風が私の輪郭をなぞる
私は風によって顕れる
その刹那
私は世界だ
世界が終わるとも
声は続く
風の意志は続く
世界は風によって名付けられ
名は風に隠されている
声は名 ....
夏の気配をちらつかせては
まだ肌寒くなる朝には
寒がりな君のことを想うよ
咲いてしまった躑躅の並木や
同じくらい鮮やかになってしまった街の色が
こんな日は胸に痛くて
....
生きて帰った者はいないと
時折
こころをよぎる声
森はしずか
ずいぶん昔に
からまった命綱
捨てられないねと
君が笑う
さざめく木の葉のすき間から
漏れ落 ....
頭に小さな針で穴をあけると
容易くゼリー状の意識が入りこむ
意味を下さいって
当たり前の様に垂れ流される
ネオンサインの空
夜をごまかすのは
眠りたくないからじゃなく
オルゴ ....
その人がやってくるのは
ほんの少し
光のかけらをわけてくれた
下弦の月の白い顔が
空に溶け込んでいく時刻です
おやすみなさい
お月様
インクびんのふたを閉めて
閉じ込めたのは月 ....
石を轢く
花を轢く
進んだ跡ができあがる
生きていることを
考える
私は独りで自慰をするしかなかった
匂いなら今もそこここに
残っている
けれど
本当はそんなもの
もう
何の意味もない
忘れない
ぬるい風が頬を撫でていた
あの真昼
二 ....
海を飛ぶ 魚は 空の鳥なれず 想いを波の しぶきに隠す
シェイム
はずかしの国
強い力でこじ開けようと
国の決めたみんなの決めた民主主義の決めた
ふりをして決めた
シェイム
だからもっと恥ずかしそうに
ごめん ....
あなたの胸に頬をあずけ
うっとりと夢見心地で
すき、って言おうとしたんだよ
するとなんだか可笑しくなって
よだれがこぼれそうになり
あわてて口をついた 言葉は
しゅき ....
(1)
僕は眩暈をおこし倒れゆく途中、眩暈の原因はこの部屋の絨毯の模様がどうにも見慣れない形に変わってしまったからだということに気づき、しばらく斜めになったまま考察を続けた。
(2 ....
哀しい事件の起こるたび
想像せずにいられない
あの崩れ落ちる父の母の
それが
自分だったらと
私はまだ失ったことがないから
あるべきものを
まだ失ったことがないから
....
あなたは認識されない
あなたは白いサル
あなたはジョージとマイケル
認識されない
あなたのことば
認識されない
あなたはドゥンガとスコバ
認識されない
....
こどもがえへへと笑う
かわいいね ぎゅー
なんてするけど
パパの好きな塩辛
手作りして
「お帰りなさい」とか
言うけど
ほんとは
わたしが
誰のものでもないように
....
きみがプリンが好きだと知り
ボールと泡だて器を用意した
すると 卵をきらしていることに気づき
悩んだ末に おもてに出た
ぼくは 公園に向かい
砂場にすわりこんだ
誰かが忘れていったプリ ....
私の胸の
小さな傷の
隙き間に
君は棲んでいる
大袈裟な
ガーゼの奥に
ええ
見える範囲での
リンパ節は
全部
廓清しましたから
麻酔から
....
手をつないで ぐんぐん歩いてくれた
よりそえば 支えてくれた
泣いたり
笑ったり
おこったり
なぜ と問うたなら 困っただろうに
そして
....
肉体を支えるものが骨であるならば
空を支えている骨は人の想念である
人が空を想うかぎり空は空であり続け
けして空は空から落ちてくることはない
つまりそれは
人が人であり続けることと同 ....
鏡に向かって・・・
気にするな、あんたはそんな、大物か?。
指を折って下さいと
私は尋ねる
憤懣やるかたなし
といった風情で
彼は
動かぬ指を折る
ことばほど
指は曲らず
ただ
夕暮れが訪れる
もくれんの花びらの
やがて
春 ....
またやってしまった
ガチャガチャするチャンネルを
音のないようこっそりひねる
母の目を盗むということ
初めての
番組で
時折なまめかしく
じゅうたんに目配せしながら
やっぱり見 ....
ようやく
妻も寝床に入ってしまったあとは
明け方まで
卵を産んで過ごした
初恋のラブレター と踏ん張ると
名刺が産まれた
元気よく不倫相手 と踏ん張ると
辞令交付が産まれた
午 ....
よく冷えたふたりの恋に
思い出エッセンスを少々
泡立てすぎて分離しました
その瞬間
私の手の甲に
冷たく鈍い痛みが走る
うっすらと
滲みはじめるその赤に
私は泣いた
聞き付けた母親が
どこ ....
マングローブの森で
きみと 二人きり
光が射す方へ
手をのばしてみたけど
堂々巡りの 僕たち
むしろ
袋小路ならあきらめもつくのに
もう 僕は
迷ったりしても いいんだ
....
ドーナツの穴から覗くと
世界はいつも
いいにおいがした
食べ物で遊んではいけない
そう教えてくれた人が
今ではもういない
新品の自転車は
大人びた黒
コウちゃんはゆく
立ち漕ぎでゆく
試運転の海岸線
やがて
登りにさしかかり
みるみる
....
何も無い道を歩いているのに
さっきからカサカサと音がする
ああ
俺の心がカサカサなのだよ
そうつぶやいてうつむき歩く男
の背中を見つめる妖怪カサカサ
*
妖怪カサカサは
....
真夜中のアイス・ココアは
可笑しい程
ひとり
カーテンの隙き間から
誰かが覗いたら
やあ
ひさしぶり
いない人とパーティーをする
君は
許してくれるかい?
ゆる ....
さよなら国は
朝でも 夜でも
「さよなら」とあいさつします。
みんな みんな
笑顔で「さよなら」をかわします。
時には おじぎまで
時には なみだまで
ボクがいる ....
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