道端で拾ったのは
意外にも{ルビ真実=ほんとうのこと}で
家に持って帰って
テーブルの上に
置いておいたら
そこから
あっけなく
家庭が崩壊した
生きてさえあれば
悲しむことだってできる
君の涙をそっと弾いて
星にだってしてあげられる
生きてさえあれば
将来だって泣けるんだ
それがどんなに悲しむべきことでも
消えてなくなること ....
「お土産は、何がいい?」と
聞かれたものですから
私、何とはなしに
「らっきょう」と答えたの
お父様とお母様が夕食後に奏でる
小気味良い音が好きなのです
ぽり ぽり ぽりり
....
「つまらない。」
と思えるほど
慣れたものだ
あとは
今度の花見にかけてみよう
「あのね、金がなくて
ほんとに 髪を切りに行けないのよ。」
新鮮なものは
とれたての鯖 ....
花曇りの空に舞う胡蝶の
その透きとおった翅を
欲しいと思う
やわらかく笑う
ということを覚えたのは
いつの頃だったろう
新しいピンヒールが
足に馴染まなくて
ア ....
夜のネオンきらびやかな街の一画
あのストリップ劇場で出会った君に
僕はもう一度会いたかった
七色のミラーボールの下で
ピンクのランジェリーは様々に色を変え
君の肌もそんなよう ....
舗装された道の
ペイントされた、とまれ
踏みつけられた骨の色の
見上げる季節の樹香
舞い散ってへばりつく
美しいという名の死骸
立ち上がれない
ペイントされた、とまれ
月が ....
桜土手通りの
ほんとうの季節
夜、春香を写しとる水面に
ひとの本性があばかれる
だから秘密は
誰にも知られないように
ターミナルに出ると
うす青い空が広がっている
通りは車で渋滞していて
そのまんなかでは 赤信号が
意味をさがしながら
点滅する
帰らなければ、と漠然とおもっていた
帰ろうとするその方角を ....
わたくしはなりたい あなたに
好きからはじめる花占い
かならず好きで終わるから
弘前のあなた 今年も綺麗に咲くのね
好き
嫌い
好き
嫌い
好き
幾度やっても ....
雨を避けながら私は歩いている
傘に守られて私は歩いている
円形の
ぽっかり浮かぶその空間で
私は世界を眺めている
雨粒が傘の端から端から
あふれるように流れている
それは本来私の上に ....
きみと二人腕組み
帰りに祭りの町へ出て
当たり前のように落ちていた金を拾い
500と100と10円を分け合って
屋台で買い物でもしよう
桜の花祭りの角を曲がれば
私の田舎の田んぼ道で
住 ....
吸血鬼は
何百年もの間
そうやって生きてきた
それが
普通だと思っていたから
でも
ある時その吸血鬼は
考えた
「このままでいいのかな、俺。
恋もできないし、健康 ....
今月末、女房の実家に墓参りに行く。
仕事の都合などで、もう三年ほど実家には帰っていない。
鹿児島なので、千葉からそう簡単に行けるところではない。
墓地は高台にある。
眼下にはきらき ....
まず、{ルビ宿太=しゅくた}は色の多さに驚いた。
押し並ぶ品々の金色や銀色も、
人々の浴衣の薄紅色や朱色も鮮やかだったが、
それらがぼんやりと{ルビ滲=にじ}んで、混じり合い、
透明に光ってい ....
怪獣は
背中丸めて
正面見てる
ヒーローは
胸を誇示して
アゴひいている
怪獣は
あだ名でよばれて
ヒーローも
なぜか
呼び捨てにされ
(隊員の戦闘服見て洗濯屋さ ....
何もかもがかすんでゆく
人も 街も
さくらの艶列が
そこだけ
重ね着みたいに咲き誇る
生きのびる
自信がある者の
惜しげない
笑み
見下ろす川は
あの夏
爛れた皮膚を ....
星の遠めがねを峠に据えて
のぞき見る未来への深淵
みんななぜか震えていたね
体温を奪ったのは
外套をはためかせて
丘を吹き昇る風ではなかったんだ
風のゆくえを仰ぎ見る先に
透明に ....
熱を帯びた我らに容赦なく降り注ぐ雨。
雨は止むことを知らず、強く弱くを繰り返す。
向こうに晴れ間が見える。
ここじゃ風邪をひいてしまうよ。
あの晴れた場所に逝こうか。
この木の下で雨宿り ....
春は優しい素顔を何処かに隠し
コートのすそにまとわりつく
うつむいて
泣きべそかいているのは誰のせい
そんな街の片隅でも確かに芽生える
やるせない泣きべそ顔の奥で
見つけたもの
....
半年振りで姉は嫁ぎ先の富山から
5歳の{ルビ姪=めい}を連れて帰っていた
家族{ルビ揃=そろ}って
僕の出版記念すき焼パーティーをするので
今朝の出勤前母ちゃんに
「 今日は早めに ....
春の夜の
朧な月を仰ぎつつ
草露を踏む
真白い素足
クレープをキスのようだとのたまった
家出だよジャージをはいていないもん
ソニプラで見初めた彼氏プラスちっく
爪の色みんなちがってみんないい
花子たちなんかフラワ ....
すべての音楽
すべての詩や小説が
慰みにならない時が
勝負だ
涙が乾いたら瞳孔が開いちゃうだろう
お前がこれまで背追ってきた傷を自慢するつもりなら
お前は狂うよ
....
メモ帳の端っこに走り書きした其れ。
推敲なんかされてない
消しゴムも使わずに鉛筆で慌てて塗り潰した
綺麗な球体でなくて構わないから
伝えたい。
この世界の俺を形成した顔も知らぬ誰か達へ。
....
いつか贈られたCDを川へ投げたら、15回くらい水を切った。
医者にタバコとトコトコを止められている。
圧壊する潜水艦の窓に、父の船が見える。
優しくなりたいと呟きながらど ....
いま精神科に一年一ヶ月入院しています。退院も程近くなっています。
復活を楽しみにしてください。
ぼくの作品に好意を持ってくださった方へ。
勝ち組負け組と言うが
一体これは何の試合だ?
戦っているつもりもない奴と比較されている
誰かの小さな器の中で競わされている
ファーストフードでスローライフ
俺はそれでもかまわない
そりゃた ....
きみが僕を
心に焼き付けていたら
男前ではないので
さぞ不細工な焼印だろう
でも僕は
焼かれると燃えてしまうから
きみの心には
焼きつかない
きみが詩で
すごいものを作ったら
....
(夏)
波音の届きそうにない
部屋でただ
いき過ぎるのを待ってる
テレビにはめ込まれた
冷たいガラスの匂いだけが
わたしに似ている
(秋)
言葉になり損ねて ....
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