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わたしとあなたは映画館に行く
学生一枚、一般一枚、
このチケットがわたしとあなたの距離
いつもわたしがあなたの手を引っ張って
あなたは困った顔をしながら、ふたり劇場の中へ
あなたは席に座って ....
聞こえるはずの有線や
隣りの席の喧騒は遠く
耳に響くのはただ
あなたが噛み砕く氷の音


薄暗い照明に
照らされる指先の卑猥さ
子どもらしい仕草はポーズ
いつだってあなたは


 ....
ひとりで
回転寿司に行きますと
何周もしている
モンゴイカにふと
周回遅れのじぶんじしんを重ねて
真向かいの
ホスト風の男が
うにいくらと注文しているのを
同じ色の皿ばかり積む私は
 ....
手でも叩こうよ
しあわせであっても
そうじゃなくても

しあわせなら
よりしあわせになるように

そうじゃないのなら
少しでもしあわせに近付けるように

できることなら
あなたの ....
コロッケは生活の象徴
雑然としたテーブルや
家族の遠慮ない声
今日という一日の繰り返し


晩ご飯はコロッケがいいな

ミンチとじゃがいも、あったね

二人でやると早いよね

 ....
こぼれる笑みを舌先で隠し
焦らしながら導いて 沈める

時折 突き上げられては 鳴き声をあげ
遮二無二躍る 私の姿は きっと醜い

美しく歪んだ顔に目を落とし
我を失い倒れ込む
 ....
お葬式の帰り
タクシーでいっしょになった
あまり仲良くなかった美代ちゃんと
彼のおもいで話をしようとしたけれど
たいして
覚えてることなんかないねって

シャッター通り
そういえば
 ....
坂道 こがねいろ ころがる
足音の環と季節は
付きながら 離れ流れて
そのくらいルーズに タイトに

輪郭を捉えた空は雲がさかさま写真
覆いかぶさった君の
ため息
はみ出した哀 ....
彫刻を愛でれば
白い大理石がとろけそうだ

柔らかな肉のひとつひとつ
今にも流れるように動き出しそうで
私は思わず息を止める

布地の擦れる音がする
静かな瞬きが繰り広げられ
その度 ....
ただ、ひとつの線

そのさきの

きわみ

静けさ

甘みを増してくる
過剰なざわめきに
鈍い、だが長い
痛みに
蓄積されたのち
放たれる
腐臭に

耐えつづけるこ ....
目の前に横たわる死体から
なにを手に入れた

喉を縊ったその手は失ったはずだ
束縛を解いたその心は手に入れたはずだ

保存エネルギーを

{引用=
電柱の上にとまった黒い少女
クス ....
無いものねだりをするよりはと
秋の白い雲流れる堤防で
ひとり
清貧ということばの意味に思いを馳せる

それはあまりにも懐かしいことば
仄かなランプの灯かりを頼りに
見果てぬ夢を追い続けら ....
恋人のお母さんが睨みます

子供の恋人が苦笑いします

なぜ??

私には学歴がないから..


こんな世の中にしたのはだれですか

名乗り出なさい


そう言っても

 ....
やさしい足で走っていたら
胸まで砂の入る転びかたをした
目の前にある白く小さい手は
逆光で誰ん手か判らないまま

わたしはその手にすがろうとはしない

胸に入った砂が肺で
雑ざりあって ....
窓辺のロンリネス そこにいないで
翼ある者たちよ 飛び立て
あの青く澄んだ{ルビ高処=たかみ}へと今こそ

求めるものはあまりにも遠くて
追いかけてた夢にもはぐれてしまった
あきらめないで ....
ノート

忘れられた言葉

終わりもみつけられずに

さまよったまま

静かに痛んでゆく紙のうえで

呼吸をつづけている

あのひとの、
いつかひらめいた
あのひと ....
 
 
シとドの間の秘密
密林の光を探す処女
口笛は
美しくもはかない時代の産物だと
誰かが呟いた
 
永遠を笑うこどもたち
中指は輝きながら点滅して
たくさんの蛍を呼んだ
 
 ....
全てに疲れ果てて 涙を流す 君がいた
こんな自分には もう価値なんてないと呟いた
でも そんな涙を流せる心にこそ 価値は宿るんだ

目に映らないものばかりで 溢れているのは
交わらない二つの ....
短く切った

その言葉なんかでは

私の心は

死んでしまうの

赤い瞳は

あなたを待ち続けた

切ない結果
『ころがるわ。』

みんなには内緒やけどな
うち、好きなひとおんねん
そう言って笑う
なぁ、なんで僕に言うたん
僕ほんまは君の事好きやねんで?


『ちゃうねん、あの、ちゃうねん』
 ....
うそは泥棒のはじまり
だったはずなのに
ひとは誰でもうそをつく

愛するが故のうそだからと
あのひとは
目も合さずにつぶやいた

その場しのぎのうそを重ねて

針千本の〜ま〜す
 ....
酔っ払って
海岸に
遠くの音
ひずみの向こう
波は立ったまま
立っている

寒いのは
恋人を連れていないから
あたたかい手を差し伸べる人を

遅くまで起きていても
誰も叱らない ....
あの人はね 
魔法の花が好きなんだ
夜に咲く黄金の花が
誰を待っているのか知らないけれど
あの人は待っている ずっと前から
満月の夜 
魔法の花は満開で
あの人の影が映るだけ・・・
口の中の味が
空腹で満たされたとき
かわいた舌の反応は
ひどくにぶくて
ただ咀嚼し続けるんだ
飯が甘くなるまで


明るくなってしまったから
朝ごはんにしよう
お腹が空 ....
大きなクリの木を
蹴り上げて
うずくまり

道端のまだ青い
イガイガを触って
小首をかしげて
泣いた

上手に想い出を折り畳めなくて
冷たく湿った土の上に
焦げついた記憶 ....
孤独な夜の狭間に
行き場を失った
言葉たちが
ゆらゆらと
哀しく宙を拡散していく


握りしめた想いが
指の透き間から
硝子の粒子となって
サラサラ零れていく


染み入るよ ....
歯が ぐらぐらしてきた
これはきっと 抜ける前兆

朝起きたら 昨日よりぐらぐらしてた
指でつまんで ぐらぐらしてみる
ちょっとだけ ひっぱってみる
まだ 抜けない

ご飯食べるときに ....
私は10年冬眠していた

 走って 走って 疲れてしまったから

 目を開けると

 良人も家族も 老けていた

 みんな 私より 弱っていた


 はいつくばって 鏡の前へ
 ....
さしのべて
私に
助けてほしいの
私は

私だけの
あなたじゃなくていいから
あなただけの
私でいさせてよ

ねぇ その手をさしのべて
傷つけることしか知らない
この手を
掴 ....
口ぐせになっている
おとなも
こどもでさえも
何かと言えば口にする

死ぬほど頑張ったのか
どれだけ努力したと言うのか

口にすればするだけ
逃げていってしまうものがある

それ ....
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