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赤く濁った水の中で
泳ぐ気力は尽きてきて
揺らいでいるのは君なのか
霞んでいくのはぼくなのか
深く潜った海の中で
肌は冷たくなってゆく
おぼれているのは ....
そらにはりつく ひしゃく星
すくっておくれよ
ちっちゃな、ちっちゃな、うちの祈り
似た言葉を 繰り返して しまうのは
きっと 本当に
そう思って いるからなのでしょう
或いは 本当に そうでなければ良いと
信じたいからなのでしょう
そんな風に 確認作業をし ....
遊園地に「回転しない木馬」があった
妻と娘が乗り
僕が写真を撮ることになった
バーにおつかまりください
というアナウンスの後にブザーが鳴り
回転しない木馬が
回転し始めなかっ ....
ぽっかりと口をあけて
君はねむっている
愛さずにいられない
その唇が
ときに嘲ることもあるというのに
睫毛をしんとさせて
ねむっている
....
夕暮れの海
東はステンレスのように冷ややかな薄いブルー
西は白熱した銅線のようなオレンジ
お前は美しい
限りない数の表情を持ち
いつもどこかを目指している
お前は優しい
あるゆる色を映す ....
ゆうちゃんは無口な転校生だった
四年生の春に
ぼくのクラスにやってきた
ゆうちゃんと、ぼくは
なぜか気があって放課後はいつも一緒にあそんだ
がっこうは友だちできへんからきらいや。
....
やさしい光の数々は レントの風に乗って
流れていきます
どこへ向かうのか 知ることはできないけれど
きっと幸福があると推測するので
ぼくはこの身を任せて 光と一緒に
流れていこうと ....
お盆の上に
ラーメン丼、ふちまでお汁をこれでもかと
お汁の上に炒めた肉を積み上げて
肉の上にレッドペッパーこれでもかと
横にはまっかな林檎一個
しずしずと持ち運ぶ
長い廊下を
食べた ....
当たり前に動く この体も
ずいぶん使い果たしたものだ
これは借り物の器
自分の物であるのは魂だけ
それすら神に与えられた奇跡なら
空気に漂う気配だけが
己自身なのかもしれな ....
空
抜けるような
青いうしろめたさを
雲
ぽっかり浮かんだ
白い嘘でなぞって
花
可憐な
ピンクのあてどなさを
葉
みずみずしい
緑のお節介が抱き ....
表と裏から
挟み込んで サンドイッチ
そんなゲームが 有ったような
手つなぎ鬼は
一人じゃあ 出来ないの
缶蹴りの 準備くらいなら
あの 自動販売機の前で
カランと音させてか ....
川沿いを
髪のながい
女が一人
頭骨によく似た
薄赤い花を
五つ
のせて
乳母車を押してゆく
女がひとり
*
( ....
いま、立方体の中で手足を折り曲げている
きっちり蓋を閉めて 一分の隙もないように
それでもはみ出しまう「私」が漏れ出て
側面を綴りながら、ゆっくり滴っていく
シジン、と名乗っているうち ....
詩をよむ
襟をただして 向かい合い
掬いとられた言葉に耳を傾ける
駆けても丁寧にしても捕まえられない
のろまな自分をちょっとま棚に上げて
他人の世界に没頭すると
動き出すはずだ
....
育てる
花を育てる
愛しい我が子を抱くように
育てる
花を育てる
我が子の明日を夢見るように
※
よく見かけるひと
花電車の通う線路脇で季節の花を育てるひと ....
午後の大きな顔が公道の真ん中を通ってずんずんこちらに迫ってくる。何の躊躇も無いその目の色は鳶色だ。逃げ出すことも無く同じ方向に歩きだす。その顔は側面から夕日を受け端正な顔が陰を作って歪み出した。夕日は ....
正解を求めて辿りつくのは 正解なんてない、という答
この厄介なことばを呑み込めた時 たぶん僕は自由になれる
鮮やかな桃の色をした
あなたの大切な鞄が
線路の上にある
今は秋の朝
未だ人のまばらな
プラットホームから眺めるとそれは
轢かれるのを待っているように見 ....
宇宙に開かれた水の滴
表面張力によって浮かぶ
塵芥の島嶼の一部の
寄生する細菌細菌
細菌が人生
泥の堆積/火の木端/夢に沈む
雲の破片の沈殿物
屋敷の塀の高さに隠された
思い出 ....
何一つ確かなモノなど無く
何一つ信じる事も出来ず
何一つやり遂げる事の出来ない私は
人にいったい何を言えるというの
着飾るだけの
腐食した心を
直視する勇気もなく
また落ちて
....
あなたは、それじゃ駄目
少しばかり良いことが起こっても
それを怖れる
また悪いことが起こるのではないかと
怖れて
良いことの芽を摘んで
しまおうとする
もう十分に
....
あなたを
埋めてしまわなくては
なりません、突然の雨に
暴風に、雷に
あなたが苛まれないために
土深く埋めてしまわなくてはなりません
スコップに土をすくい、 ....
例えば今 深い海の底で
目覚めたなら そこに 何が見える?
何も動くものはない ただ君だけを除いて
例えば今 霧が晴れたとして
目覚めたなら そこに 何が見える?
誰も気づくものはない ....
A
枯れ葉が 裏も表も見せながら落ちて
そのうち葉脈だけになり
葉脈の下では 貴族のようなおももちで
うずくまっている それは わたし
B
独りきりの夜 ちいさく もりの ....
そう
これが人生
空白の中で ぽつんと立ち尽くしている
前も後ろもない
あるのはただ 紙切れのように破れやすい
自分という存在
かさかさと音を立てて 私は首をめぐら ....
それでも雲は流れ・・・
夜になり、日が昇る。
心が立ち止っている間でさえ、
雲は流れる。
止まっているのは自分だけ。
確実に時は流れている。
苦しくも悲しくも…
髪のみじかい{ルビ女=ひと}よ
するどい傷のような
月の居る夜に
はじめての女よ
きみが歌うのなら
ぼくは歌わない
使い終えたはずの
あの夏の歌は ....
昨日は他人だと
笑いながら通り過ぎていくものがある
ここから先は入れないからと
身構える姿は滑稽だ
少し緊張しても
鍵という他人もまた大きな他人で
挨拶すら忘れてい ....
一秒もたてば
抱きあったことなんか
うそと同じ
流行りの歌や
この部屋を通り抜ける
なまぬるい風と同じ
出会ったことなんか
....
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