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水たまりから鳥が去っても
底の底に鳥は残る
生きものの口が触れた水
濃に淡に無のように
まるい骨をめぐる砂
炎は鎖
朽ちた舟の碑
子供のかたちに飛ぶ鬼火
....
さびれた館の馬像の陰から
子供が数人こちらを見ている
塀は陽に照らされ指にやわらかく
その上で子供のひとりが
虫喰いの木洩れ陽を目にあてて笑う
水たまり ....
光の点の物語
夜の喪に立つ蒼い{ルビ蝋柱=ろうちゅう}
けものの笑みが途切れ途切れる
風が廃駅を削いでいく
茶のひろがりの終わるところに
金にかがやく草で編まれた
....
川の向こうにひろがる夜
水の社から来る音と
黒と青と金とが重なり
やわらかな生きものの胸を染める
暗く豊かな雨に導かれて
山は次々と雲のものになってゆく
....
れんげ ききょう おみなえし
ひとつかみ
ひとつかみ
藍の脂の寝るところ
黒から下は夢も見ない
誰かがつけた月の名を
つぶやく濡れた毛の動き
想うものが何も無いから ....
空のふたつの渦が近づき
あらゆる姿を借りてまたたく
濡れる珠と草の闇
腕の無い鬼の舞
風は幾度もかりそめを撲つ
生きもののものではない傷のように
雨水の血に照らされ
....
腕を
上げ下げする時モーター音が少しうるさいでしょう
ごめんなさい
今日はどんな一日でしたか?
駅でまたお腹が痛くなったんですか
大丈夫ですか
私ですか
私は駅のホームか ....
水の上 空の上の透明な切り口
目覚めたけだものを貫く緑
流れに裂かれ
岩から離れた水草
魂のはじまり
朱を知る虫も空に少なく
毒蛇の地も細かく分けられて ....
喧嘩でへこんだ時
涙こぼれそうな時
何気なくそばに来て
寝そべっていてくれたね
柔らかい毛の下の
温かいぬくもりは
言葉超えて僕を
励ましてくれた
誕生したのは
僕が先だった ....
雪にわずかに沈む枯れ穂が
足跡のように原へとつづく
雨あがりの緑が壁をのぼり
水たまりの灰に軌跡を零す
空は青く
地の霧は蒼く
かかげられた腕の輪は
ふたつの色に ....
愛情なんて贅沢だ
と書かれた紙切れが一枚
くしゃっと
捨てられて
愛情が贅沢だから
愛情と書かれた紙切れも
きっと贅沢なのであって
そして
その贅沢な紙切れをくしゃっと捨てる行為も ....
昨日 切り捨てられた廃線の
駅 構内には
まだ暖かな気が
そこら中に点々と赤味を帯びて
揺れ立っているというのに
朝に 幕
夜には 鉛の月影が
ゆっくりと光りを奪っていくのだと
....
揺らせ リフレイン
ひらめき はばたき
とるにたらない光のかたち
それらが作る午後の羽たち
行き来する行き来する 夜へ向かう道
リフレイン
揺らせ リフレイン
埋 ....
ひとつだけ思いがぶり返す
すべては 沈みたいがために
あの人はいつも 優しくている
それが痛々しいとは 知りたくないようだ
置いたままにしたスミノフの瓶が
ひとりでに倒れるのを
....
(hana)
\\\\
なでつけるような冷たさや
レミンカイネンの背を越えて
光は荒れ地を駆け抜けてゆく
渇き くずれたものたちの手に
透明をひとつずつ置いてゆく
森の音が
別の森へ届き
....
銀色の髪
明るい瞳は緑
ささやく指先は桃色
つま先はあるの?
ライラ
君はしかめっ面で花という花をみんな摘んでしまい
眩しい朝が広がるに任せる
深い深い森で
夜 ....
大きな街のお空には
本当の空は無いと言うのに
太陽が高く射す昼休み
呼吸をふーーと吐き出して
皆が窓を開けた
深呼吸する時間 一斉に
大きな街のお空には
化学記号が飛んでい ....
ぐはぐははひとじゃなかった
でもはぐはぐしちゃった
だってあったかいもん
ぐはぐはは「ぐはっぐはっ」よろこんでた
ぐはぐはいうからぐはぐはなんだよ
それってわかりやすい
....
森(木の子供と木の母親と木の娘 なびく 髪)
の(飲んだくれ くれ 酒もっと くれ 果物のなる木がいい)
く(鯨って見たこともない 触ったことも 綺麗 ....
黒に近い深緑から
白のうたが聞こえていた
たくさんのものを失って
望まぬちからを得た最初の日
こんもりとした光のかたまり
まるく息づく色はほどけて
指を撫で
指と指 ....
怨みなさい。
怨んで、
お仕舞いなさい。
構いません。
そうして、
すべて。
お終いになさい。
みすぼらしい着物を着た子が
{ルビ弦=つる}のない弓を持ち
灰と緑の風を見ている
夜の池に浮かんでは消える
銀と金のかたちを見ている
かがやく葉を持ち
誰かが森を歩いて ....
あらゆる景色が海へと落ちてゆく
夜の震えがいつまでも消えず
線路を青くかがやかせている
ひとつの雲が原を過ぎ
光は濡れたくぼみに落ちて
飛び交うように激しく速く
滴の空 ....
キスなんて忘れたから
接吻でいい
デートなんて忘れたから
逢引でいい
結婚なんてしたことはないから
土にでも埋めてしまおう
恋人なんて久しくいないから
変人とよく書き間違う
....
氷の轍を駆ける鳥
ふいに枯葉のなかから飛び立つもの
朝の終わりを告げてゆく
遠く幻のように
冬の林がつづいている
常に空の色より暗く
風のなかに立っている
....
真夜中の雲が青白く立つ
月へ向かう手
空に融ける円柱
なにもない場所に
あらゆる場所に
立っている
木と地をつなぐ蝶
群れ集う黄色
ひとつの巨大な背の ....
鏡のなかにうつる空の
少しだけ昏い蒼のほうへ
けだもの 実り 尾を引くむらさき
流れるように傾いていく
音のない列車のなかで
外から来る音を聴いている
光が近づく
....
明るすぎる夜に笑われ
飛び立つことのできない鳥
低く地平に交わる{ルビ雷=いかづち}
遠くも近くも消し去りながら
鳥の横顔を照らしている
かがやく雲はさらにか ....
月の滴り糧にして、
傾くが儘に流れ征く。
果ての浄夜は音も亡く、
地を這う我影、
唯ひとつ。
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