すべてのおすすめ
道端で
ガードレールを呑み込んで
冬の蛇が死んでいた
白く 汚く
冷たく 硬く
すべてに背中を向けていた
ひとりの少女が泣きながら
蛇の頭を撫でていた
私は言っ ....
荒地に倒れた鉄塔に
花と葉と鱗に覆われた子が棲んでいた
やまない雨のなか
たったひとりで
ひとりの赤子を生んだあと
風の向こうへと去っていった
雨が近い午後の下
....
暗がりのなか
細い光に照らされて
一匹の蛇が泣いていた
目を閉じたまま
わずかに汚れた白色に
かがやきながら泣いていた
蛇から少し離れた場所に
ひとりの少女 ....
ワイパーを身体につけたんだよ
ネジでさ、おへその穴に固定してね
勤続十五周年だもの
いろいろな人が去っていったもの
自分へのせめてものご褒美だもの
憧れていたんだ、ワイパーのある ....
狼なのか羊なのかわからない
未分化のけだものの死体から
焦げた巨大な羽が伸び
夜の風にたなびいている
夜より暗くたなびいている
道端で死んでいた男の手から
俺は世界を得 ....
思いがけず、出逢った頃
わたしたちはいっぱいしゃべったね
お互いの知りたい部分を埋めたね
時間が足りないと思ったの
自分が何故生まれてきたか分かったから
これからもよ ....
雲の日
風が強い日
ひろく浅い水たまりに
壊れた傘が幾つも沈み
鳥の化石のようにはばたく
こころもち静かに
午後をあおいで
ざわめく胸をひらく
遠い雲の ....
海へつづく水と葉の道
混じりものの多い風が吹いている
同じ速さで歩む人々
木々に隠れては現れる
曇と海の間に震える
雨の光が作る階段
朽ちた窓から見える原
住 ....
いくつもの傷
いくつもの雲
風をのぼり
空の終わりで出会い
いくつもの海を越えてゆく
光は雨に溶けてゆく
過ぎた日の光も
明くる日の光も
溶けあいながら分かれはば ....
林のなかのどこからか降る
ぼやけた影の重なりが
手首にふたつ震えている
青と緑の輪はまわる
音は少女の手にむずがゆく
降りつづける影をゆらす
鱗の血が
花の血が
笑 ....
火を固めて作った花びら
一つ一つ
悪びれずに
真っ赤に燃えていればいいはず
蝶も蜂も
独り占めに
褪せていく定めのものたち
それはそれ
季節がお前を嫌 ....
寒気団の
肺の
永続的な空咳が聞こえる
どこに辿り着けば的中と呼ばれるのかを知らぬまま発射され
自ら目隠しをしたまま直走るガードレールのスピードが
白い
苦しげな吐き方しか ....
降りてくる空
降りてくる影
枝に重なる
灰色の横顔
すぎる鳥が
すぎる冬が
小さな建物を見つめている
家と家の間の景色が
まるくふくらみ はみ出している
赤 ....
鳥は去り
木が生まれる
切られては元にもどる雲
光の枝
朝の頬
つつむ手のひら
空は青い傷のもの
雨の暗号の向こうへと
ひとつのかたちが飛び去ってゆく
....
船の重さに泣く海から
浪のかたちの水柱
けもののように吠えのぼる
冷えては骨に染まる鳥
心なき王国をかいま見る
低い月の光にまみれて
甘いにおいを
鏡の道 ....
月の輪
くま。
桜と欅の厚みに
何か光っているものがあったので
こじあけようと
数日が過ぎた
その桜は
うどんこ病
君が積木など買ってくるものだから
僕らは積木遊びをするしかなかった
家をつくって
壊し
城をつくって
壊し
他につくるものなど知らない僕らは
やがて一つ一つを並べ
街をつくり始 ....
空の塊からかけらが降り
たぐり寄せる手管の風も降る
目に痛い青
耳に痛い青
一瞬の
張りつめた声
塊の背に立つ
塊の青
幕間を告げる声は降り
凍った公園に撥ねかえる ....
圧縮繊維 の雲
を 引っ掻こうとするも果たせぬ細枝 細り
凝り固まったアスファルトから続く
彫刻的な彫刻的な陰影まみれ の樹皮には
纏足をほどく糸口が ありません
何か ....
雨上がりが
夕暮れに間に合ってしまい
その為に見てしまうもの、を
見ていました
結局は
全て冷えゆくというのに
明るみに出てしまったショベルカー、の関節
轟き続ける工場からた ....
まばゆさの
明かり障子 前にして
あらゆる形状の輪郭は
努めて 溶け
まばゆさの内にあり 薄く 美しい水墨のようで
それでいて
あらゆる形状は 悲しかった
思わせ振り ....
起きたら
三島由紀夫だった
下唇を噛んだら血が出て
三島由紀夫の血はこんな味なのか とか
白くて小さめの歯は けっこう硬いのだ とか
会ったことないのに懐かしむ
せっかくだから ....
ひとり ひらく 夕暮れの手のひら
灰色の高みの
氷のような雲から
午後を
午後を と
つぶやくもの
ゆくえ知れぬその手に
裂けた花をのせれば
はじまりはよみが ....
まなじりにひらく羽
空の水をとおる
半透明の光を見つめる
はばたきのなか まばたきのなか
ひとえ ふたえ
瞳は空と話しはじめる
白い終わりの木々に囲まれ
道の無い ....
天気雨が終わり
朝が降る
花の頭の魚が
光の首の鳥が
幾つもの頭の獣が
何匹も空へ昇ってゆく
海のなかのふたつの木
冬の終わりとはじまりのように
降りそそぐ朝のなか ....
足のないネクタイは
人の首にぶらさがって移動する
それも不便だろう
足をつけてあげると
嬉しそうに部屋をかけまわり始めた
帰ってきたら
スキップの仕方を教えてやらねば
今日も足のつい ....
土と風の間を
蝋燭の火が流れてゆく
緑の夕方を
横たわるひとりの子の上を
枝の影は伸び
透きとおり 重なり
森のなかの道を指さす
雲が雲を吸い
空を明るくに ....
疲れたら 死ねばいい
そんなカッコイイこと ドラマは連載した
みせつけの ときめきを だきしめて
無言電話にこたえよう
見えない世界には みえすぎた者がいる
あぁ ....
砂漠へ行きます
では
私の写真ではなく
水を持っていってください水を
これからは いえ昔から
これからも
私たちは ひとりです
むこうは暑いそうなので
手に汗をかいて
指輪を ....
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