薄群青のみずうみに
なびく帆が、波に溶け込む光のなかへ
すべる様に遠のいていく
老竹色した山並みにいざなわれる
あのヨットの彼方には
岸辺など無くて
爽籟の湖面がどこまで ....
遠くで
洗濯機が動く音を聞きながら
二度寝を楽しむ
夜明け前
目のよくない夫は
迎えにきてくれた友達と釣りへ
ほんのすこし
ホッとする
この気持ち ....
ぬれた土におわせて
立つ光 単衣透かし
いたむ秋桜や朝顔に
掛ける眼差し
千代紙を破るよう
縫い閉ざされた叫びに
こころ添わせてしまうなら
もう
恋でいい
つめたい火に炙られながら ....
白線の外側には
出られなかった気持ちを
服のポケットで押し砕く
(一糸乱れないように)
フェンスの向こうにある
夜明けという抱擁の残酷さよ
迷い子の蛍たちが
溶けたチョコレートを ....
汗で化粧が剥げてしまうから
簡単に済ませていた夏
だから秋は丁寧にメイクする
朝の気怠さで
まだ曖昧な輪郭の私は
鏡に映る私という存在と
ゆっくり呼吸を合わせていく
....
一年に一回するかしないかの化粧
去年買った化粧品は
10年くらい使えそう
ちゃんと痩せて
ちゃんと化粧したら
綺麗だよ
と、言ってくれるひとも居はするが
何でそこまでしなきゃいけ ....
頬杖をついて
窓から夏が終わる頃の風
リモコンが息絶えた
まだ若かったのに
もうチャンネルを
変えることもなくなった
言葉にすれば
命は軽くなる
そんなことばかり
いただ ....
秋、ひとつ
秋の夕べは鈴虫が鳴く
静止する赤トンボをぬらす
虹かける公園の噴水を
ながめ芝生で寝ている
少年のとまどいを笑顔にかえる
木の枝に吊るされた果実より
甘ったるい嘘みた ....
留守居せる娘の家や冷房裡
秋の昼強き日射しに出でもせず
海峡の眺めさわやか高速道
ひと月ぶり庭の秋草生ひ立てり
秋刀魚買ふ今日の魚は太り気味
秋風が記憶を連れてくる
夢の中の貴方を手離し難く
朝の寝床から起きあがれなくなる
福島駅で別れてから
毎秋そう
別れを告げたのは私だけれど
きっと神様が私を
貴方から遠ざけた ....
海一枚めくると鈴生りの想い 孕んだ仕草が風に弾け
笑いの花びらを嘔吐するわたしには静寂が投函される
現実は一匹の魚のようで眼差しの中でいかようにも踊るもの
かわいた泥の身体を選択する者たちにはい ....
花の時期を過ぎれば
気にも止めないでいた
児童公園の隅にある大きな藤棚
敷かれた石畳に
風雨で煤けたコンクリートの
ベンチが三脚
赤茶けて錆びた鉄の藤棚の下で
ち ....
―――― 寝床にもぐりこんでくる寒さに
猫たちの寝息は、
安堵のぬくもり
朝霧の涼に
季節が書き留める
秋をあつめる
忘れ去られていた 彩を
想いだし
少しも変わらないは ....
吹きあげる風の中に
桐の梢は ざわめいて
生暖かい涙をこぼす
その下に立つと
はるかなるものへの憧憬と裏返り
抑えかねる寂しさ
赤い血汐をもっている
私が夜を恐れて
....
暮景の湖で音もなく
どこまでも拡がる雨の輪が
いく重にも折り重なった所に
游いでいく女の亡骸
小舟を出して眺めていると
辺りは何も見えず
静かすぎる
奇妙に笑いを ....
入り江にて
大阪から車を走らせ、片道三時間。途中のサービスエリアでスマホを確認すると、通知に追われる日常がそこにあった。
やがて夜が明け、寂れた港町を抜けると、道は雑木林と露出した山肌に ....
ああ いい気持ち
日の高いうちから
スーパーで買った鰹を炙り
新潟の純米吟醸を冷で飲む
今日はよくやった
早朝から頑張った
夫の用事で
行ったことのない羽曳野市へ
....
ため息の一つもこぼす
残暑が根を張る
帰り道
会社の敷地の植込みで
目を和ませてくれる
萩の花風
たくさんの
紅紫の小さな蝶たちが
(おつかれさまね) と
や ....
ほおづえをついたら
消えるくらい細い 月だね
知らないあいだに
こおろぎが まぎれ込んでたから
窓をあけて 夜に帰したよ
りーん あちらから
りーん こちらから
遠くても 呼びあ ....
空には羊雲
空の底には私
私のほほにそよ風
そよ風に
無限の光
思い出して
あのまなざし
まなざし深く静か
遠く
遠くて近い
魂
あのまなざしの魂
まなざしの魂と
近くて遠い ....
夕風に舞ってくる
モンシロチョウの薄黄色
一雨ぬれた秋草に
もう 雲間から
淡いの光が差している
こおろぎたちの戯れる
エクスタシーにポツンと一人
置き去られ
三 ....
桃谷から梅田へ
夕方5時過ぎの壮絶な夕焼けに
何故か泣けてきたんだっけ
声を出さずに泣くのは得意だったから
誰も気づくひとはいなかった
世界を美しいと思ったわけではない
茜色に感動した ....
なんでもない時間の
どこかで 広州空港の
窓ガラスは 赤く
遠くで 点滅する
寝ていた 僕は
椅子の上で
点滅する鉄塔の趣は違う
日本で見るものと 同じ色なのだが
同 ....
厳しい、
木枯らしに容赦なく吹きつけられて、
まるでうす汚れたページのように捲れあがる、
そのひとつひとつの、
とても白かった羽毛、
無残にもちぎれてしまった、
白い夢のつばさが、
その ....
人生は自転車に乗るみたいだと
ふと想った
始めのうちは
後ろを誰かに持ってもらい
訳もわからずただこぎつづけ
バランスを取れるようになると
その手を離され
ヨタヨタしな ....
道路工事で
職場前の道は渋滞
ブラインド越し見える作業員の人たち
若い人が一人もいない
砂塵と高湿度の靄の中
上下するヘルメット
ドア一枚隔てたこちら側は
....
誰もが知る肌に
夏の落ち着きを失った季節は、
陽のわずかな傾きに
秋を告げる
沈黙をやぶる囁きに
自問自答をとめる
潮の香りは、さやけき潮の音
反射する 陽炎のひかり
....
妹の娘は
私に似ている
彼女が産んだ赤ん坊
男前ではないけれど
愛嬌のある顔
知り合いの可愛いおっちゃんに
似ている
彼は私を一生懸命見つめてくる
私が何者か分析している
....
土から顔を出した芽のように
意識の端にまだ眠りの殻が残っていた
風を孕んで色あせたカーテンが膨らむと
どちらも淡い光と影
すべるようにすばやく表情を変えた
あなたの顔にはいつもこころが映る
....
雑木の密生する土手の外れに
一本の柳の木が俯いて
午後の暑熱を滲ませる貯水地の水面を
のぞき込む
鳥も来ない
辺りに虫の音の靄る静かさ
濃い藍藻に覆われた沼底でまだ
....
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