溺れていく夏の海の傲慢を乗り越えて、原色
の光景にすべりこんでいく。速度を上げろ。
減速してはいけない。止まってしまったら、
たちまちにして恐怖がおまえをとらえるだろ
う。夏に生きる恐怖。夏に ....
放課後のプールサイドに一人きり石を投げれば割れる太陽


まだ細い腕もいつかはヘラクレス鏡にうつる半裸少年


肝だめし墓場を歩く君とぼく怖くないよと結ぶゆびさき


花火あがる綿菓 ....
夜の雨を燃す火があり
風をつかみ
家を鳴らす
屋根のかたちが
曇に映る
明日の水を知る花の群れ
遠い音を見て動かない


鼓動と鼓動のつながりが
水平線を巡っている ....
学校を卒業して
実家に戻った君から
普段と違う調子で
不意に電話が入る
ずいぶん遠い町に住む君と
昨夜同じ受話器から
おやすみと言ったばかりの僕は
醤油の有名な町で
働き暮らしていた
 ....
初夏の雫を集めた、里芋の
透明な葉脈の裏側で
夏風の子が
小さな産声をあげる
まだ、うまく飛べない

棚田の{ルビ畦=あぜ}に沿って
緩やかな曲線を描くと
早苗に浮かぶ蛙が
水かきを ....
  (誰かが泣く夜の 月は足跡だらけ)


夕立の30分後の車の下の
猫 濡れねずみで
のの字にくるまり
もうすぐ月のやって来る夜


あの子の心根から
零れ落ちましたよ リン と ....
そのとき奇跡を初めて信じた
この世に無駄ないのちの誕生はひとつも無いのだ




あっ、食べたね
その肉はさっきね、
やわらかく やわらかく揚げたんだよ

ああ
カリカリのドッグ ....
さびしくなったら
花咲く野辺へゆこう
ごらん
{ルビ凌霄花=のうぜんかつら}に蝶がぶらさがる
気が付いたら 私は生まれていたので
思い出を海辺まで運んでは
昔の写真を見せられて それが私の
こども時代の姿だと言われても とても
私とは思えなくて
昨日の思い出しか食べる気になれず
海 ....
   {ルビ異花=ことはな}の{ルビ雲夜=くもよ}にしんわりんと咲き


翼よ
きみはなぜ
はたたくのか
熱く青くはためくからだ
その空間を根幹となし
風の性霊を動力とするためか
花 ....
はじめて海を知ったのは
函館山の東側、岩だらけの海岸でした
あちらこちらに見える対岸の
私との間は早波で仕切られ
たくさんの潜水艦が行き来しているのだと
おじいちゃんに教わりました

次 ....
      ――Sに



世界は美しいと感嘆する前に
やらなければならないことがあって
誰もがそこへ向かって走っている
完璧なソネットなど書けやしないから
俺の言葉はいつだって
掘 ....
ひとたびの雷鳴を合図に
夏は堰を切って
日向にまばゆく流れ込む

其処ここの屋根は銀灰色に眩しく反射して
昨日まで主役だった紫陽花は
向日葵の待ちわびていた陽射しに
少しずつ紫を忘れる
 ....
川で 手を洗おうと思ったのは
いたずらに食べた桑の実で
汚してしまったから

新しいランドセルが
川を覗き込んだ後頭部を倒す
沈んだ 目が水を見る
手をのばした
びっくりした友達のいる ....
雷鳴に少し怯えて
ようやく雨が遠ざかると
いつしか黄身色の月が
丸く夏の宵を告げる

湿度が首筋に貼りついて
ついさっき流れた汗を思う

狡猾な二本の腕を
互いの背に回して
策略の ....
  日の出


小鳥はまだ明けそめぬ闇のうちから

啼き始める

辺りを憚るやうに

ほとんど囁くばかりのくぐもり声で

それは天与の美声を押し殺した 呟きだ


野の鳥よ ....
めろんの翠が涼しい頃
強引な若さだけを連れて
新しい部屋を探したわたしが
照れながら甦る

必ずしあわせになるのだと
啖呵を切って
飛び出した古い家
裏付けるものなど何も無く
ただ
 ....
すぎていくものに吹かれて
川辺で季節におびえ
一掴みの名も知らぬ萱よりも
かほそくゆれ
ただ老いていくことに
腐っていくのでしょう

笹舟のように
未来にむかってちぎれていくものが
 ....
夜 眠ろうとすると
世界中のあちこちから甥がやって来て
カブト虫を探してくれと言う
逃げてしまったらしい
眠くてもしかたがない
夜はまだ長いから
大勢の甥たちと一緒に
カブト虫を探してや ....
「海まではあと2時間はかかるからスイッチをぜんぶOFFにしとくの」


