すべてのおすすめ
火と火の違いもわからぬうちに
わたしたち とは語らぬように
言葉への畏れを絶やさぬように
入口にある目は
実の奥にある目
森をひとつ逆さまに呑む
水を見たら ....
左手をうしろにまわし
羽をこぼし
幸せをのがし
灯りを点ける
命のない明るさが
粉のように甲に降る
長い長い長い夢の
つづきをどこかへ置き忘れている
鉄の隙間に生え ....
酒のつまみに
キュウリを切る
塩で喰う
少しこしょうも振る
まな板からキュウリが
ひとかけら床に落ちる
キッチンマットの上で
転がったキュウリを
そっと拾い上げる
これをゴミ ....
けれども胸は 青く傾斜してゆく 怯える意識には
透明なふりをする思惟が 蔓草のようにからみつく
窓の外では 涙のように 果実の落下がとめどなく
そのさらに遠く 地平の丘の上では 二つの白い塔が
....
葉桜のむこうの
三つの波
つながれていたものは放たれて
水辺をめぐり 戻り来る
青に灰に
くりかえす
ひび割れ倒れる間際の硝子に
まだ名のないものが映っては
光 ....
シロツメグサで
首飾りと花束をつくり
ぼくたちは結婚した
わたしの秘密を
あなたにだけ教えてあげる
と花嫁は言った
唇よりも軟らかい
小さく閉じられた秘密があった
シロツメグサ ....
原のなかで
オジロワシと見つめあった
彼は言った
遠くから雨が近づいてくるとき
オジロワシを思い出す
彼が何を言ったのか
あるいは
何も言わな ....
時は飛び 分は飛び
秒はわずか手のひらにある
両肩と指を結ぶ三角
降るものたちを受けとめきれない
かがやきにあふれこぼれるかたち
響き少なに揺れる影
オンドマルトノ ....
似かよった街の
似かよった道の行きつくところに
友人の建てた家があるという
何年も何年も借りたままの
いろんなものを返しにゆく
川辺にはワニがいてこちらを見る
....
海の下に玉子焼きがあり
みんな食べたがっていたが
ペンギンが持ち帰って布団にした
関係ないから
道を曲がるたび
違う名前で呼ばれたが
みな背広と笑顔しか見ていなかっ ....
目が覚めて 部屋を出ると
廊下に父が薄目で横になっていて
足音で起こしたことを詫びると
笑いながら母のそばをすぎ
洗面所で顔を洗いはじめた
母が
何を見てるの と言うので
....
実と土のあいだ
鳥は落ち 飛び去り
叫びと無言 緑と足跡
人であることのさまよいに満ち
はじめて みなもと
そのまま たましい
そこにはぽつりと
ひとつだけがある ....
さすらいの
すべてがやさしく
しみるとき
風の
しるべの
まぶしさが、近い
背中や肩を
通うながれは
さらわれまい、とした
ひとつの道すじ
だれかの瞳に
年月に
....
世の中には支えるひとと
支えられるひとがいる
支えるひとは暗い海に胸元まで浸かり
力の限り支え続け
次々と押し寄せる荒波に揉まれては
やがて力尽き海の藻屑と消える
支え続ければ ....
窓には
ひとつの三日月
ひとりの子と話す
風の音
油の虹
武器はなく
ひとつの羽を得て
ひかりかがやくもの
ひかり失うそのとき
居ること 居ないことを
震わ ....
雨の日にはかなしみに服を着せ、傘を持たせて出歩かせる。普段は裸のかなしみは、はじめ服を着るのを嫌がるけれど、すぐに慣れてはしゃぎだすのが、いつものこと、ぴったりした服 ....
糸の光が
階段をのぼりきり
壁にもたれて息をしている
痛まない傷が増えてゆく
気づかないまま
熱が流れ落ちてゆく
水に立つ片足
からだをすぎる火の粉の
ひとつひ ....
靴に足を入れて爪先をとんとん。
空からの階段を何かが駆け下りてくる。
ガラス瓶の中の住所から
尋ね当てた先のドアをとんとん。
無口な透明人間たちの声なき訪ない。
詩や言葉が何かの中に見つからなくても
必死にならない 心配しない
外で見かけたらただひしっと抱きしめて
それからまたすぐ手放して
次からはそのことの話し手になれる
そこにあなたは
いるいない
いるいない
どちらにもまばゆい
花があり
なぞる
花になれない
指のしずく
そしてあなたは
いないままにいる
いないあなたい ....
蓋を開けたオルゴヲルの回転軸につかまって
羽の付いたお人形の足が
ルラルラ踊る
君に会いたくて
君に 会いたくてね
手を離して
一緒に飛んでしまいたい
箱の内側には白 ....
波線の午後を
すりぬける腕
指の大きさ
夜のまぶしさ
花に埋もれ 花となり
花を生み 花を摘み
深く鏡を被る人
無数の火の穂の歩みの先へ
冬の浪の浪の浪へ
着 ....
灰は盲いて仄になり
灰より熱い火のなかにいる
背から腕へ溶ける羽
夜の漕ぎ手の手首に宿る
星の奥から風が来る
目のかたちの痛みに降る
十月十日後のめまいのために
....
一歩ごとに浮き沈み
左目は左足を追ってはもどり
原の左半分を見る
下だけが明るい道
上だけを聴き歩む
鳥が落ちては消えつづける道
これがのぞみ これだけがの ....
長い間待ち望んでいた瞬間が訪れる
受付の看護士さんに案内され
病院らしい匂いのする待合室の長椅子に
わたしはひとりで腰掛けていた
手術自体はあっと言う間ですから
こころにメスを入れる ....
脚を焼く火が
胸にとどく前に消え
ふたたび冠のかたちに現われ
両肩を抱き燃えつづけている
まばらな陽のなか
あなたは身を反らし
地と空のきわ
水と空のきわを
飛 ....
東京のさかなは
全然ダメです
死後
七日目ですかって
そんなことを思ってしまう
電車から眺めると
無数の家だ
孤独
の意味を私は思う
ヘッド・フォンで武装して
右側をガ ....
春のおとずれは
やわらかい
ことばの身軽さと
陽気がとても
近くなる
鳥たちの鳴く声と
色とりどりに
咲く花と
寒さをかき消してゆく
波のかさなり
しろい音 ....
にせものの葡萄のにおいがする
光のすきまを
さらに小さな光がとおる
貨物列車 埃の花
すぎる震え すぎる震え
高く遠く
直ぐに昇る鳥
真昼の星
青を青に打ちつけ ....
ボトルの内側に貼り付いた
水滴がつるりと滑り 落ちる
そんなあっという間にも僕たちは
死にあい 生まれあっている
細い点の中にある、線を描く息の中にある
骨が飛び出そうなくらいの
....
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