友達をナイフで刺した後で
僕は 出かけた
勝利の 酒を 飲んで 笑った
生きていたってしょうがない
死ぬべきだと 思った
人に 迷惑を かけたくはない
四月、僕は
川のある町に
あたらしく暮らし始めた
水をふくんだ日の光を
吸いこむと、眼には涙が滲んで
黄色い床に積まれたままの
段ボールをつ ....
あなたの手を見ているとき
わたしは時折、魚のようだと思うことがある
別れ際にひらひらと
暗い海へとかえっていく
来た場所も行く先も知らないわたしたちが
誰かに与えられた名前を呼び合いなが ....
逃げ切った
小さく叫んで石壁に
身を潜める
取り出そうとした煙草が
地面に落ちる
うまく拾えない
背後を見る
奴の姿はない
なにが「次はお前の番」だ?
俺は逃げ切った
大金持ち ....
あなたの子孫は
とても大きくなった
世界樹の森で
苗木のように
小さかったのに
投げ捨てた恋の芽は
こんなに大きくなるものか
こんなに
おもかげを残すのか
まちあかりがにじんでいる
考えることが
日々の暮らしを送るためだけなら
まちあかりはにじんだりしないだろう
ある朝の街に泳ぎだすのは
よろこびか
かなしみか
....
数年前は
誰かが私を
語ってくれた
私の歌を
歌ってくれた
けれど長く生きたせいか
今はそれも
少なくなった
私が私の
物語を語るときがきた
私の歌を
歌うときがきた
と
....
きみが跳ねると
青と赤のガラス玉が
ぶつかって
カチカチと音をたてた
秋からこっち
そのままの
藻のプールの水面を
ギーチョンが滑っていく
ほら
音楽室の窓から
ツバメが
透 ....
死を
怖れるなかれ
死は
友人だ
この与えられた生のなかで
何事かを為そうとする者には
空が片方の目を瞑る
女はさよなら
、と言った
沢山の赤い宝石が、道路を転がってゆく
遠ざかってゆく赤い宝石の
笑い声
夜を前にして、消え去ろうという
閉じかけた花の
遺言を ....
落ちていきそうな音楽に
目を閉じて
その浮遊感に身をゆだねる
落ちていくのに
浮かんでるなんて
元気がないから
ぼくたちはただ
夢のどこかに広がる
だだっぴろい草むらに
黙りこくって穴を掘ってる
そんなような
お別れの時がきて、
....
しんだらいい
というのは
新dollarいい
であって
あたらしい
ドルレルが
いい
という
いみで
リスク中立的な
ことばだから
べつに
だいじょうぶ
しんだらいい
....
運動場の
トラックを
規則正しく走る
小学生達
まるで
回遊する魚のようだ
こんなに小さいときから
命令されるままに
同じところを
何度も
何度も
回っていて
誰一人として
....
ドアの前に立ち
ポケットに手を入れ
家の鍵を探していた
古い玄関灯が
暗闇の中から
鉢植えの植物を
浮き立たせている
ふと見ると
合同な三角形で
濃い白色をした
蛾のたぶ ....
空き地の真ん中に
青い椅子が置いてあった
誰かが捨てていったのか
少しだけ古ぼけて
四本の足をきちんと揃えて
誰かが座るのを待っているかのように
倉庫の隅で
ひとつの闇と
もうひとつの闇が
汗をかきながら踊っている
南京錠のこじあけられる
冷徹な音をおそれ
かれらは時折、同時に
....
私は蜜を吸い
毒蛾になって
篝火に
吸い込まれた
けれど
明るいほうから暗いほうをみたのだった
逆からよくみえるということに気づきながら
ぼくたちは暗いほうを暗いねと言い
明るいほうから笑いながらみつめていたのだ
赤いひかりだけが1つ2つ3 ....
ぬるい春の夜
アスファルトの上に
花が降っている
葬儀屋の看板が
ほんの少し口角をあげる
目に見えぬ桃色の貝が
ひそかに息を吸い ....
憎しみが
孤独の中で 渦巻く
寄り道を 忘れた
乳白色の世界を
あの冬の雪だるまを
冷凍庫から出して
溶かした
新しい夏を迎えるために
全部
捨てようとした
もはや逃げ場はない
追い詰められた
袋のねずみだ
1万円が入った財布に
レシートの山
白ナマズの指
ロックがなくちゃ
やってられない
行き場のないホームレス
おんなはおとこをつれてわたしのいえにやってきます
あるときはひげのひと
あるときはとしのひと
あるときはすごくやさしいおとこでした
おんなはわたしをくらいへやにとじこめます
それがさいん ....
呼んだりするし
あいしているし
分類はいらなくて
おそらく実在して
手繰り寄せて
撫でる要領で
一見集中しているようで
投げやりにあつかったり
あのひとのうちで食べた朝メシは
こんがり焼かれたトーストだった
自分ちとはちがうパン
自分ちとはちがうマーガリン
ジャムもちがった
そのなにもかもに違和感を感じて
....
きみのオデコはとがっている、おやすみと言うたびに、やだやだされて、それはちょうど夏の虫だったから、掛け違えたボタンが蝉のように、ポックリ病だ、ぼくはきみを目覚まし時計と間違えていた。
縞模様 ....
きゅうりに背骨は
ないけれど
きみの背骨は
きゅうりの味が ....
くらい魚が一匹
つめたい壁をおよいでゆく
誰かが忘れていった
後ろめたいつくりごとが
ライターの灯りに揺らめく
髪の長い日暮れ
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