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悲しい歌がひとつ終わり
静けさが喜びのようにやってきて
ふたたびはじまる悲しさに微笑む
雨の花に空は映り
空には雨の地が泳ぐ
水の歌が降り
歌の水が降り
鳥 ....
私はポツンだ
宇宙のポツンだ
名も無く朽ち果てていく
歴史のポツンだ
それでも大地に立ち
呼吸をし
飯を喰らい
排泄し続ける
この私という存在
どうしたんだろ?
やる気が出ない
意味なく悲しい
子供の頃
理由なんかなくても
元気になった
夕方の公園でブランコこいで
エノキの樹が
遠ざかったり近づいたり
大きくなっ ....
寄りかかれる温かいものが現れると
みんな幸せになるらしいのに
不安が増殖していく
欲しい言葉がもらえると
みんな嬉しくてドキドキするらしいのに
寂しくて堪らなくなる
....
散る空があり 重なって
地にひとつの花を描いた
子供がたくさんの光を飛び越えていった
声の飛沫はらせんに昇り
かがやきとかがやきとかがやきの差異が
手をつなぎ かすかな羽 ....
花を負う花が雀になり
鴉にやさしくついばまれている
音は聞かれる間もなく火となって
水だけを求めて落ちてゆく
別の音が別の音を得て空に生まれ
二羽の鳥の背の上から
川に沈 ....
わたしはよく
一度にたくさんのことをやりすぎるので
なんもかんも中途はんぱになってしまいます
なにせ不器用なものですから
今日も
はみがきをしながら
テレビをみて
ラジオをきき
時報を ....
分かれた空がさらに分かれ
水のなかの葉をすぎてゆく
音は動き 季節は動く
ほどけては鳴る遠い金
映るすべてに傾く空を
青はころがり
かがやいてゆく
陽は落ち ....
白 灰 午後 虹
放られたままに響く冬
窓に映る野を馳せる
手のなかの声 粒の声
まわる色 重なる色
水に濡れた小さな神話の
終わりとはじまり
陽から降りつづ ....
カタコンブ片
地下墓地の奥に見つかった
女体がひとつ
乾き切ったほむらの形相で
蕩けた口の大きさで
己の生死を問うている
造物主に
世紀を越える時
女もこどもも兵士も一様 ....
おふろに一緒にはいってくれるきみへ
にくにくしいねといったときに
なぐらないでくれないか
わたしはこんなにほねほねしいのに
といったときに
胸のふくらみをつつくのをやめてくれないか
と ....
水に浮かんだ子のまわりに
鳥のように大きな若葉が
一枚 一枚と落ちてくる
子は枝を噛む風を見つめる
見ぬふりをする空を見つめる
黒い衣 黒い犬
黒い土の上に ....
一回でいいから
ビー玉をとかしてみたい
るりいろの
そらいろの
あのビー玉
やら
このビー玉
なんかを
そしたらきっと
きれいなかたまりができるよ
あのひとの
涙のレプリカにでも ....
わたしはいつも
あの枝のよこをとおるよ
山下さんちとみどりちゃんちの間の
何さんちかわからないおうちの枝
ほんとうはとおりたくないけど
通学路だからしょうがないや
近道してタマの前をと ....
がんじがらめのぼくは
今日もきみに会いにゆけない
なんてったってがんじがらめだからね
ゆけるはずがないのさ
最初はかなしばりかとも思ったんだけどね
ちがったみたい
かなしばりってどんなもの ....
朝もやのなかで
あなたの顔をみています
あなたが入れてくださった
オレンジペコーのお茶をのみながら
庭の
ねこやなぎをみているふりをして
横目で
あなたの顔をみています
雪が
ふって ....
き ん い ろ の 睫 を濡らす 天使のうたう歌は
い ろ に はあらわすことができない
ち い さ な 器から漏れる 闇も光も
溢れて溢れるまま か ら っ ぽ になるまで
....
真っ白な画用紙の
その真ん中に
僕は
しま
と書いた
画用紙の海で遭難した船乗りが
泳ぎ疲れないように
ある日、画用紙の海で遭難した僕は
後悔することになる
....
ひとりひとりの背に棲むものが
夜更けに互いを呼びあっている
見えないものの通り道に立ち
腕をひろげ 聴いている
夜の光の下 揺るぎないもの
幾つもの影のなか
ひとりきりのもの
....
病院でリハビリの担当医がもっと歩かないと駄目だという
せめて一日四〇分は連続して歩けという
テストの結果あなたは潜在体力に比べ現実体力が劣るから
このままでいくとあと十年で歩けなくなりますよ
....
感じない掌の上に
鳴かない鳥が
人のように瞼を閉じる
冷たい雨の降る
コンクリートの上で
静かに眠りにつく
戯れるように
温度を残して ....
いらっしゃい
なんにしましょ
あいびきにく
ください
あのひとと
あいびきしたいので
あいびきにくで
あいびきハンバーグを
つくるゆえ
おともだちに
ばかにされても
....
つんつるてんのお着物を
どうか着せてくださいな
やまいもなんかすってないで
どうか着せてくださいな
ゆめはもうきえたけど
あなたはまだいらっしゃるので
つんつるてんのお着物を
どうか ....
小さいうさぎ小屋には
にんじんのはし
と
きゃべつのしん
と
まるごとのりんごが
あったよ
まるごとのりんごはよくうれて
とてもおいしそうだったよ
まるごとのりんごには
つめたい ....
涙ひとつぶん
あなたに
私の叫びは届かない
いつもの私でないと
気づいていながら
あなたは
何があったかさえ
涙ひとつぶん
わからない
雨が降ってばかりの午後の終わりになって
雨が止んでばかりであること、感づいた
数億粒の喪失、愕然として足を止めた
ずぶ濡れのアスファルト踏みしめるゴムタイヤ
が群れ行き
音 ....
震える指先が凍りついて
いつか口に含んでも動かなくなったとき
幾度も自分を納得させる言葉を吐いた
私は人より多少不自由なだけ
壊れた右耳は機械の力で補える
動かない指先は動く片手で補える ....
あんちゃん大学出の新人か
ゆくゆくは幹部やな
まあ研修期間は「ご安全に」やな
あ〜
かっこ悪う
そんなピチっとした作業服にするさかい
ちょっと踏ん張っただけでケツが破れてまうねん
ま ....
軋みを撒いては走り去る鉄
遠い悲鳴のように過ぎてゆく
またひとつ助けられない小さなものが
手の甲に重なり 増えてゆく
開こうともせずに開く瞳が
そばにたたずむふた ....
古本屋の女主人は
若くて
美しくて
両の目の間が人より少し離れている
本をめくりながら
チラリとその方を見たりすると
何故自分が生きているのか
時々わからなくなる
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