職場でりんごをひとつ貰った
婦長の実家が青森のりんご農園なのだ
あっちゅが
「丸かじりしたい!!」
と言うので、洗って手渡すと
にこにこして持って行った
「食べ終わ ....
おやすみなさい
今日の日は過ぎた
明日は親知らずを抜きに行く
二週間前に予約して
あっというまに
今日が来た
虫歯になっていますから
治療したとしてもどうせ
使いみちのない歯だ ....
空想の翼と妄想の足枷
境はあっても壁はない
空と海のように
神学と罪状を彫刻された
流木は風と潮に運ばれる
翼もなければ鰭もない
時折 鳥が降りて来て憩い
流木の節くれだった目を ....
ケンタッキー・フライド・チキンの
パーティーバーレルを
一度だけ買ったことがある
当時、随分と年上のキャバ嬢と
知り合いになって
嬢の勤めているススキノの店
10分900円のセクシーキ ....
土踏まずの深い足裏で
たわわに熟した葡萄を踏みつぶす
たちどころに
赤紫の液体が
{ルビ箍=たが}で締められた
大きなたらいの中でほとばしる
秋の森は
少年と少女の息遣いで色づき
どこ ....
想像してみて。
この柔らかな死体が
何を思って生きていたかを
たとえば
生きている理由とか
翼の意味を考えただろうか
空を飛ぶ機能が失われたそれは
時折はばたく真似事をするだけの
使い ....
まだ 秋に吠えているの?
もう 母になるのだから 色白に染めた肌を粉雪の背景に凭れ
ゆっくり歩んで生きなさい
胸の張りが急速に母になってゆく まだサクランボ坊主なのに
体がのそのそしか ....
詩に関節技をかけられる
ギブアップして時代に媚びたと白状する
詩に投げ飛ばされる
天地回転 ものの見方がひっくり返る
詩に首を絞められる
反則も何もありゃしない
ついには殺されてし ....
ブランコ
息を吸って
息を吐いて
息を吸って
息を吐く
いつも意識の片隅で
緊張している
生きるために
前脚を出して
後ろ足を出して
前脚を出して
後ろ足を出す
....
すっぴんと
化粧したときとのギャップに応じて
化粧品代に課税するという
すっぴん税法案が
国会を通過する見通しとなった
国会周辺では
これに反対するギャル系女子と
35歳独身OL が
....
教えてない昔話をオウムがしゃべっている
あなたのような人は長生きしてほしい
そう素直な人あってのひねくれ者だから
だから九十四歳は悪くない 悪くない
これでも献花のつもりなんだ
アンパンマンを見たことがなかった
なのにアンパン ....
暑さ寒さも彼岸まで
現場帰りの皆さんがクーラーをやたらつけなくなって
冷蔵庫の作り置き麦茶もポット一本が減らなくなって
仮決算の季節です
「いいから着とけ、俺もう入んないし。」
太っ ....
レイラ、振り向いてくれ
朝の光のなかで鳥達は飛び交ってる
待てど暮らせどやってこない福音を捨てて
死が迎えにくる前にこっちへ来いよ
レイラ、振り向いて
最高の晩餐と最高の時間を
お前の ....
記憶の糸をほどく
風景や音や肌触り
縫い合わされていた
いくつもの欠片が
ふたたび熱を取り戻して差し出される
思い出は語られたがっているのだろうか
子供の頃ひと夏を過ごした祖父母の家
....
■■■
■■■ 電車の連結部で
■ ■ シュノーケルの音
■ ■ 渚が車窓から消え
つり革の人々は
相変わらず揺れ
■ ■ 大波小波が
■■■ 電車内の人々の足を濡らして ....
私には二人のにーちゃんがいる
ただならぬただのみきやにーちゃん
と
双子で5つも年上のお花にーちゃん
がいる
憧憬のキアラキアラした念が 翼を広げて飛んでいる
頼もしい にーちゃんたち ....
健全な夕暮れに秋の冷たい風が吹く。
私は人生の喜びを一人の詩人に教わっている。
心の師は人生を達観している。
そのため私は私の境地を再確認出来るのだ。
疲れた頭に師の言葉の数々が染み渡る。 ....
雲海に沈む太陽に心が沸き立つ時、
私はもはや一人ではない。
この道はあなたも通った道。
過去に飛翔する魂を私は許した。
生への鼓動がこの道をゆく。
私の視点の先には常に未来が横たわる ....
たくまずして誰かの憎しみをかってしまう
ほどこうにほどけない結び目
ただそれが君だっただけだ
おそらく罪状はかぎりなく
妥当な理由もあればやや不適切なものまでさまざま
あえてぬれぎぬとは ....
来世も諦めることになった
エプロンをつけたおじさんのような
がらがら声のおばさんのような
二人組が立ち止まり
暑いのか涼しいのかさっぱりわからないねえと
言っている横を
私はTシャツ一枚で通り過ぎていくのだが
....
朝焼けと茜空の間に
彩(いろどり)が溢れ
茜空と朝焼けの間に
暗闇が横たわる
少女はその秘密を知りたくて
彩の一つ一つを呼び出しては
新しく命名し昼の詩を
暗闇の底を探っては
言葉で照 ....
「ねえ、これは骨?」
チキンナゲットを食べ慣れているお前達に
フライドチキンを与えたら
飢えたライオンの子供のようにそれを貪りながら
何かを思い出したように下の娘が訊く
「そうだよ。 ....
底から
蒸発した
温かい水が
蓋裏で
冷たい水になる
ほんの少し
傾けただけで
それは
ふたたびのしずくとなって
ほとばしる
涙の成り立ちを
まぶたの裏で描きながら
わ ....
挫けそうな心に運命が扉を叩く。
足音を忍ばせて私の部屋をうかがっている気配を感じる。
私はしばしものを書く手を休め煙草に火をつける。
天井に立ち昇る煙の中にポーの大鴉が浮かび上がる。
....
嗚呼朱く赤く紅く
秋に明け暮れ飽くことなし
移ろうものこそ美しい
去りゆくからこそ愛おしい
不変の美は仮庵から
渡り鳥のように飛び去るのだ
文字の檻に閉じ込めるなら
ソレハヒトツ ....
遠く
離れたままで
聴こえない
聴くことのできない
あまりにも
薄くのばされた夜
わたしたちは
南回りでまたたいている
天球儀は
魚眼レンズに切り取られ
森の陰影に
ふりがな ....
平凡な沿線のこの街に
夕暮れが密度を増してゆく一刻
零れ落ちそうに客をのせて電車がレールを軋ませ
商店街は夕餉の想いに満たされて
帰ってくるあるいは帰ってこない主人を待つ願いも時間が経 ....
私が子どもだった頃
十二色のクレヨンの中に「肌色」があった
その色を使って絵を描いていた
黒いクレヨンで輪郭を描いて
肌色で顔の中を塗りつぶす
手も足も全部肌色を塗った
何も考えずに無 ....
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