自転車で坂道を駆け下りて
夕暮れ前の公園を抜けていく
誰もいない遊園、鉄のにおい
藤の花がぱらぱらと
わたしの背後で落ちていった
同じかたちの宇宙が隣町にもあって
昔はよく友達に会いに ....
女子トイレに入ってきた
あなた
あっと小声上げたと思ったら
ばつの悪そうな顔して出ていった
なんだかおまぬけで可愛いよね
あれれ、わざとかな
石橋は疑って渡れ
ほとんどの誤り ....
ボトルの内側に貼り付いた
水滴がつるりと滑り 落ちる
そんなあっという間にも僕たちは
死にあい 生まれあっている
細い点の中にある、線を描く息の中にある
骨が飛び出そうなくらいの
....
心の中では頑張れって言っている
でも言うだけで
無意味な質問を繰り返しては
自分を嫌いになっていく
鏡に写った自分は
いつかの自分よりも歳をとっていて
素直さだけ忘れてきたかのように ....
五月のわたしのルール
肉は肉屋さんで買う
魚は魚屋さんで買う
コロッケはあげたてを
おでんは味のよくしみた
やきとりはけむりで見えないくらいの
とてもシンプルなこと
この ....
見上げた空から
はらはら 葉が
ながれていた
なみだ、かと思った
それは
落ちていたのではなく
夕暮れの空
まっすぐいちれつに
ならんで昇っていた
りょうてから
ふわり ....
あめがふる
あめがふる
ぱらぱらと
かさにのる
あまつぶが
こぼれて
みずたまりが
できる
どんよりとしたそらに
うかぶぼくのかおはうつろ
あかいかさだけが
げんじつみを ....
{画像=080426092028.jpg}
さあさ みなさん
手を繋ぎ、
夜の踊りを踊りましょ。
赤いライトの輪の内は、
ヘモグロビンのタンゴです。
蒼いライトの輪の内は、
黴びた膚肌( ....
080426
妻を殺して逃げるんだ
二十五時の暗闇で
つま先立ちで忍び足
窓の外はほの暗く
モダンな街灯連なって
にたりにたりと
ほくそ笑み
綺 ....
チューリップが咲いている
この間の春の嵐には
少し苦しそうに
揺さぶられても
泣かずに咲いていた
チューリップが咲いている
何もかもを飛ばして
破り取っていった
この間の春の嵐に
....
あなたは変わらず
ぶっきらぼうで
歯に衣着せぬ物言いが
むしろ心地よい
十数年ぶりに席を並べて
仕事をする
あの頃とは
立場も背負っているモノも違うけど
変わらぬことに ....
ざくり、ざくり、という音で目が醒めた。
白い壁紙が窓から入る柔らかな光を映している。
わたしは朝一番の仕事を思いだし、慌てて起き上がった。
枕元には、寝る前に見なおしていた写真が散らばってい ....
手がちぎれるくらいにのばしてみる
空 に
とどくわけないの に
そんなことは知っているの に
ふう、と窓に息をふけば
くもる
・しばらくだけ、くもる
・また、みえてくる
どっち ....
静かなサーカスから 流星を追い越して
痛みの隙間を 夜明けが埋める
眠れぬワインで嘴濡らす
ジェラシーに踊る海燕
群青の恋を抜け
空の終わりへ 羽ばたく
傷だらけの翼をいたわりなが ....
いまいましい季節が過ぎ去って
春の匂いを運んで
ちいさな風が
独り言を
ちっちゃな声で
ほんにゃら ほおい
赤いランドセルに
まだおんぶされているような
ふきのとうの葉で
傘 ....
自分で考えてみても些細過ぎる悩み事を
頷きながら聞いてくれる
復縁できたらとか下心あるのかな
彼だった頃は喧嘩ばかりしていたのに
なんだか不思議だよね
今では心を開いて相談できる
同志 ....
・
わたしの好きなひとの眼の中には
いつでも空がひろがっている
外が雨でも嵐でも
すこんと晴れた青空の眼だ
することが何もない
曇った日曜日なんかには
一日中好きな人の眼を見ている
そ ....
酸素を吸っているよ
少女が酸素を吸ってるよ
少年も酸素を吸っているよ
酸素を吸ってるよ
酸素を吸っているよ
酸素は どこからくるのだろう
酸素は いつまで ....
一面に広く冷たい月の砂丘を
春先の空に見つけること
教えてあげたこと
知ってほしくなかったこと
手紙を一枚だけ書いて
そして出 ....
たった
一つの愛しみを
抱いて
思うところを
見つめ
寄りそう人の
片時
で
ほほ笑んで
いる
貴女の
握りしめた
左の手の
小さな 小さな
種に
なりた
....
書いては消し、
書いては、
消し、
夜 、
に書いた手紙は朝にもういちど読みかえしてみよといいます、
雪は残らずとけてしまった、私は雑 ....
1996年
わたしの空は黄土色
乱れた線でつないだ電柱にもたれかかる緑
縁取った空気に殺意すら覚える吐息の反抗
1996年
嘘を血で丸めた
家の前 ....
頑張ってない
そんなぼくだって
ほら、
頑張り方がわからない
そんなきみだって
ほら、
生きてる
手だって動くし
感情だって揺れてる
頑張っていない人なんかい ....
小指の先くらいの
小さな虫が
ほんの僅かなひかりで
戯れる頃
私も
肉眼で見たとして、
あなたの瞳くらいの
月を
眺めることでしょう
....
さみしいものが
さみしいものと
こすれあう
すると なぜか
うみは ひろがる
なみは ひくいまま
たよりなさげな
しっぽでも
つなご
ひねりだしたって
しょっぱい ....
百匹のトナカイ
百匹のトナカイ
五匹が雪の国のひとに
食べられました
九十五匹のトナカイ
二十五匹がライフルを持ったひ ....
ある朝
寝ぼうした
とりさんは
ふかふかの羽根にくるまれた
とりさんは
夢ごこち
あっちへふわふわ
こっちへふわふわ
風にとばされてしまわないか
ボクは気が気じゃないよ
夢ごこちで ....
おいしいと評判のケーキ屋さんは
有精卵をつかっているという噂だった
怪物みたいな冷蔵庫を開けると
そこには透き通るような殻をした
まだ温かい卵が並んでいるのだと
早朝
こっそりケーキ屋 ....
石畳に膝を折る ぼろ切れを纏った少女
肌は白く 心臓が透けてしまいそうなほどで
髪は黒く 何か重大な光を隠しているようで
瞳は大きく ステンドグラスを見ているようで
手足は細く 成熟した草 ....
僕が時々
夕食を買いに行くマックに
いつも立っているクルーの女の子
いつもオーダーを取りながらも
唇が乾くのか単なる癖なのか
唇を湿らすように舌を
チラチラのぞかせる
唇から漏れ ....
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