夜明け
木立 悟
窓から窓のかたちの風が来て
わたしの前に箱をつくり
ゆうるりゆうるりまわりながら
冷たい心のありかを示す
あたたかな胸とあたたかな声が
わたしのまわりに円を描く
今は静かな
波の下の水泡たち
空の粒にはねかえり
光は土にそそがれて
小さな小さな手のひらになり
夜の灯を消してゆく
雨が幾度も訪れては去り
音も無くまわるかたちに囲まれ
わたしは窓のわたしを見つめる
重なりつづけるわたしを見つめる
白く口をつぐんだまま
うたを歌う波のひとつが
海鳥の散らす風を浴び
少しずつ少しずつ微笑んでゆく
海から海へ
銀はまるく打ち寄せて
水に照らされ 水を映すものの前を
わたしの前をすぎてゆく