『さよなら』
その一言に全て込める。
それだけで、ほら。
思いは届く。
予感する、
みどりの枝葉は
たわわなきんを孕み
ひとときの甘い溜息や戸惑いを
その足元に散りばめる
枇杷色の、
おぼろなる気配は
風の匂いに神無月の宵闇を語り
遠くなった声の記 ....
帰り道 君は南に私は北に 二人を分かつ夕暮れに秋
ロンハーの青田典子が好きと言い笑い転げる君が愛しい
疲れてる君の様子に少し似たスーツの上着抱きしめたくなる
ネクタイを慣れぬ手つ ....
無いものねだりをするよりはと
秋の白い雲流れる堤防で
ひとり
清貧ということばの意味に思いを馳せる
それはあまりにも懐かしいことば
仄かなランプの灯かりを頼りに
見果てぬ夢を追い続けら ....
練習中の友待つフリで3組の廊下の前を行ったり来たり
なんでもないはずの水曜が記念日になったらいいなと追いかける君
文化祭あけたらホントに秋が来るそんな気がしていた帰り道
....
十月の、
霧雨に染みて
薄紅いろの細胞膜が、
秋桜、
空に透ける
十月の、
夕暮れの風に惑って
枇杷いろの金木犀、
満ちる、そこらじゅう
それらの
秋という色や匂いに混 ....
折り畳まれた傘を
小さくまとめながら
ポールにもたれかかる私を
溜め息だけが見つめている
お婆さんが腰かける
その左隣に座りながら
私の右手は電磁波を帯びて
きっと、誰かを攻撃して ....
あたしのこと忘れたことも忘れる頃にあたしは君を忘れるんだろ
何もかもうまくいかないそんな日々 カレーさえ悲観的な味付け
鈍行の列車の速さでは駄目だと堪らなくなり目を閉じている
....
あいの里
しのつく秋の{ルビ雑木=ぞうもく}
湯ぎりのしずく
かじかむむねのめぐみよ
髪を結い
知らぬみちをぬけて
はにかむ街へ
いつか人とはぐれて
ふちにたたずむ
銀のあかりあ ....
1
真っ直ぐな群衆の視線のような泉が、
滾々と湧き出している、
清流を跨いで、
わたしの耳のなかに見える橋は、精悍なひかりの起伏を、
静かなオルゴールのように流れた。
橋はひとつ ....
て、手を伸ばして
やわらかくてをのばして
その、影
ぼくらに届いて
君は
ぬりこめられて
たいよう
やさしくしずみこみ
耳のあな
つぼみのように閉じ
ふとんを頭からかぶ ....
私が生きている理由
この世に あなたがいるから
水面はしずかに
うそをつく
その
うちがわに包む
かすかな声を
時間の
呼吸
を
ひとに
こころに
えがかせて
完全なる傍観者として
何ひとつ
あばかれない
....
北風が公園の遊具を
カラカラと転経するかのようで
あわてて耳をふさぐと
もう名前も忘れたあのひとが
私を呼んでいるのに
声は私を忘れて
名前はだれにも届かない
やっとちぎり取った ....
あ、マナーモードにしたまんまだった
そう思って携帯開くと不在着信
昔、長いこと付き合った人からだった
胸の奥が締め付けられた
同時、ホッとした
なぜ?
どうしたんだろう
そし ....
夜明け前
神々の気配が
冷えた大地をわたり
静かな{ルビ洞=うろ}に届けられると
指さした方角から
蒼い鼓動が、はじまる
やがて
優しい鋭さをもって
崇高な感謝があふれだすと
う ....
口ぐせになっている
おとなも
こどもでさえも
何かと言えば口にする
死ぬほど頑張ったのか
どれだけ努力したと言うのか
口にすればするだけ
逃げていってしまうものがある
それ ....
真向ひし雪大文字に息呑みて
崇高なる美に心洗わる
鴎には雪が似合ふと久々の雪積む
景色川辺に立ちて
乙女子が幸せそうな顔をして
隣に座る夜の地下鉄
口紅をつける事なき此の日頃
....
四角い鳥かごの小鳥を
人差し指という小枝へ導く
みなみは細く圧迫される指を
目線まで上げて
「この部屋も 鳥かごみたいね」と言う
秋とは名ばかりのあやふやな風が吹き込む
窓辺に吊るした ....
硝子の風が
きりりと秋の粒子で
二の腕あたりをすり抜け
寂しい、に似た冷たさを残して行く
野原は
囀りをやめて
そうっと十月の衣で包まれている
わたしは
それを秋とは呼べず
....
「俺様がどれほど鮮やかな色で
みごと第一連を美しく染めたとしても
賛美の対象はあくまで作者だろが。
ふん、馬鹿らしくてやってられるかい!
こうして群青は捨て台詞をのこし
肩で風をきると、 ....
ひらけた駅も
すこし歩くと商店街
秋の日と陰が
水色を落としている
昨日の試合を
思い出しながら歩く
息子の剣道の大会だった
本格的な試合は初めてだ
....
キレットの真下の残雪で
オレンジ色のジャケットが
タルチョのようだ
鳥たちの羽ばたきの音で
あちらへと招いている
おまえはもはや
ことばだけになった
ど ....
夜が好きだった
暗くても明るくても 夜が好きだった
実家にいた頃 夜はすぐそこ
手の届くところにあった
今はもう 背伸びしても届かない
夜が好きだった
夜に抜け出す私も好きだった
夜 ....
すっくと立った
一本の大木
何十年も
独りきりで
淋しくても
動くことさえ
できないんだ
あとどれくらい
独りでいなきゃ
ならないんだろ
一。
僕はにはかない重さなど無い
そう思うから
語りつくされることも
例えば僕が空に消えても
君は行方を見失ってしまう事も無いだろう
過去にいく事も未来に行く事も
記憶に残る事も忘れ ....
声にならなかった
あらん限りの力を込めたはずなのに
例えばそれは
孤島に取り残されたおとこがひとり
遥か水平線に見え隠れする
船影を
蜃気楼だとはなから諦めているかのように
もし ....
カピパラさんとか モノクロブーとか
最近チヤホヤされてるけど
ぜったいワシのほうが カワイイと思うんだわね
「 飛ばねえ豚はただの豚だ 」という名言があるけど
ワシ、飛べないけど 蚊取り線香入 ....
増水の ために
すっかり 荒れはてて しまった
堤の かよって ゆく なかを
猫じゃらしを 噛み ながら
草ひばりの 音が ほそぼそと つづく
すすき野原を ....
二十歳の黒髪のような、
ブルックリン橋から、曙橋を繋ぐ空が、
未踏の朝焼けを浴びてから、
青く剥落して、雨は降ることを拒絶した。
とりどりの青さを、さらに青く波打って、
空は、傘を持たずに、 ....
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