いつからか

 私のまわりを古びた影が踊るようになった

 冷たい唇を
 心臓にぴったりとはりつけて
 やがて
 血汐をすいとってしまうのではないか


   だが
    ....
 その視線はどこを見るでもなく
 誰を みるでもなく
 そして何に
 留まるでもない

 体になじむポロシャツと
 洗いざらしな作業ズボン姿のおじさん

 きっとシルバー人材センターか ....
ネズミにかじられた日々
錆びた釘
二階の楽園から逃げ出して来た蝶がテーブルにとまっている
青い翅に書かれた詩
息と息の間の甘い舌のもつれと苦い錠剤の散弾が
古いR&Bのむこうとこちらを煙のよ ....
いまとなれば
遠いおはなし

うすい膜のなか

半透明の階段をのぼる
(あしおともきこえない)

くうきの浸透圧で
うかぶ猫の蒼い眼が揺れる

水の音が、間隔をおいて、したた ....
 風の中に雨がむせび

 雨の中に女がむせぶ

  長く長く
   細く細く


 胸の中に
 容赦なく風が吹きこむ度
 
 血潮のいとおしさに女はむせぶ
 
   過ぐる日 ....
誰にも故郷があって

それが心の拠り所と呼べるものでなくても

またその地を踏んでみれば 何か思うものがあって


私はなぜだか 駅に降りたら涙が込み上げてきた

帰ってこれたことが ....
 地元走るローカル線を
 無人駅で降り
 山裾へのぼる細い道で足を止める
 通りすがりの一軒家

 枝葉被った鉄の門
 奥には木造の二階建て
 厚地なカーテンひかれたままの窓
 
  ....
頬をなぶる風 
ひるがえる恋情のように
雨を呼び
低く速い
雲は濃淡に光をにじませて

空のようにこころをしぼれるか
燃えさしの骨をひろえるか
瞑った太陽の頬をなぞるように
数える指 ....
 ある人を喜ばせる役目を終えて
 そのメルヒェンを忘れ果て
 路上に居る様には見えなかった
 マスコットキャラクターの小熊

 目的のある足は目も触れず通り過ぎて行く歩道で
 しゃがみ込ん ....
 
 
 既に色褪せて重たく落ちている花片を
 踏みながら歩む林の中は
 もう黄昏ている

 椿林の木立
 わずかな隙間から
 聞こえる波濤のどよめき

 腰をおろしてみなさい
 ....
幻灯機に噛まされたスライドがまた一枚語り始める
手探りである気がする 壁に阻まれて進めないから
薄墨色の夜に無様に徘徊する すがたばかりだった
      冷ややかな輪郭に沿って指先が触れる、
 ....
ゆうぐれ、ぼくの家のすぐ目の前にある小さな公園、だいぶ涼しくなってきた風、古いブランコがほんのすこしだけ揺れている。その座板のうえに置かれている、子供用のリコーダーには、しかし老いの枯れ葉が何まいも詰 ....  積乱雲を想って
 紫の渦あじさい
 順呼気に澄む
 ふくらみ過ぎた花と緑は
 まるで巨大なくるみ型の舟
 或いは脳みそ 
 私はミソスープに伸ばした腕を
 食卓の
 小鉢に触れたいと ....
 「うまそうやなぁ!」
 いきなり頭上から降ってきた補佐の声
 昼休憩時
 開いたわたしのお弁当

 ほうれん草の胡麻和え
 切り干し大根の煮物に出し昆布の千切りまで入り
 かぼちゃの含 ....
 その日は夕方までに出張先を二箇所回る予定だった
 庁舎の駐車場を出発した公用車のバン
 
 走る 湖岸道路から
 雪化粧した比叡の山陵が見えて
 ハンドル握る主幹へ助手席の私はたずねる ....
 赤茶けた りんごの芯を

 みつめていたら

 なにもかもが


 こわれかけた 白さに

 
 その薄さよ


 わたしは

 あなたの胸を離れなければならな ....
 「朝顔を咲かせてきたの。」
 始業時間のチャイム鳴る前、
 いつもより遅れて出勤した私は
 理由尋ねる彼女へ答えた

 君よ 開け
 線路わきの道沿いで
 私の手が一輪の花へ伸びた
 ....
○「相続」
今相続が大変である
ふだん面倒見ていた子どもであっても
たくさんの書類を書かされて
くわしく審査されるということである
現金であっても
すぐにはおろせないという
危篤となった ....
 日本海に春の来た時は
 静かに 静かに
 目をとじてみると
 生命ない小石が激しい息吹をもらす

 波 寄せる毎
 丸くなり
 カラカラ カラカラ と
 妙に乾いた音たてて
 踊り ....
自分の人生をいきればいいのだと

私が受け入れられたのは かなり後のこと

そしてまた きっとまた

見失うこともあるだろう

だから 心に

心に小さな灯火を




 ....
 撹拌された
 街の音や願いが
 クラシック風の音形をなぞる

 やわらかな丘の群で拾われる古代
 おしゃべりな小鳥
 衰弱しかないその聲に
 仮託された笑みは
 発点してしまえばいい ....
 窓に触れたグラス
 あたたかい湯気は
 あまいかおりにみちて
 ふるい指のあとだけ
 けぶれずいました

 扉の向こうはいつも雪
 雪がじまんの町だから
 子どもらはいつも元気で
 ....
落葉果樹に比べてミカンは
こう切ればこう枝がでる
とか
果実は何センチおきに
とか
そういうふうにきちんとは行かない

なので
落葉果樹に比べて
ミカンはいいかげんなやつだと思われが ....
落胆を胸元からのぞかせて
あやめ色
切る風もなく
地をつたう眼差しに
まろぶ木漏れ日
翅ふるわせる
仰向けの蝉の腹は白く

罌粟のつぼみ
空き家の庭でふくらんで
子音がとける死んだ ....
 
 ジャンジャン横丁を
 制服姿の女子の二人乗りが突っ切って行ったのは
 もう十数年も前になる

 後部に座る子の脚が長いのか
 見送ると大胆に
 自転車の幅からすんなり伸びる白が左右 ....
 
 JRの車輌、
 扉の傍に立った私の向かい側にいて
 身を寄せ合う二人の男性
 
 つい見惚れてしまう私の目には
 まるで月のもと
 ただ蒼白く静まりたる世界で
 澄んだ瞳に引きし ....
 庁舎の旧館は通風が悪い
 配席の奥まっている課長のデスクまで
 冷気は届かないから
 窓を 通常開けておきます

 出張先からまだ還らない課長に
 明日午後の会議の資料を机上へ置きに来た ....
 朝のスープの
 セロリの香り

 悲しかった様な気がする昨夜の夢を
 おぼえていない 朝の靄
 一匙ごと かるくスプーンを動かしていると
 一口ごと すくいとられて胸の中へ流れこむ

 ....
 六月はもう
 むし暑く
 医療用コルセットを巻くと
 腹部が汗でむれる

 窓の外を見ても
 空はどんよりと深い水の色
 濃すぎる緑に
 むせ返りながら
 ものうく

 大気は ....
 ある晴れた日に一軒家の庭で
 赤い五枚の花片をしっかり開く大きな花を
 母と見たのは昔の話
 花の名前が思い出せずに 覚えた小さな胸さわぎ

 茎が真っ直ぐに伸びた葵科の花
 「この花は ....
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