扇風機だせば宇宙人がやってくる黒いかみのけ黄色いはだの

温泉は自宅の風呂とは違うからはだかの歌は真夏の空へ

 ....
時に溶ける 秘雪崩の かすみ
地の 起立 に ただれる 脈

赤い水平の風 蕾 咲く 眼に
伏している鎖の涙 絡む 微笑

せきとめ続けた 光の りん光
射りこまれた 花びら 触れて
 ....
ミサイルを撃ち始めるとは思わなかったので
ことのなりゆきに とまどう

中国へ弟が二ヶ月ほどいるのは
会社の仕事だし
行ったばかり

北朝鮮への経済制裁がはじまった
それは 敵地という ....
弟が二人いる姉など
子供の頃は 子守りをさせられ
遊べるくらい育ったら
キャッチボールなど 男同士だし

大人になっても
たまにラーメン食べにいくとか
うちで 飲むとか
まず 誘われな ....
かつていた冷凍都市を思い出すような小説書いている初夏


再放送されてる温泉番組を観ているぼくを見ているかか氏


転校生だったあの子は元気かなどおんどおんと胸打つ花火


 ....
天空を 日が巡る
かげ ひそまる

大型バスを避けて 僕は路地裏へ
しみったれた茨 時を違えて咲き誇る
一輪の薔薇 その棘の在りか
観光客の舌先で淡くとけてゆく
色とりどりのアイスクリー ....
 あなたの瞳は美しい
 四囲の変化や季節の移ろいにも
 敏感に反応し
 あますことなく映し取ってしまう
 だからぼくは あなたを見ていさえすれば
 それでもう
 世界を手に入れているよ ....
去年庭に埋めた
枇杷の種の、
芽が出るのを見れなかったこと

家に帰ると、
朝、家を出たときと
何一つ変わっていないこと

揃いのコ−ヒ−カップが
片方だけ古びていくこと

「バ ....
水面のやさしさを信じ
身を投げる木の実の
沈んでいく運命の先を
知らないかのように
綺麗な音色だと
美邪気に笑う君に
かなしくなる

西の雲は入り日に
焼かれるからかわいそうと君 ....
詩はいつも夜明けの相貌
足の記憶をひもとく余裕もなく
私は迷う
自らの足を踏みつけながら
置き去りにしてきた
枯葉の午後を追う
踏破せよ
惑いの道
あらゆる塩に咽びながら
入眠の甘さ ....
  木はただ黙ってつっ立っているのではない




     両
      う
       で
        を
  木はかならず      立 っ て い る
       ....
ふるるさんのおすすめリスト(5825)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
溺れていく夏の- 岡部淳太 ...自由詩16*06-7-21
【短歌祭参加作品】半裸少年- 石瀬琳々短歌24*06-7-21
水と響き- 木立 悟自由詩706-7-21
駅・湯浅- たりぽん ...自由詩14*06-7-20
夏風の子- 佐野権太自由詩29*06-7-20
月と黒猫- 千月 話 ...自由詩13*06-7-19
いのちの糧- 銀猫自由詩15*06-7-19
- 石瀬琳々自由詩9*06-7-18
- 天野 碧自由詩306-7-18
雲路- こしごえ自由詩17*06-7-18
海を知るか- たりぽん ...自由詩12*06-7-18
出来損ないの七十行- 岡部淳太 ...未詩・独白7*06-7-17
百日紅の下で- 銀猫自由詩19*06-7-15
- 砂木自由詩10*06-7-15
月と獣- 銀猫自由詩21*06-7-13
日の出__蝶__あさがほ__……- 杉菜 晃自由詩6*06-7-11
翠の夏- 銀猫自由詩16*06-7-11
揺れもせず、ただ君と- たりぽん ...自由詩14*06-7-9
世界中の甥- 岡部淳太 ...自由詩15*06-7-9
【短歌祭参加作品】愛のない慈悲なんていらねえよ、夏- たたたろ ...短歌8*06-7-9
涙珠の静謐__粒花- 砂木自由詩7*06-7-9
まいる- 砂木自由詩6*06-7-6
いってらっしゃい- 砂木自由詩10*06-7-4
【短歌祭参加作品】あしたも夏でありますように- 本木はじ ...短歌14*06-7-3
_時祭りの_廃墟- 水無瀬  ...自由詩4*06-7-3
そして_あなたの中へ- 杉菜 晃自由詩6*06-7-2
からっぽ- ユメアト自由詩4*06-7-2
ホタルブクロ- たりぽん ...自由詩16*06-7-2
迷路、あるいは疲労した道- 岡部淳太 ...自由詩9*06-7-1
- 杉菜 晃自由詩4*06-7-1

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