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萎れて帰る我が家の庭に
散ることのない
名も知らぬ紅のもみじ
さわさわ揺れて
ただ
さわさわと揺れて
それは母の
贈りもの
この言葉のどれも
そのもみじを見るわたしのここ ....
キャベツの葉っぱの間に挟まって
寝てるから
用があるなら
モンシロチョウに訊いて
なんとなく
そこなら
よく眠れて
いい夢が見られそうだし
人間はもう
いいわ
軽いけど水み ....
105円で
たいていのものをそろえられる
紫色の穴あけパンチだって買える
うれしい
相談者はほしいけど
この歳で
「お友達」なんていらない
そうでしょう?
ダーリン。
....
もう二週間も風邪を飼っています
金柑の蜂蜜漬けをなめながら
喉を宥めたい希望も
親もなければ
金もないので 叶わず
神様に祈るのは
私の所為で
駄目になりませぬよう に
月は
減 ....
勘違いとは
気づいたときに
素直に自分を恥じれるかどうかで
相手のせいにして
怒ってしまったら
負けなんですよ
東北も
梅が咲きだすころで
もう
その前の
微妙な季節に ....
ぶどう糖の固まりが
雪だったら
すくいあげて
口いっぱい
頬ばりますとも
そうじゃないから
私の足は
帰り道を
ひたすら急ぐんです
こなゆきの歌が
雪のない街に流れるので
雪に埋もれてしまいたい気になる
いなくなりたいよ
雪に埋もれて
いなくなりたいよ
君に必要のない
私なんて
明かりの灯った廊下
一人歩きは寂しくて
今日も仕事をきちんとやりました
ああ
それだけで満足です
そんなの
嘘ですよ
後ろから来るのは
何でしょう
待てばいいのか ....
月がらんらんなので
夜道は寂しくない
それでも人は
箱車で移動して
この寒さから逃れる
コンビニにはいつも
おでんの汁の匂いがして
煮物の匂いはしないから
飽きた
早く家に帰ろう
....
私の髪は切られずに
毎日伸びつづけるのだった
毎日抜けるのだった
甘いりんごパイとともに
夜更けのコーヒーとともに
同居人の寝息
確認して
そっとほっとする
....
今年は
洗濯物をひとつひとつ畳んで
引き出しにしまうような毎日を
過ごしておりますわたくしでございます
洗濯物を畳んでしまう習慣というのは
たぶん
この国独特のものかと思うのですが
....
お酒を飲むと
むかしは
食道から火がついたように流れ込み
身体じゅう燃えたようになったのに
いまは
まるで水のよう
そうやって
何杯もやっていると
目が回ってくる
すまし顔じゃい ....
君も
同じ夢をみたのかい
思い過ごしなら
私に空を見上げることを
させないで
紫の酒を
ソーダで飲むような
甘くて痛い酔いのまま
次の月の晩
ふたりのそれが
正夢になる ....
わたしは
ここから地上を見ている
大気で霞む昼にも
誰かが見つけてくれる
よく見れば味気ない天体であるのに
そんなに想うのは
わたしが最後の衛星だから
振り返らない
嘘の顔
嘘の ....
この風邪薬で
少し楽になった気がするから
この風邪薬にあう
風邪をひいたんだろう
という考えもある
どうせなら
高熱に浮かされて
溺れた人のように
夢と現の境に
漂っていたい気が ....
朱色の雲が
いまだ蒼さの残る空に
虹を想わせる
嗚呼
今日は
こんなにも惜しく思う夕刻の空
地を這い回っていない時
君と見られたらよかった
飛んでいけるだろう
その色の中に溶けて ....
不快を感じて
顔を洗おうとするだけ
いまは正常なんだろう
ここでいうところの
基本的なこと
仕方がない
そういう生き物なんだから
妬ましく思ったり
強いものの陰に隠れたり
....
上野まで
行けるかしら
イチョウという名の銀杏
黄色がふる
「君と行きたい」と
言ってみてはだめですか
無意味な
意味のあることを
君としたい気がしたのだけれど ....
日もルーズになりはじめた晩夏
名もわからぬ鳥が鳴く
湿った畳の目だけを
見つめかぞえ
また眼をつむる
夢見が悪かった
人に会いたくない
話もしたくない
すべてに
誰のために ....
満月は
あしたから
だんだん萎んでいきます
わたしの満月は
いつだったんでしょう
月は
また膨らみますが
わたしは
もう膨らみません
子どもじゃあるまいし
....
蠢くというよりは
疾走する
ゲジ
無害なのだな
でも嫌いだ
何がって
その足の多さ
狙われたら
逃げ切れない速さ
お前が走る速度ほどに
私の背筋が凍る
うら若き乙女の頃
....
日に焼けた顔が
農婦のようで
働き者でもないのに
わたしは
温室栽培ではなかったんだ
どこにでもある雑草
虫に食われたり
風にさらされたり
軒下であるだけまだマシ
鏡の前 ....
あれは冬だったから
あの月とは違うけれど
1月10日のあの街の
あのビルの森の上に出ていた月と似ている
8月
今夜の朧月
明日
現世は終戦記念日だという
夏が折り返す
も ....
いまはもう
どうでもいいはずのあなたの
うた
それは幻で
あなたでない
あなたが書いた
ほんとうのうただった
いまのあなたは
出し殻で
きらいです
猫なんて
なでている
....
触れることも触れられることも
拒んでいた手
そんなことすら
忘れてしまった手を不意に繋ぐ
温かさ
そんな空想が
思考の隙間に挟まって
消え
誰も
何も知らない私を
存在させ ....
自分も
いじめたりするけれど
猫を悪く言う人が
嫌いだ
猫を
かわいがりすぎる人も
なんとなく
気持ちわるい
認めなかった犬と
いまは暮らす
犬は
帰るたび
喜んで ....
十代のころ
風呂で毎日肌を磨いていた
それは
白蛇のようになまめかしく
女というものは
綺麗であるべきもの
愛されるために生きるもの
それだけでよかった
なのに
酷いのですよ
....
カナカナが
鳴いていた
紅の夕日が沈むのさえ
浸れない私だった
いつの間にか
蚊に刺されていて
皴の多い手は
なかなか美しくなれないでいる
自分だけを愛していた頃は
....
想い出は
いいものばかりで
ときどき
あなたの名を呼んでしまうけれど
聞こえたら
ごめん
答えないで
想い出が
更新してしまうから
紫の薔薇が咲いている
私の手の中で
薄い花弁は紙で
雨に濡れたら
萎れてしまうのよ
鬱のように
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