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削いでほしいとおもう
まとわりつくものはいつもきれいな花びら
ではなく 鱗のような厄介なものだ
きらきらとしていても からだから離れればいいのにとおもう
あのまま 埠頭へとびこめば
綺麗 ....
こわくない
冬なので
こわくない
ビタミン剤あるから
ぜんぜんこわくない
花柄の靴したを
いつもばかにされても
構わないで履きつづけていた
ななちゃんは9歳だったのに
勇敢だ ....
ちいさな錯覚
のぞんだものはちいさな錯覚
祝福も花束も要らないちいさな錯覚
それだけで良かったのに
ありふれた水も飲み干せてしまうような
不安定な曇りの昼下がり
虚無の ....
わたしのとういところをみぞれがながれていった
かこがかこらしいままかせきになり
結晶とわたしが
まったくおんなじそんざいになった
いつかひかるものとしてあつかわれる
幻の火にてらされ ....
{引用=
わた し は ねこ だ
な まえは ま だ ない
}
殺伐とした空気が支配する部屋で、
きみは子猫に名前を付けようとしている。
子猫が産まれてからもう三日が経った。
....
名前を尋ねられたので
火葬場の薪とわたしは答えた
山の落ち窪んだ場所にある
コンクリートの壁のなかの
あの鉄扉
白手袋
手袋は二足歩行して
乾燥した骨を拾っている
くすんだ ....
雷鳴の 母屋で人形をつかって話す
をんなたちのわらい声の
おおきい波 小さい波と
宴の忘れられた花として
ほこりをかぶった酒瓶がふたつ
影を曳いている
あやつり あやつられる会話
....
夜を分ける汽車が来て
雨の端を轢いてゆく
描きかけの絵が
窓のそばで震える
水たまりの空が
雨を見つめる
現われては消える
影を見つめる
空のすべての鐘が鳴 ....
うつくしく帰れ、と
はかない願いを込めた
ささやかな窓辺は
永遠に失われない
ただし、代償はある
例えばそれは
老いる瞳
例えばそれは
老いる瞳の中の
いつわらざる面 ....
君のつけた傷跡に、熱のような冷徹さで焼き付けてしまおう。
痺れる痛みが駆け巡り、完治するまで止めどなく、どうしようもなく、甘美で。
きがついたら、再発してしまう、性質の悪い感染症。
その苦しさは ....
ワルツと銀行の境い目
毎晩ぼくはそこにいる
そして決まって君を探す
いないならば創り出す
しばらく経って
違うところに君を連れていく
たとえば一方通行の電車
寂れたゲームセンター
....
頭を置き去りにして歩く、白い煙を道標として吐きながら
灯りは思い思いに燈り、星のように曖昧な輪郭
地面には産毛が生えている。泡立って固まった鍾 ....
たとえば
おまえが
カップラーメンに熱湯を注いで
3分間ぼんやりと待っている間に
おれは
南太平洋まで行って
カジキマグロを一本釣りしてこよう
たとえば
おまえが
トイレ ....
聞き耳を立てていた
厳しい言葉の迫る気配に
責める言葉の
迫る気配に
聞き耳を立てて
いた
口裏を合わせていた
障りのない言葉をえらび取り
結論付けない ....
背骨を震わせる雨は上がり、軒下の猫は子を舐める。
都市に流れる網の目の血管は下に、下に。皮膚を潜っ
て深く。地球は幾度、吐こうとする。
閉ざされた、大勢の人が並んで歩くノイズの重なりは
....
ほしかった
ものをまえに
気持をうしないそうで
驚いている
驚いている
わたしがわたしを
うしないそうで
ねむりなよ
あなたが
言うものだから
泣くよりさきに
ほほえ ....
みぞれ ゆき はれ みぞれ ゆき
ねえ
殺して よ
きっと気持ち良くて
笑ってしまう
わ
ひらり ひら り
には
まだ早く
濃色花蕾累々と
香り温くも木洩れ日なく
....
もう
あの船の行方なら
わたしの胸に描かれるしかありません
その
描きようの総てが許されるわけではなくて
それでも
描いていくしかなくて
ひとり
色をもたない潮風に
抱かれて ....
雨の日に彼女はピクニックへでかける
ぐしょ濡れのボンネットのうえでキスするために
アナウンスが不在を告げる
(あなたが誰かわかりません)
ため息で重たくなったバケツ
動物園で産まれた猿が山で ....
二度迎える零時には
広く全ての主語を解き放ち
わたし、や、ぼく、を
発音しないように
気をつけながら、
静かな旱魃に横たわって
そっと
息を引き取る
砂丘の青さに
ためらいの ....
幾重にも
連なってゆく
痛みの無言に慣れてしまう
その痛み
それは
誰にも明かせないから
誰もがみんな
重たく齢を
重ねる
褒美のような光の背には
忘れられ過ぎた美 ....
日本や中国の偉人はもちろん
チェ・ゲバラも
名前からして
実は韓国人だとか
言い出さねえだろうな
チェ・ジウは遠縁にあたるとか
いい加減にしろ、ふざけんな
きっと
模倣にすぎない涙です
人づてに
色づけされる涙です
やがては
無かったことになる
涙です
空へと昇り
空から下りなおす
涙です
だれ ....
樹上から葉脈だけが
長く垂れて、
神経回路を伝達する
信号みたいな
陽光の、ひと滴が
瞬く
青が広がる
ぼくたちの瞬きも
青くなるから、
この場所はきっと少しだけ、
世界の中心 ....
かなしみは
凍てついたりしないから
いつまで経っても
わたしは
楽になれずに
ひどく体温をうばわれる
硬いものなら
落としてしまえば終わりにできる
手から放して
決別 ....
(雪降る時間 あのひとの指がきらりとひかる、
わたしはくもりガラスの向こう側で)
あのひとを思うと 白い雪が降って、
わたしの肩にも髪にも舞い落ちる
そしてわたしは あのひとで ....
熱を帯びた扁桃を
通過する
酸味をふくんだえきたいは
ほどよく冷えて
生きていることが
すみずみまで広がっていく
――体温計の中の赤いめもりが行ったり来たり
ひとふさ
ひとふさに
大 ....
手毬とよく似た
日輪の影
不浄を仰ぐやわらかな羽
いつか、どこか、で
お会いしましたか
生まれたばかりの蓄音機
優しい人の手を拾った
深夜だった
路上の片隅に転がるそれは
少し青白く
何だか寂しげに
落とし主が戻るのを待っていた
ひんやりと冷たく
落とせば砕けそうな手だった
それでいて重たく ....
静かだった……
禁じられていることは それほど多くはないはずなのに
ただ、いくつもの瞳だけが 土埃に塗れながら
風と風の間で何度もはね返っている
男たちの沈黙はカラ ....
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