漂っている
山人

漂っている
田の畦の
名もない雑草の根元に
捨てられた溜め池の
透き通る水の中に
細い目で鳴くアマガエルの喉に
咽び泣くような曇天の中の
炭焼き小屋の煙の中に
確かに漂っているのだと思いたい

石が石で終わるのは
あきらめた夕暮れに似ている
敷かれた道はひび割れ
雨水を染み込ませている

遠く重い呪縛から
糸が解けるように
開放させてください

雫る先の
かすかな四十雀の細かい動きは
澱んだ空気を彫り進む
暖気された空間が生まれる
少しだけ光は漂っている


自由詩 漂っている Copyright 山人 2011-12-05 05:56:21
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