海に近い砂の丘から
無数の骨が突き出している
かつてここで倒れた巨大な生き物の上に
浪に運ばれたものが積み重なり
石でできた枯れ木のような
蒼白い骨の森を造った
海からの風に ....
私の葬式がささやかに執り行われ
友人らが久しぶりに集まった
青空には透明な道が果てしなく続き
新緑に人々の喪服が映えて美しかった
一滴の涙も流されず むしろ
想い出を懐かしむ声で
小さな式 ....
十六歳の感傷に腰掛けて
ぼくは詩を書き始めた
ぼくの孤独といえば
せいぜいコップ一杯分の涙ほどしかなかったけれど
二十億光年の彼方の星からの引力で
コップの水が波立つことを幻想するのだっ ....
君に出会って
感情は高ぶる為にあるのだと知った
君と話して
初めて
人間の声を聞いた
君と見つめ合って
今まで僕は
何も見えなかったのだと知った
君に触れて
僕は一瞬
....
気がつけばいつも
君はそこに立っている
君は待つ
遠くに地鳴りを聞きながら
まだ秋には早い日
目の前をつうっと
赤とんぼが通り過ぎていく
同じ高さにある地平線を目指し
旅立っていっ ....
しあわせは
すりぬける風
ひとときのやすらぎ
明日のことは
わからない
しあわせは
すくいあげた水
たやすくこぼれるけれど
歩けるぶんだけ
あればいい
....
星のように
はじまりと終わりが溶けあいながら
夜の水は空を巡る
岩と岩の間から
枯野と土を錆つかせながら
夜の水は流れ出る
ゆるやかな傾斜に囲まれた道が
少しずつ雨 ....
カナカナが
鳴いていた
紅の夕日が沈むのさえ
浸れない私だった
いつの間にか
蚊に刺されていて
皴の多い手は
なかなか美しくなれないでいる
自分だけを愛していた頃は
....
踏みつけた木の葉の裏に隠れてる虫さえ愛せるくらいにひとり
冷房のファンに揺らされ落ちる葉のむなしさだけは凍り付いてる
あの雲にかかればあの葉の色だって一撃なのよ だからわたしも ....
悪い子にはなれなかった
投げやりにほどいた長い髪を風になびかせ
夏雲が縺れあう丘の空の下
夢を{ルビ歪=ひず}ませて
立ち尽くしていただけ
「君」がきっと街からここまでさがしに来てくれる ....
渇く渇く渇く潤う
行き止りのない道を
いつまでも
忘れていることがあるにせよ
それは帰れない{ルビ道程=みちのり}であって
忘れていることなど何もないのだ
あどけないうすい影は
....
愛している
と
伝えたかった
でも
そんな重たい言葉を
口にしたら
すべてが消えてしまいそう
で
どうしてもできなかった
想いは深く
心に残されたまま
ふと
気 ....
静かすぎるよって
背泳ぎをしながら呟いてみると
空には立派な
夏らしい雲
陽に焼けた
男と女の睦み合う
そのすぐ横を泳ぎ去るとき
波立つ水から
微かではあるが
女の性愛の匂いがして
....
恋人よ
その安らかな寝息をまもれるのか
わたしは
同じ所に{ルビ止=とど}まっていられない
飽和した
硬質な怠惰の
夏の深奥に
ワイシャツが青く干されていて
ノイズの走るレコードが ....
金魚鉢かすめる涼風の行方知ってか知らずか手招きの夏
逝く春の背中押しつつ背中からはじまるアブラゼミの{ルビ時間=いのち}よ
きみがたわむれてた波ならひとすくい両手ですくって ....
窓から窓のかたちの風が来て
わたしの前に箱をつくり
ゆうるりゆうるりまわりながら
冷たい心のありかを示す
あたたかな胸とあたたかな声が
わたしのまわりに円を描く
今は静 ....
心のどこを探しても、
怒りも憎しみも憎悪もない。
それとは正反対の感情が、
海の様に広がって、凪を打っている。
愛情と愛しみと友情。
そして変わらぬ大切さ。
....
君の背中にある八番は
誰がつけたというのか
躍動する大腿筋
身体から溢れ出していく汗
すべては君そのものだというのに
ただセンターとだけ呼ばれ
どこまでも白球を追いかけてく
スタ ....
今は迷子
ここで迷子
あなたの隣で迷子
なんだろう
なにかしら
なぜなの
わからないけど
見えない
暗闇なんかじゃないはず
あ ....
失っても気にはしなかった たとえ何かを失っていたとしても 気にすることなく 明け方まで友と飲み歩いた ゴールデン街のお店を這出ると 朝の日差しがやけに眩しくて「太陽がいっぱい」だなんて 的外れに大声で ....
{引用=あなたへの
熱い思いは届いてるはずなのに
あなたはいつも
涼しそうな顔をしていますね……}
扇風機は、現実を見たくないのでしょう
首をぶんぶん振ってます。
欲望に勝てるほど強くない
残念ながら
あなたを悲しませることを知っていて
ざぶーん
プールは気持ちいいよ
オトナであることが
条件です
あなたもオトナなら
会員になって
....
小声で呼ばれて小声で教えられた
(左左、ミミズが傘を差してる)
顔を向けようとして止められた
(向いたら気づかれる)
目の端っこで何とか見る
確かに紫色のミミ ....
縁側に近い場所に
房スグリ
隣に
コデマリ
庭を囲むように
南天
ドウダンツツジ
都忘れの花と
なぜか
マーガレットを植え込んで
お花
お花
お花がたくさん
春の匂い
夏の ....
寄ってきた子供達に
お菓子をふるまってた 米兵に
自爆テロがつっこみ
多数の子供と兵士が
亡くなられたという
手をだす子らは
わざと 足止めしたわけではないにせよ
いつもそう ....
小さな庭にスコップをさしこむ
土は深い森のにおいがした
森と眠りは深いほうが良い
深い穴に
深い眠り
食べものと 土と 土と
見上げたら曇り空
ぽつりと 雨が 土をぬらした
停車し ....
肉屋さんで少しの肉を買った。
黄色に塗られた自転車が
すれすれで通り過ぎていく。
母親の腕から赤ん坊が
指をくわえて笑いかけてくる。
小学生が
細い足を絡ませあって遊んでいる。
恋をした ....
偶然に
通りがかったチャットでは
まさに
ログが消されるところ
削除
とあなたがキーを打つ
誰かが
削除とキーを打つ
あなたの
意志でキーを打つ
あなたの
意志で ....
蛍みたいな人だと
電話越しに聞こえるあなたの声が
あまりにもすとんと 心に落ちてくるので
私はもう どうしようもなくなってしまう
帰って 君の手紙を読んで
泣きそうになったよと
どうし ....
黄昏が
輪郭を奪い
ネオンが灯りだした
町並みの真上
薄雲に隠れ
ほのかに
きょうの月
ああ
そうか
僕は君の
輝きばかりを追い求めて
ついにその形を
知ること ....
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