金色の野に魅せられた夕刻の空
どこかで産声をあげ
どこかで、
永い眠りへと就いた
心の奥底は昔
表面は今
曖昧な生の狭間で
何を見、
何を聞き、
何を残す
手元 ....
それは
ぼくの唯一の甘えだったのです。
ぬるい優しさにつかるうちに
優しさってものを見失い
ちゅうとはんぱな愛情に
ホントウの愛を迷子にしました。
手にしていた ....
まだ夜の明けないころ
街は少し壊れた
機械の匂いがする
昨夜からの断続的に降る雨が
いたるところ電柱にも
あたっている
いくつかの窓の中には
ささやかな抵抗と
使い古された ....
働くってことは
否応無く押し付けられた役柄を演じること
食品会社に勤めれば
賞味期限の記されたシールを貼りかえる日々
罪の意識など三日で消えてしまう
コールセンターに勤めれば
クレ ....
1枚めには
あなたに会える喜びを
風に吹かれて待っている
2枚めには
悲しみが潜んでいる
私のことを忘れないでいて
3枚めには
胸いっぱいの愛を
あなただけにあげるの
そ ....
空がこんなにも 開けて
甘い曇天が ひっそりと退くと
天空から秋の雲が垣間見え
私は視線もろとも 空へ 飛び込んでいる
空中を滑空する 夢
この秋空のなみなみとした 胸
陽光の ....
落ちてゆきましょう
僕はもう自由になるのです
靴を脱ぎ捨てて
そう裸足で
底のない暗闇へ
光の雫を弾きながら
垂直に垂直に
風はいつだって僕の敵だった
髪を服を乱していたずらに
....
さあ 耳を澄まして 心を静めて
金木犀の香りにだまされないで
こちらをじっと見つめて
あなたの手のひらにのっている
この罪は何の罪?
そう 口を噤んで 囀り止めて
秋桜の可憐さにま ....
友達が死んだ
まともな恋愛もしないまま
友達が死んだ
親孝行もしないまま
友達が死んだ
ペットの世話も途中で
友達が死んだ
食べかけのリンゴを残して
友 ....
僕の
頭の上で
機嫌を損ねた
灰色の空が
意地悪そうに
雨を降らせる瞬間を
見計らっている
僕は
被った帽子を
顔の半分まで引き下ろして
小さく
舌打ちをしたけれど
....
赤い部屋 鍵の束
黒い猫 稲光り
足音 足音 遠くなる
人影 人影 消え失せる
(君は知っているだろうか この感情が何かを)
禁じられた書 落ちる窓
目隠し鬼 白痴の横顔
雨音 ....
仮面をつけた死骸を葬り去る
おまえの甘い 汁液のながれ
− 澄んだ夜の愁い
生命の孤立した蛍雨の折々
醜い星の瞬き
(こえがきこえない)
太陽が歪んだ夜の眠り
はいぜん ....
上手く言葉を綴れないけれど
あいを届けてくれた、
あなたに
きみに。
どうしても贈りたい
ただ、ひとつの言葉。
“ありがとう”
海は黒かった。
私が港から見るとそれは海、というより、ただ誰かの巨大な血液の湖にいるような感覚を催した。
異様に粘り気があった。
それらがどろーり、どろーりと、ゆっくり呼吸するようだ。
腹の上 ....
わたしとあなたは映画館に行く
学生一枚、一般一枚、
このチケットがわたしとあなたの距離
いつもわたしがあなたの手を引っ張って
あなたは困った顔をしながら、ふたり劇場の中へ
あなたは席に座って ....
聞こえるはずの有線や
隣りの席の喧騒は遠く
耳に響くのはただ
あなたが噛み砕く氷の音
薄暗い照明に
照らされる指先の卑猥さ
子どもらしい仕草はポーズ
いつだってあなたは
....
逃げ場所は どこだ
酒かタバコか 男か女か
逃げ場所は どこだ
週末か未来か 妄想の中か
声をかけて張られるバリア
視線そらさないで ホント凹むから
そんなに僕が嫌いか ....
ひとりで
回転寿司に行きますと
何周もしている
モンゴイカにふと
周回遅れのじぶんじしんを重ねて
真向かいの
ホスト風の男が
うにいくらと注文しているのを
同じ色の皿ばかり積む私は
....
手でも叩こうよ
しあわせであっても
そうじゃなくても
しあわせなら
よりしあわせになるように
そうじゃないのなら
少しでもしあわせに近付けるように
できることなら
あなたの ....
コロッケは生活の象徴
雑然としたテーブルや
家族の遠慮ない声
今日という一日の繰り返し
晩ご飯はコロッケがいいな
ミンチとじゃがいも、あったね
二人でやると早いよね
....
彼女はいつも
優しげに微笑んでいて
私はその向かいで
罪人のように俯いていた
明るい彼女を
羨みこそすれ
憧れはしなかったのは
私の感じる
辛さや悲しさを
なんでもないことのよう ....
こぼれる笑みを舌先で隠し
焦らしながら導いて 沈める
時折 突き上げられては 鳴き声をあげ
遮二無二躍る 私の姿は きっと醜い
美しく歪んだ顔に目を落とし
我を失い倒れ込む
....
お葬式の帰り
タクシーでいっしょになった
あまり仲良くなかった美代ちゃんと
彼のおもいで話をしようとしたけれど
たいして
覚えてることなんかないねって
シャッター通り
そういえば
....
坂道 こがねいろ ころがる
足音の環と季節は
付きながら 離れ流れて
そのくらいルーズに タイトに
輪郭を捉えた空は雲がさかさま写真
覆いかぶさった君の
ため息
はみ出した哀 ....
彫刻を愛でれば
白い大理石がとろけそうだ
柔らかな肉のひとつひとつ
今にも流れるように動き出しそうで
私は思わず息を止める
布地の擦れる音がする
静かな瞬きが繰り広げられ
その度 ....
浮き沈み
笑って泣いて
一人芝居に明け暮れて
忘れてみたり
浸ってみたり
行き交う靴の音に
追いかけっこの背中
諦めかけて
見つめ直して
終わりのない波動
....
ただ、ひとつの線
そのさきの
きわみ
静けさ
甘みを増してくる
過剰なざわめきに
鈍い、だが長い
痛みに
蓄積されたのち
放たれる
腐臭に
耐えつづけるこ ....
目の前に横たわる死体から
なにを手に入れた
喉を縊ったその手は失ったはずだ
束縛を解いたその心は手に入れたはずだ
保存エネルギーを
{引用=
電柱の上にとまった黒い少女
クス ....
ひとしずく
感じる体温に赤らめる
小さくも力強い様相
白い華、ひらり
舞うころには地上の衣となり
還りを待つ温もりと化す
ひとしずく
染まるは心
幾通りもの模様に揺れ
....
無いものねだりをするよりはと
秋の白い雲流れる堤防で
ひとり
清貧ということばの意味に思いを馳せる
それはあまりにも懐かしいことば
仄かなランプの灯かりを頼りに
見果てぬ夢を追い続けら ....
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