体のまあるい婆ちゃんが 
ぜいぜいと団地の階段を上っていた 

通りがかりの少年は 
後ろから両手で腰を抱えて 
ゆっくりとした歩調と合わせ押し上げた 

( 振り返ると 
( 団地の ....
今日の空が知りたくて
朝から空を見上げれば
昨日と同じ秋の空

でもどこかが違う
昨日はつぼみだった山ゆりが
白く大きく咲いている
今日の空は少しだけ
昨日の空より白かった

今日 ....
そらにもよ
でっかいそらが まつんだと

まんずだまって みあげてみれ
そっだらここちが するもんだでよ
ふしぎなもんさな
なしてかな

はらっぱはよ うみのすみっこなんだと
うなば ....
苦しみの果てに何が見える?

真夏のアスファルトからの熱気に倒れそうだった

僕自身を映した蜃気楼はゆらゆら揺れる

あの日のままの気持ちでいるのに

君はそれを気が付かないふ ....
{引用=





青と蒼のはざまに
すれ違う風
伝言は儚く
雲は 日常を
虚しく過ごすばかり

遙かに空を
跨ぐ人がいるのだが
躰が透けているので
気づく者はほとんど ....
しらないものが多すぎて
わたしたちはいつも
上手におぼれる

陽射しとは
なにを探し出すための
あかりだろう
こたえなどわかる筈もなく
求めるわけもなく
わたしたちはいつも
上 ....
十月の
夕刻にしては
あたたかい風が
秋の
冬の
装いを始めた草の
乾いた匂いを運んでくる

霞がかった空は
穏やかな表情で
まだ染まるには早い
青く連なる山々に添う

静か ....
あなたをね
叩いたらティーンって
鳴いたのね

あなたをね
撫でてもティーンって
鳴いたのよ

チクタク チクタク ティーン

チクタク ティーン

チクチク    ティーン
 ....
浴室に腰掛けて身体を洗っていると
虫の声が
地面を敷き詰めるように湧きあがって
ワッショイワッショイ
ジーンリージーンリー
私を神輿にかついでいるつもりらしいのだ
それならこちらも ....
怖いほどの輝きを纏った
一日遅れの待ち人が来る

懐かしさに言葉をなくす…

私はすでに空っぽで
あなたの全てを受け入れられる

一年の穢れ
妬み
悪意の数々が

その光に浄化 ....
抱いて抱いて このまま君と
  快楽の海に身をゆだねよう

 愛し愛され 
   君のためなら この身さえ悪魔にだって差し出そう


君と共につづってゆく 真実の物語


  どこ ....
露草がぽつんと畦道に咲いておりました
宇宙まで大きく口を開けていそうな
高く澄み切った空に負けない
素敵な蒼い色
雨にも負けず
風にも負けず
道行く人を
ほっと和ませる可憐なけな ....
本当の暗闇と出会う
それって
なかなか難しい
ひとつひとつの灯火を消しても
寝付けぬ夜に何処より話し声が漏れて
この街の闇は仄かに明るい
本当の暗闇
それは遠い日の感触
胎内にいたとき ....
わかったことは
たくさんあるけれど
わからないことのほうが
わかったことよりも
ずっとずっとたくさんある

わかったことは
たくさんあるけれど
できないことのほうが
わかったことより ....
破れ、はためく帆と罪の波間にとぶ 潮しぶき
低い空の大理石にも似た模様が 狂い、ちぎれ
セイレーンの叫びに群がるのは、
姿なき乳濁色の「ざわめき。

水の泡立ちに「美しく覗く 翠の岩礁
神 ....
通りゆく
たわわな枝の柿の実は
豊かな秋と心実らす

歩みゆく
連なる虫の声を聞く
奏でる秋と心響かす

鳥が舞い
遠い空へと消えてゆく
秋の広さに心飛び立つ

木の葉揺れ
 ....
自分というものに
気がつき始めたこの頃は
どこか落ち着かなくて
みんなと同じことをしていても
同じではなさそうで
みんなと違うと思われたくなくて
同じことをしている自分が
自分ではない気 ....
?.


朝風呂が好きだった
その朝もおまえは
俺たちの小さな家の小さな風呂に
窮屈そうに仰向けになって
顔を沈めて
水の中で
目は見開いて
くちびるが
SEE YOU って
 ....
       一

観葉樹が、かぜに揺れて、嬉しそうに笑いかける。
笑いは葉脈のなかに溶けて、
世界は無言劇に浸る。
映像のように流れる無言の織物。
かぜが、喜劇に飽きるまで、永遠を飽きる ....
今日あなたが
やりたいことをできたのは
昨日あなたが
やりたいことをできたから

今日あなたが
やりたいことをできたなら
明日もあなたは
やりたいことができるでしょう

やりたいこ ....
手のひらに虫の息
丸い黒曜石の瞳は虚ろ
彼の本分は
飛ぶ事ではなく
鳴ききる事だからか
若草色の翅脈を透かした羽は
すり切れる事もなく
黒い前胸に刻まれた金糸も鮮やかに
腹の手風琴も今 ....
あなたがいなくなってから
私の書く詩は
あったかくなったと
ひとが言う

あなたに向けられなかった
優しいきもちは
今になって
紙の上に溢れている


滝のように
伝えるべ ....
 

落ち葉の中に
紛れ込んだスズメは
保護色の枯葉を
ホームグラウンドとして
はしやぎ回つてゐる


いくら喚いても
掻き鳴らされる
落ち葉の
大仰な音には
自分の声すら聞 ....
僕は犬です、わんわん
しがない犬です
一度主人を失いました
僕はもう仔犬ではなかったから

僕は犬です、わんわん
しがない犬です
先日野良の一員になり
金属に怯えるようになりました
 ....
5分前に着いた

時の記念日の声に
桜草の声に
促されて売り出された
音の出るテレビと
絵の出る絵本を追い払い
螺旋階段のある駅ビルに
不思議な国の子供たちを
氷詰めにして持って来た ....
ぼぼ


ぼぼってなんだか
可愛らしい
でも
ちょっと恥ずかしいことば



りんご


秋は実りの季節だね
りんご
とか
いい感じ
りんご
って禁断の果実
アダ ....
緩やかな曲率で
道は行き止まりまで続いていた
そこより遠い場所を
知らなかったので
墓標はその岬に、と決めていた

漁火の整列する底には
冷たい海流があって
行き止まりの
もっと向こ ....
 秋が咲いた 秋が咲いた
 どの花よりもうつくしい秋が咲いた
 春まいたたねがみのった
 かわいい小粒のちいさなたねが
 みのった みのった
 かなしみの
 さてこの気さえ狂わさん
 く ....
斑に染まる山もみじ、
濃くたちこめた秋の匂いに騒ぐ、
枯れ落ちた葉のざわめき
そして悪戯な、
木蔭を這う{ルビ下=しも}風 )))

そうだ哀しみは、
雲ひとつない秋空へと昇ってゆく
 ....
棍棒を
作った
オークの
頭四キロの

素振りを
ずっとしてた
だってお前が
怖がるから

引っ越した家は
夜少し静か過ぎて
お前が怖がるから
まあ実は俺 ....
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