夜は海
街も時間も
何もかも飲み込んでしまう
私の体も海の底
静かに息をしている
夜空の星たちは海に沈んだ金貨
海賊たちに盗まれぬよう
あんなに高いところにある
ああ もうすぐ夜明けだ ....
優しさにぶらさがる
重なる星の巡り合わせに
ふたりだけの夜
ドブ板通りの古びたカウンターで
わたしをみつめる
瞳と
Never mind
歯並びの良い口元が闇に浮ぶ
迷路のような船底で ....
時には泥沼を
時には光の中を
かけまわって はいずって 泣きじゃくって
つらいのに 幸せで
二度とは戻れない道を 進んでるんだ、って
ねぇ あたしは とうの昔から知 ....
郵便受けに
さくらの花びら
淡い水色の
小さな便箋
ゆううつの波に飲まれそうな朝のこと
春はまだ見えない
思えば今年の冬はいつもより少し長い
便箋の封を切ると
中からか ....
すきなひとに
「すき」といえる
しあわせ
かみしめたい
温もりを感じたくて手を伸ばす
あなたは私の手を握り返し
日溜りの様に笑う
優しさは
あなたの手から私の手へ
じんわりと伝わってくる
私もあなたに笑みを返す
嬉しさは
私の手からあな ....
制服が変わるとともに
七変化じゃないけど
みんなどんどん変わっていく
めぐちゃんは髪の毛を茶色にそめた
えりちゃんは化粧を始めた
みきちゃんはスカートを短くした
りなちゃんはピアスを開 ....
序章
薄くけむる霧のほさきが、揺れている。
墨を散らかしながら、配列されて褐色の顔をした、
巨木の群を潜ると、
わたしは、使い古された貨幣のような森が、度々、空に向か ....
たった一言の失言のせいで
創りあげたい美しい国の
議会はまた空転を続けている
かつての集団就職の金の卵たちが
機械化の波に押され
三高神話に駆逐され
猫もしゃくしも
大学と言 ....
血、が、
腹の上にこぼれてとどまる
暗い おまえの血 月がこぼした おまえの血
おまえは笑っている
自分からこぼれ出た色の美しさに
おまえは目を見張る
血、は、
....
心があるから人間
それを無くすと人形
ならば私は人形
心なんてとっくに無くしちゃったから
もう 戻れないの
それでいる事は楽だもの
人形は悲しまない
人形は傷つかない
....
こめかみが震える
ボタンを掛け間違えただけで
凍傷になった右腕を
いらなくなった左手でどかす
タバコの煙が
消えるのにじれだすと
地上では急に雨が降りはじめる
おれは終電 ....
朝日の射す部屋に久々にお花を飾りました
真っ白な陶器の花瓶にたおやかな薄桃色と深紅
そっけない床にコトリと置くと
たちまち同化し花々は床に咲き乱れます
私は伝うものが涙だと
....
一つ一つの過去というピースは
あなたのジグソーパズルに
必要なかったのかもしれない
でも 少しでも穴が開いていたら
それはあなたではなかった
たとえそのピースの色が
....
鼻毛出てるよと言われた。
まあいずれにしろ出ていたので善しとした。
体調の悪そうな亀みたいと言われた。
まあいずれにしろ亀は好きなので善しとした。
あなたっていつも煙草吸ってるねと言わ ....
部屋が静か過ぎるから、テレビをつけてみる。
テレビの中では賑やかな笑い声がする。
だけど、この静かな部屋を埋めるだけの力はその笑い声には無い。
虚しくなってテレビを消す。
まるで自分だ ....
静かに寝息を立てる横で
青白いその横顔を見つめて
ため息をつく
どこに向かっているのかわからない
どこに行こうとも教えてやれない
不甲斐ないさ
俺は何もできやしない
....
金色に輝く 美しい翼をもつ貴方
銀色に輝いている 君の瞳は何も見えないの?
自分の美しい姿さえも 見えない君は何を信じ生きてる?
僕の翼 汚れて真っ黒だ
でも君にはこの僕の ....
悲しみを
心にしまいきれない時
人は涙を流す
いくら心が広くても
人は必ず涙を流す
喜びを
心にしまいきれない時
人は笑をこぼす
いくら心が狭くとも
人は必ず笑をこぼす
人 ....
煙草をくゆらせていた後姿
今朝ふと思い出して微笑む
何を信じればいいかわからず
言葉に傷つき自信をなくしていたの
私の笑顔を慈しむように見つめて
決まって後ろから抱きしめる貴方は
どう ....
夜の闇が密度を増す
互いの肌をなぞる
互いの指先
その軌跡が熱を帯びる
もがくように掴む
互いの肌
まるで2匹の
溺れる魚
ゆっくりと沈んでゆこう
甘 ....
森を歩く
一人きりで
冬の森を
霧雨の中を
凍える手は
いばらをつかみ
血が流れる
痛みを胸に
胸の痛みは
置いてきたもの
馬鹿から始まり
今は世界
....
四畳半の狭い部屋も
一人で暮らすには問題ない
仕事が終わり家へ帰っては
テレビを見て寝るだけの毎日
最近は料理する気も失せて
夕飯はカップラーメンで済ませている
買いたい物も特に無いか ....
わたしは死んだ
あんたはさぞかし喜んでいるやろう
あんたは周りにいっぱい女の人こさえて
家にも帰って来うへんで
月に一回お金だけ落としていって
なんかの義務みたいにわたしを抱いて ....
首の長いキリンがポチに呟く
最近空を見上げる
涙を流さないための苦肉の策
坂本九を意識したわけじゃないけど
涙がこぼれたら
下を向いたら
話せなくなる
誰とも
もう
見る ....
ひとひら手のひらに舞い落ちる雪
触れたら溶けて消えるはかない命
かたくなな君の心を溶かすために
僕は幾夜も眠れぬ夜を過ごした
その冷たいまなざしはまるで雪姫
誰も愛することはない
....
ぼくはぬいぐるみ
くまだよ
白いよ
いつも笑顔だよ
この家にきてから
二十四年
ぼくをこの家につれてきた
おじいさんはもういない
おととし星になっちゃった
この家にきてから
....
彼は 物書きだった
彼は古いランプを持っていて
ほかには何も持っていなかった
紙も
ペンも
なにも持ってはいなかったのだけど
彼は物書きだった
パリからオルレ ....
なんでだろ
君が笑ってるだけでさ
もう すごく ねぇ
幸せなんだ
すごく
幸せ
なんでだろ
君がいつもくれるのは
こんなにも あったかくて
かがやいて ....
胎児が 私の心臓を 小さな小さな手で 優しく撫でている
わたくしと 胎児の 太陽ふたつ。
わたくしと胎児の小さな宇宙で
天上で音楽が鳴り響いている、
太陽の鼓動、
つ ....
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