雨天決行
山中 烏流

折り畳まれた傘を
小さくまとめながら
ポールにもたれかかる私を
溜め息だけが見つめている
 
お婆さんが腰かける
その左隣に座りながら
私の右手は電磁波を帯びて
きっと、誰かを攻撃して
 
 
ななつぶんのむっつが
ぽっかりと空いた席
はじっこに寄りかかるひとは
その空虚に耐えているのか
 
いや、もしくは
あの透明な空虚には
私には見えないひとが
座って、いるのか
定かではないが
 
 
ぼんやりと曇った
ガラスの一寸先を
他の銀色が
足早に通り過ぎていく
 
もうすぐ終点のとき
私の隣には誰もいない
微かな温もりだけを残して
隣には誰もいない
 
 
窓の外では
たくさんのひとの目が
 
水を得た魚のように
すいすいと
泳ぎ回っている。


自由詩 雨天決行 Copyright 山中 烏流 2007-10-02 23:34:14
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