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青い 空に
梢がしがみついている
かなしいことは いつも
庭の木の柿のようにみのる
世界の端のほうに 僕は坐っている
つぶれた靴を
見ていると雨を思い出す
ほの明るい 窓硝子のむこう
僕の心が僕の心に変わっていく
その間も絶えず 雨は降り続けている
世界が 大きな空洞なので
水平線が見えた
海が見えた
白い 掻き傷が あるのか無いのか
どうしようもなく なにもかもが
影
倦み果てた貌で
あなたは 眼に映る ....
魚が数匹
日の光になって
頬の上を泳ぐ
問われては 答え
答えてはまた 問い
感情の影に貌をかくして
問われては 答え
生まれてはまた 息絶え
命あるもの ....
何も言わない
読点のような皿を洗う
燃え終えた数本のマッチに
年々似てくる
僕の記憶
日をうけて
影になっていく 木
振動する沈黙 かなしすぎるほどに
決して ....
無害なことばかり話す有害な人
舌先から 論理が涎のように垂れて
皺くちゃのスーツに染みをつくる
キミに足りないのは嫉妬心だよ
そう言われた 丸ノ内線の車内で
他人か知り合 ....
カメレオンの眼は
薔薇に似ていなかったかと思い
検索してみたがどちらかというと巻貝
今し方 ハヤシライスを食い
煙草をすい 部屋の暗いあたり
眺め
ほつれそうな体 仮初の ....
淵にいて
くるくるとまわった
すごく晴れてた
池があった
水に 日もぼうと浮いてた
ぜんぶ本当にあった
淵にいて
かなしさから
....
忘れたものだけ
見ることができた
床に張った
埃 夕日の格子型
蛇口に残る 唇のような水
言うことができた
言い尽くしたことだけを
....
約束の時間にすこし遅れて
寂しさの続きのような場面が始まる
駅舎の街灯に羽虫が 丸く 集る
高架下 ラーメン屋に入る
やがて感情は数枚の貨幣に似てくる
....
日の光の血痕
かさなった眼が ここにない
熱い空 道すじをかすれて
私たちの歌は時間の
壁の裏におちた
川を越えて
戻ってこなかった
砂利になった言葉ならば
ひとつかみにして 気のすむまで
玩んでいられるのだが
駅の屋根に
ふる雪のかなしさ 静かさ ....
あらい浪が
きみの肌のどこかで
弔われている 私たちは
擁きあえる 芒の原にこぼれる
月影に這わせた 指のふしの奥で
掠れた日差しに 傘をすぼめて
貴女の唇にすわりたい
悲しく 梅の花が路を塗る
あさの雨の うその雨の
やがて間遠な 瞼
窓際にいて
日差しが区切れていく
とどめられた 文章
なにか 約束のようなものを
忘れるときのにおいが この世界
なでられ なめられ
めでられ めくられて
いるときに また
硬く 近く 拒むのだった
キッチンで
蛇口で
ぼくじしんのようなあらわれと
いっぽんの ....
ねこが
しみこんでいる路地
空がきれいだ
電線が微かにたわんで
ビルのむこうまでみえる
わたしたちが死んでいくのがみえる
捜すこと
幻視すること
かんがえることが
小虫の群れになり壁を走る
たんに叫びだった声に甦れよ、
すべてのおちぶれた動詞たちよ
素数をたべる男は
きのう 遺体になった
電球がつるつるとともり
部屋は 笑えるまるみを孕んだ
聖なるものは うたわれながら
おおきな 蛇の 腹のなかだ ....
おちている光を
うさぎだと思った
そうきみに言った
商店街の 黴だらけの夜
ぼくたちはネズミだった
もうぼくをすきじゃないと
うちあける瞳を ぬ ....
見えないが それは
熱の蛇が 這っているのだ
かんぜんな 石を湿らせ
なにもかもが黙る
熱の蛇が
這っていくのが見えない
街はいつも 叫んで ....
瞳からのぞくと
馬たちが みえた
日が薄ぼやけ
あたりは冷えて
草の においだけが
ほそながくかがやいていき
わたしたちの
愛はきえた
....
夕方になる
しずかになる
水をのむ
みえているものを
いま 思い出している
喉の奥で きれぎれに疼く
石のシルエット
それは 似ている
....
擦られた マッチ
よる 路地のしかくい
たくさんの 白い足もと
物がたる言葉が
網膜に掛かる
引き攣れる
句読点
東京
透けた卵管が
標識のたかさに浮いて
われらを 孕もうとする
香港
銃声のようにみじかく
中毒のようにながい
発狂が四角に建つ
....
せまい
ことばをつなげた
愛らしきものの
馬鹿らしきものの
井の頭公園
きみからの
電話だけまっていた
かなしさの
退屈しのぎの
....
波間で
花びらを
持とうとする
すごい 忘却の速さで
水のように
貴方の部屋にいた
そのことのすべてを
分かろうとするけれど
とても ....
熱を舐める
終電すぎ 汗のすべりが
愛の五月蝿さをおしえてくれる
置いていった本のように心が
かなしくひかる
こんなにも
あなたの
煩い町に
ふれて
僕は 意味のまえにいた
夕がた
本をよんで
考えることを考えて
きみの眼を 思う
押しつぶした 光が
なんどもまる ....
躰のほとんどを
ねじれた袋におさめて
わたしたちは泣いていたね
はんぶん透けて
はんぶん凝ったような
美しさ 見えかけの 東京の月
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