぞばれんだべんがぎ
まぱかい、まさおけこ、つ。ら。
ざばぺぶだはたにいき
....
家のまわりをうろついてるあの音
ざりっざりっと砂利を踏むあの音
あの音
二本の白い木のような足
指は全部ある
裸足で少し汗をかいてる
五月の夜
家のまわりをうろついてる
あの音
....
ぼく雅羅櫛
きみ観瑠奇異上意
異星人が過半を占める地球で
どうやら宇宙は愛の摂理で
成り立ってはいないようだ
老後の資金なんてもう要らないし
どうせ星になるんだからなあ
....
炎が眠っている
その熱と光を休めながら
かつて燃えたことを証明する
灰が柔らかな布団になって
炎は夢を見ている
かつて照らし出した
闇の中に浮き立つ人の顔が
ばらばらになって融合 ....
柔らかな
背中の地図を這う指先に
明日を占い
地獄を垣間見て
白蛇のような舌先で
あなたを舐めつくす
不思議なその眼差しに
見入られて
心が波立つようです
巡りあったのはレタスの ....
海になりたい
あなたの上に
覆いかぶさり
あなたの上で
おんおん
泣くんだ
あふれんばかりの
わがままで
あなたを
根こそぎ奪うんだ
行かないでって
言えばよかっ ....
風の強い春の日の中を走る
この二両編成のさびしい列車は
さながら私の部屋のような
根付いた親しみで満ちている
シートに座れば座布団のようで
人が乗れば来客が来たかのよう
そう思える寛いだ春 ....
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