すべてのおすすめ
月が満ちたとき
手をつないで 一緒に 夜道を歩いた
月が半分になったとき
来ると信じて 部屋で ずっと待った
月が細くなったとき
涙で形が変わった
月が姿を消したい ....
雨の降りそうな赤い夕立前に
背中だけ次々落ちてきた
それはいつも誰か
夜の底辺、まどわされる時間へ
ふかした歌を染み付かせていて くたびれていて
もう煙らないんだ
もう静まないんだ
....
罪咎の月光が降り注ぐ
身体の冷えた僕には
その暖かさはあまりに残酷で
君がいるはずだった世界を
壊してしまったこの手には
その暖かさはあまりに無慈悲で
テラスの鉢植えも
白を誘う ....
濡れそぼつ手で
旋律を撫ぜるかのやうに
彼は私の
両の乳房に、そつと
指を這わせてゆき
それはあたかも
神聖な儀式であるかの如く
誰も目にすることのない
真つ暗な室内で
執り行 ....
ふにゃっとした感触の
ゼリーのようなその不安
つるりとむにゅりと飲み込むの
飲みすぎなんだと笑うけど
ずっと消化されなくて
胃もたれ起こして体もふにゃり
何もわからず なにもできず
でも ....
そこはかとなく
カオス から はじまる
巣箱の なかで 羽音が する
複数が 単数を 響きあう
羽音が する
とおく 草陰に 一軒の 廃屋...
誰かの ....
死と眠りが
同じようにみえるときが
ある
ひとめみたとき
だからときどき
はっとして
大切な人にかけよる
あなたたちは
人の気もしらないで
静かな息をしている
あつい
手 ....
暑い夏だと、手がひとりでに動く。
発せられなかった声も、潮風の涙腺にとけて。
装飾のための深い窪みまで、
透き間なく、枯れている、古い桐箱に眠るフィルムを、
年代物の映写機に備え付ける。
....
水溜まりに映る
青く、吹き抜けた空の
隅っこで泣いている
雲を見つけた
そこだけが
深い灰色に沈んで
しくしくと
雫を落としている
大丈夫ですか、と
声をかけると
....
捨てられた子犬のような心のまま
静まりかえったホームで君を待ってた
かわいいとか嬉しいとか
そういう言葉をくれる代わりに
すねた目をしてみせる人だったから
気付いた時にはもう全部
あなたの ....
あの夏はもう過ぎてしまった
まだ子どもの頃
特に待ち合わせをしなくても
いつもの公園に集まって
そこから林に探検へ
入ってはいけないような場所に
金網をよじ登る
そうすることが夏だった
....
通り雨を
息継ぎしながら
ぼくたちは急いでいた
離れることを
急いでいた
手のなかの熱は
次から次へ
一秒後
つよくなろう、と
{ルビ翳=かげ}りをひそ ....
ひとりきり頬杖ついて
ため息つく雨の午後
紫陽花の青い花びら
みつめては悲しくて
まるで報われない恋に落ちた
悲劇のヒロインみたいに
あなたが好きよ
くもりガラスに書いてみても
このせ ....
あい で空中はべたべたしている
ことのロウディングは、火の車なのか
潜って息をする世界のなかに
金を食べる魚、うまれたときから
何がそこから見えるの
尾を振らして遊泳
砂糖菓子は水に溶け ....
悔しそうにも
哀しそうにも
荒野の来し方を
見つめるようにも見えた
セピアのなかは真空だった
息のできる真空だった
ブラジャーで固くした
からだは青くて冷 ....
ゆらりゆれゆく水面に
魚のかげはうつらない
深く沈んだ自転車の
かすかなひびきが ぽつり
雨をよび
あらしを誘う
梅雨の日々は湿っていて
すべてをひらたくさせる
私も 床も 土も
....
ちょっと足らないだけだものね
八時二十分を指している
あなたの眉毛の上に
ボールペンかざしてあげる
いざ出かけようとしたら
小糠雨降り出して
傘を差そうかどうしようか
迷うのにも似て ....
はやい
から
きれて
とんでる
けしきが
ちかくの
草むら
なんて
もう
線だ
恐ろしいくらい
長い
線だ
空気が
固い
いま
どれだけ
もう
壁みたいで
い ....
よほど
苦しかったのか
あなたは
泡をはきながら
空高く水面へ
浮かんでいった
えら呼吸が
苦手なわけでは
なかったが
ときどき
疲れてくると
肺呼吸してしまう
悪い癖があ ....
血のように黒い
指の影をひらき
高みへ 高みへ
唱いゆく
曇は一度に
ふいに動く
灰と火の路
同時に迷う
切りきざまれた星が
自らかけらを積み重ねたとき
....
乳母車の乳児のバイバイに
こたえた手
布の端をひとかがり
だっこされている乳児を
泣かせた作り笑い
布の裏に斜めの縫い目を見た
横断歩道を渡る小学生に
掲げた手
布 ....
おやつを我慢しては 花火を買った
刹那の輝き 一瞬の煌めき
向日葵が枯れ始め 陽が落ちるのが早くなり
セミの声がヒグラシに変わる
緑の山も夕焼け色に 少しずつ染まっていく
「 ....
さようなら
さようなら、
空を
じっと
眺めている
百千万の兵隊が
降り注いでいる
擦り鉢状のせいめいに
朝が、
手渡されている
擦り潰すの ....
少年は靴を履いていなかった
ぼんやりとした瞳で
橋の上から
流れゆく川を見ているだけだった
少年に親はいなかった
預けられる場所はあるものの
そこは少年のいる場所ではなかった
少年は ....
君がいた
ぽつんと君がいた
ぽつんとアイスクリームを食べていた
私もいた
ぽつんじゃないけど私がいた
がつんとアイスクリームを食べていた
チャンネルをまわす
君との ....
泣かない女は強いの
でもね
泣けない女は強くなんてないの
とっても弱い生き物なんだよ
とっても哀しい生き物なんだよ
だから
そっとあつかってね
優しくあつかってあげて ....
タマゴをパックから取り出して
卵子焼きを作ろう
1個目 割ると オッサン入っていた
2個目 割ると またオッサン入っていた
まさか3個目は ないだろうと 割ってみたら
や ....
この つらさ は
望んで 与えられたもの ではない
打破したくても、
許されない。
この つらさ は
誰のものでもない。
中途半端に プライドを植え付けられ
....
死体を引きずる少女
ずるずるずるずる
ずるずるずるずる
肉と地面がこすれ合う
少女は白いお家に入っていく
白いお家の白い煙突から
灰色の煙がもくもくと
もくもくと上がる ....
一筋の夢
指で先を足していく
空には届かない
私の背伸びでは届かない
そのまま
ぷつん と途絶えた
音信
首元がさむざむするから
結っていた髪を切った
ただそれだけのこと
今朝 ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78