靴を履けない少年
ぽえむ君
少年は靴を履いていなかった
ぼんやりとした瞳で
橋の上から
流れゆく川を見ているだけだった
少年に親はいなかった
預けられる場所はあるものの
そこは少年のいる場所ではなかった
少年は靴を履かずに
夜中にそこを離れて
こうして川を見ているのだった
橋の向こうからは
塾からの帰りだろうか
不自由のない少女が歩いてくる
少年を見るなり
逃げるかのように明るい方へと走る
少年は歩き出した
どこへでも行けるという自由があったが
その自由はなるべく暗い方へと
足を向かわせていった
少年は靴を履いていなかった