白く煙る街
追いやられた通り雨
きみたちはあまやどりをしていた
廃屋からきこえるメロディー
甘く官能的にせつない果実
雨音がいまも耳に残って
すでに誰もいない
....
煤けた屋根裏部屋でまだ見ぬ宝物を探すような胸の高鳴りを感じる。
僕はトム・ソーヤであり、私は赤毛のアンであった。
一方に父方の威厳を、また一方に母方の愛情を持つ感覚。
目に見えないものを見、聴こ ....
お昼休みの中庭に
理科部の男子が
窓から放したハムスター
クローバーをむしゃむしゃ食べた
タンポポも食べるよって
誰かがいった
ストローみたいな茎のはじから
食べていって
....
いつか星のきれいな夜にきみと東のそらをながめていた
銀河のはしっこから星がもれおちてきて山の斜面に
まるでとつぜん咲いた花のように青く白くちりこぼれた
星のかけらを幾片かぼくらはポケットに ....
130924
ケミカルシューズの紐が解けるまでが勝負だ!
見得を切った連合軍対枢軸軍の狡猾な切り崩しが続く
非戦闘員 ....
あの日脱ぎ捨てた古い自分が
心の隅でそのままになっている
糸の切れた人形のように
死よりも冷たい生者の顔で
ポンペイのように時の塵に埋れ
欲望の形に空洞化した遺骸あるいは
まだ温も ....
いつもすでに記憶だった夏の日に
俺は裸体を晒した少年少女達と
沖合を鳥が群がる海を見たかったが
だれひとり気付かぬうちに
海原を舐めて広がる火の言葉に焼かれた
熱気だけが渦巻く無音の嵐に ....
わずかに赤を含んだ
初秋のねこじゃらしが
風にそよぐ
そよがれて
よみがえってくる
植物ではなくて
あいつらのしっぽだった記憶が
猫が
ねこじゃらしの横を
素通りできないわけは
....
午後六時十五分頃の
日に焼けた街のことをきみは歌いたかった
八月……
その燻すんだ終わりにむけて
けれどもきみの細い首で
ネックレスが曲がっている
飴色 ....
肖像画の視線にパリの焦燥と倦怠を感じる。
日々の疲れが重くのしかかるように絵画の中の瞼がその眼光を弱めてゆく。
彼女の視線の先に映っているであろう私の顔はいつしか歪み、
誰に語る訳でもなしに ....
ねじられた
つぼみは
夜のさざなみに
ゆるゆると洗われて
空が
ほんのりあけるころ
星の形に開きます
命、うすむらさきに笑ってる
私の心も
ほどけてゆきました
一筆書きで行けるとこまで行くつもりの眼をしている
言わないでいたダジャレを口にした奴がウケている
雪だるまは旅に出たことにしました
本日は
絶好の洗濯日和
見上げる雲は
穏やかな光に浸されて
へたくそな君のハミングが
靴下とシャツの森で揺れる
色とりどりの洗濯バサミが
タオルと枕カバーの ....
繰り返す毎日
何度も同じところを回り続けるペダル
チェーンでタイヤとつながって
前に進んでいく
毎朝同じ道を行くとしても
繰り返す毎日
いつも同じ時刻の電車に乗って
早足で乗り換えを ....
誰かが犠牲にならないといけない
そう考えるようになったのは仕事を失ったからかもしれない
あの日も同じようなことを考えていた
巡る空想のなかでぬいぐるみは道化師と暮らし
少年は日々道化 ....
それから
すべての君の中から僕のすべてがいなくなってしまえばいい
それから
ふつうになにげに生きてゆく
それから
今日はやたらと月がきれいに見える
とかは気のせいで
ふつうに ....
あの日、
そうです。あの日からわたしは詩をつ
くれなくなった。何も浮かばないので
闇が静かに明けてゆくのを待っていま
す。ほら、ありふれているだろ。君の
言葉は素晴らしい。必ず朝を呼びすべ
....
天気予報が
いい具合にはずれて
空に陽が差してくる
中学校の校庭
トラックに引かれた真新しい白線
「出陣」の文字が描かれた入場門
砂埃の匂いがくしゃみを誘う
テントの下に置かれたキャ ....
サーカスも消えた広場に
日付が変わった南瓜の馬車
燃え落ちた隕石
既に 青くない地球
十二色のクレヨンを握り
極彩色のテレビに見とれている児
やり過ごされていく毒の風に晒さ ....
ダダ漏れのDark Matter 鉛色の重力
街を歩いてもアスファルトに走る無数の亀裂
から滲み出てくる闇を見つめるだけだ
ああ この皮膚がすべて剥がされても
感じているか ....
「お父さんは、いつもむっつりしてたけど
家族は結構大切にしたんだよ。
日曜日の度に色々なところへ
連れて行ってくれたんだから。」
週六日精一杯働いて
やっと巡ってきた休日なのに
....
たったひとつの科白で終えるとき
誰もいない薄暗い部屋を飾ろう
もし手向けられるならば
二度と咲かない蒼い薔薇がよく似合う
使われない硝子が棚の底に
染み付いた煙は放置され
黒い黴が支配 ....
雨は平等に降りしきる
あなたにも、わたしにも、
だけど、わたしには傘がない
気が付くと私は広大な庭園の前に立っていた。
そこは薔薇の花で埋め尽くされ、屋敷へ続く道は整備されてはいなかった。
庭園の向こう、遥かなる屋敷の全貌は見えない。人間を死の果てに導く薔薇の棘が道を ....
したたかに濡れたひな菊のとなりで
腐り果てた一羽の雀
受け止める土は泥のようで
月の光も届かない
空家と廃屋に挟まれた僅かな路地のことだった
塗り潰されたような目
塗り潰された ....
お義母さんから昨日メールがあった
ここ2・3日夏が惜しんで最期の力を振り絞っているから体調大丈夫とのこと
若くして最愛の伴侶を亡くしながら 女手一つであの人を
逞しくそして優しく育て上げ ....
かなしさは夜のなかにある。
体育の時間、ぼくはだれともペアをつくれ
ずに、みんなが踊るフォークダンスを眺めて
いた。それは濁った河を渡る水牛を眺めるの
....
深海魚が太陽を見る日
光のパレットナイフが
海鳴りの弦を切断する
青い狂喜で上塗りされ
それが比喩かも忘れて
人がひとり墜ちて行く
閉ざされた貝のように
白く饒舌な泡に抱かれ
記憶 ....
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