玩具は既に壊れており
木張りの床に見棄てられていた
夕陽から親しげな香りが溢れ、
窓辺に置いた花瓶に纏わりつく
私たちは 壊れていた 跡形もなく
{ルビ抑=そ ....
金木犀が静かに燈る
花びら一枚一枚が
一つずつ詩を破壊しながら
自らを誰にも捧げず
何物をも説明しない
人間の意味づけを
ことごとく拒絶することから
あの橙色が生まれているのだ
....
変わらず、
愛娘と手を繋いで歩いた
川沿いの遊歩道はあり
愛娘だけ不在となり
果てなく伸び行く
変わらず、
いずれ銀に光る川も遊歩道も消え
巨大な途方もなく巨大なチカラが
噴き上げ ....
世の中には「詩人」という肩書がある。だが、詩を書いていても自ら「詩人」を名乗ることに抵抗を持っている人はたくさんいる。では「詩人」を自称することの何が問題なのか。
肩書というものは社会的 ....
なんもかんも
忘れたくって
働いて働いて働いて
左人差し指が痛い
右腰が痛い
首が痛い
爪が剥がれかけ
擦り傷が増え
冷や汗が出る
女の胸がつぶれる
皮を剥くことばかり求めて、
実の味を忘れた
林檎みたいな私の肌に、
あなたは歯をがりり立てました。
私はその痛みに歓喜し
ちいさな翼を羽ばたかせ
あなたの心のなかの
小さな ....
日曜日なんだから
なんでもできるのに
寝てしまったな 午前中
玄関のまるいスコープを通って出かけたい
ひゅるるとうねった体のまま
ちょっと明日の夢まで
最後に約束を守ったのはいつだろう ....
誰の声? 誰の顔? 覚えられない 自分を責めて塞いで狂気
黒と白 進むためだけの前向きさ求め私は黒に隠れる
訥々とした呟きで始まった歌が絡まり吸い込む涙
大切な人 ....
六月の雨が
育ち盛りのスイカをいたずらに誘う
でも、今年の梅雨は少々しつこくて
早くも冷夏の予感がした
ナスビもトウモロコシも痩せたまま太らない
繁茂するのはスイカのツルと葉っぱばかり
....
太陽の嘘を
夜が暗殺する
一瞬の未来がもう過去になる時のなかで
眠らない傷痕だけ
硬いソファで微睡んでいる
絵のない絵葉書が届く
ことばのない詩が書かれていた
ピアノソナタが雨に溶けて
コスモスはうつむき顔を覆う
山の精気が少しだけ薄められ
ものごとを前にしてふと
過去からの声に手を止めている
....
わたしは帰る
猫の住む我が家へと
服も靴下も脱ぎ散らかし
ひんやりとしたベッドへ
もぐりこむ
鼻先の生温かなけものの匂い
....
左手にヘアアイロン、右手にスマホ。高校生の娘は朝の忙しい時にも、そんな習慣を欠かさない。前髪がそんなに重要なのか、ラインでどんな大切なメッセージがあるのか、聞きたいところだが、朝から言い合いたくない ....
駆けた
夜の夢を
君のために
その熱量は
人生で一番荒いから
足が燃えた
賭けた
指差す方向どちらに
行く方が正しいか
それに答えはないので
手のひらは燃えた
掛けた ....
戯れが過ぎたのか
名月が遠い 待てない心臓が加速始め
この訪れの麗らかさを
深呼吸トクトク鼓動にはもって上体を反らして
螺旋の儚い軌道を静止飛んでいる
ひたひたの心に ....
眠れない夜だったから
架空の国へ出かけた
王位継承
森の魔物
結界の霧雨
本を閉じると
外も
いつのまにか雨
この雨が結界なら
私も連れ去ってくれ
見わたす現実の
....
あんた証明したい
なんにも
嬉しいね卵持ってかえりなよ
釘打ってごらん釘
ぎったんばっこん傾いて
地球も発泡してら
ああ君ら目から艶墨ちろちろ流すが
猫がしどろもどろだね
あんた主張 ....
蒼い蒼い秋の空の下
地の涯から
君の名を喚ぶ
蒼い蒼い秋の空の下
地の涯から
君の名を叫ぶ
叫べども
叫べども
声は届かず
蒼い蒼い秋の空に消えていく
空は遠く
蒼く ....
臨死の正夢が
それとなく
覆いかぶさってくるのだろうか
少年の 青春の 壮年の 年月日と
そして 卒寿となった
ゆがみかけた 四次元が
いまや 逆夢に翻弄されて
夜ごとの枕をぬくめ
....
おとこのこたちが
あいしあうのを みて
オナニー してる
あたしは
この世で いちばん
愛に あふれてる
あふれすぎて
殺伐 そして
とても ホット
ファンタスティックでも
あるわ ....
ひかりのあたる角度によって
ものごとは綺麗に反射したりえらくくすんで見えたりもする
シャンデリアのある素敵な応接間
ある生命は空間を得るために代償を払う
それを得られない一部は
高速 ....
箪笥の奥深く秘められていたいくつかの小箱
おそらく母の物であろう歯の欠けた櫛に
出合ってわたしの心が波立つ
そして 夭折した兄たちの名に混じって
ボクの名が乾ききった小箱
それは ....
夏のあいだ僕らは
危うさと確かさの波間で
無数のクリックを繰り返し
細胞分裂にいそしみ
新学期をむかえるころ
あたらしい僕らになった
けれど
ちっぽけなこの教室の
ひなたと本の匂いとザ ....
八月十五日は 終戦記念日ですが、それは あの玉音放送が放送された日だからですが、
本当の意味で 戦争が終結したのは、七十年前の九月二日だということを 私は今年になってはじめて知りました。
....
政府にとっては
決定事項なのだろう
しかし
国民は
政府の部下ではない
主権は誰にあるのか
「衆」は「愚」なのか?
歩いてくる人の音楽
マンションの音楽
電車の音楽
実際に空気を振動させる音とは別の
抽象的な音楽が流れる
抽象的な音楽は
視覚的イメージによって構築される
細胞のような構 ....
しにがみにあいました
しにがみは おおきな かまをふりあげて
わたしのくびを はねようとしました
おもわず めをぎゅっとつぶると
いつまでたっても いたみがないので
おそるおそるめを ....
きみの取扱説明書をみつけた
ちょっと古びて
もう保証書もどこかへいってしまった
皮膚を剥いでゆくように
すこしずつものを整理してゆく
基本性能だけでいいのだ
死ぬまでにデフォルトの ....
雨は降り続け雨は降り
雨雨雨雨 降り続ける
雨が降り続き雨が降り
雨降り続けて秋深まる
雨雨雨雨 降り続けて
蝉の死骸は濡れ溶けて
濡れ腐る蝉の死骸は空
雨雨雨 只降り続ける ....
いつついたのか大きな傷
裏切った裏切られた
どっちが先にやったのか
今じゃあいまいだ
とても知りたかった
ひどいことする理由
道端の石を蹴るようなつもりだったかい
はなについたことはなん ....
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